ステイサムは最初から、ステイサムではなかった。
しょっぱなから何を言ってるんだ、お前は?
という声が聞こえそうだが、断じて薬をやっているわけじゃありま せんよ。
まあ聞いてください。
いわゆる男の代名詞的存在のステイサムだが、最初からそういうわ けではなかったのだ。
アーティストのPVでヒョウ柄のパンツを履いて踊り狂ったり、デ ビュー作である「ロックストックトゥースモ―キングバレルズ」や 「スナッチ」などでは割と等身大の、しょうもないアンチャンを演 じる事が多かった。
最近の作品でも違った意味で俺たちをあっ!と言わせくれるステイ サムだが、当初はしょうもないアンちゃんを演じてラストのど んでん返しであっ!と言わせるような作品に好んで出ていた。
そんな彼氏がアクションに目覚めたきっかけがジェットリーであっ た。
101匹わんちゃんならぬ101匹ジェットリー「ザ・ワン」でス テイサムは未来捜査官として共演した。
だが相手は、いかんせん功夫皇帝の異名を持つジェットリー。
ステイサムの添え物感は否めなかった。
俺の中にだってドラゴンはいる。
ステイサムはそう思ったのかもしれない。
ゴーストオブマーズで火星のゾンビに膝蹴りを食らわせたり、ミー ンマシーンという獄中サッカー映画でサッカーそっちのけでアドレ ナリンばりに乱闘したりなど、隙あらば自主練ぶりを俺たちにアピ ールしてきた。
そうした作品を経て、遂に一枚看板を張る「トランスポーター」に 主演、それまでのイメージに劇中のように回し蹴りを食らわせたの だった。
それからは、ご存知のように飛ぶ鳥を落とす勢いでアクションハゲ として順調にキャリアを重ねてきたステイサム。
そんなステイサムに、いよいよジェットリーと同じ土俵で雌雄を決 する機会が訪れた!
それが「ローグアサシン」である。
今回はジェットリーとの二度目の共演を果たしたブラックレイン的作品、「ローグアサシン」についてご紹介します。
というわけであらすじ。
今回のステイサムはFBIの捜査官。
今日もアジア系の相棒とタッグを組み、主に銃弾をぶっ放すという ガサ入れをしていた。
とりあえず「逃げる奴は全員マフィアだ!逃げない奴は、よく訓練 されたマフィアだ!!」といわんばかりに地獄の黙示録な銃撃 戦を披露するステイサム。
景気がいいなあ。
だが、そこで伝説の殺し屋ローグと遭遇!
肩を撃たれたステイサムだったが、アジア系の相棒に窮地を救われ るのだった。
しかし、ローグの生死は不明。
ともあれ捜査は終わった!
祝おう!
…と、BBQの具材およびビールを持参しアジア系の相棒の家に向かうステイサム 。
現場に着くと家相棒は家族もろとも皆殺しにされ、あまつさえ燃やされた!という衝撃 のニュースが飛び込む。
まさか相棒がBBQになるとは…
呆然として現場検証をするステイサムはローグが好んで使うチタニ ウムの薬きょうを発見。
相棒の為に復讐を誓うのだった。
そんな事件から3年後が経った。
当時の意気込みとは裏腹に、すっかり復讐をど忘れしていたステイ サム。
ある日、皆殺し犬爆弾でヤクザが大量に死ぬ事件が発生!
これはヤクザと中国マフィアの抗争では?と色めき立つ当局。
そんな当局を尻目にステイサムは現場にチタニウムの薬きょうを発 見するのだった。
「奴が戻ってきた・・・」
そう、ローグが戻ってきたのだ。
今更!!
ローグの狙いは果たして何なのか・・・・
暴力と言う名の捜査にも熱が入るステイサム。
こうして、ヤクザ×チャイニーズマフィア×ジェットリー×ステイ サムのよつどもえの戦いが幕を開けるのだった!!
チンピラFBIなステイサムが、余裕しゃくしゃくなジェットリー を追う本作。
キャッチコピーは「謎に彩られた迫真のバトルエクスプロージョン 」
まあ、言葉の意味は解らないが、とりあえず勢いがあるのだけは解る!
他にも、
突拍子なく「サラダが食べたぁーいの」と主張するデボン青木
後にユーロミッションでステイサムに殺されるハンこと、サン・カ ン。
八つ当たりで耳を斬る石橋凌。
そんな石橋凌に耳を斬られるケインコスギ。
唐突に現れる忍者部隊
など、意味は解らないが勢いのあるキャラクターが登場。
荒ぶる板前相手の寿司屋バトル、表参 道の店作りなヤクザ事務所でチャンバ ラ、主役2人によるハンマーとシャベルの殴り合い……などなど、迫真のエクスプロージョンなシーンが展開する。
特に気になるステイサムの活躍だが、ヤクザに「日本なら死んでる」と言われ「 ここは日本じゃねえ」と速攻撃ち殺すなど、いつものステイサムぶりを見せてくれる。
だがステイサムファン的に見逃せないのはステイサムが披露する日 本語だ。
冒頭のヤクザ皆殺し犬爆弾の現場に到着したステイサム。
着くや否や「あんたらは日本のやくざを相手にしてるのに、どうして日本語が 話せないんだ」と地元警察にダメだし。
瀕死の生き残りヤクザにステイサムが尋問を開始する。
「ケーサツダ。ナニガアッタダ」
き…聞き取れねえ!アバウト過ぎる日本語で観るものを唖然とさせながらステイサムは構わず続ける!
「オレノシュミシッテルカ・・オイシャサンゴッコダ・・・コノダ ンガンヲヌカナイトカノースルゾ」と親切に指を傷口に突っ込むス テイサム。
ヤクザはアーなんて叫ぶわけだが、「イヤ・・・イヤイヤ・・・・ ホネダタ・・・ゴメン」とステイサムは素直に謝罪する。
かと思いきや「シニタクナケレバキョーリョクシロ!!」と逆切れ!
おそらくヤクザも、ステイサムが何を喋ってたのか分からなかったの だろう。
結果、ヤクザは失神!
役に立つ情報をひとつも得られないのだった。
ダメじゃん!
俺もステイサムの日本語を理解するために5回ほど見たのだが、ず ばり何言ってるかか分からねえのだった。
観る者の極限のヒアリング力を試される映画である。
本作に限らず海外の日本模写を見て「トンデモ日本じゃん!」とか目くじらを立てる人も居るかもしれん。
だが、そんな人に俺は言いたい。
そんなねえ、あなた美味しんぼの海原雄山じゃないんだから。
逆に言えば日本人の俺たちにしか分からない違和感を楽しみなさいよ!と。
なんというか、美味しんぼで言えば栗田さん精神とでもいおうか。
気が付いたら何故か美味しんぼの話になってしまったが「映画としてはどうなのよ!?」と言われれば俺も「 さあ・・・・」と俯くしかない。
だが、全編を支配する、片言の日本語および状況の突拍子のなさ。
そして、呆気に取られるラスト。
それが本作を忘れたくても忘れられない作品にしている。
・・・・ていうか、そういう所を買ってくれ!!
頼む!この通りだ!!
今回の記事を書くにあたり、ローグアサシンを都合5回位観て、俺は切実に思った。
「早くメカニック・ワールドミッション観たいなあ…」と。
…というわけで、メカニックワールドミッションまで暇なら売るほどある!って人はローグアサシンを観てくれ!5回‼︎