人生はきびチードル「MILES AHEAD / マイルス・デイヴィス 空白の5年間」

「黒いお人好し」ドン・チードル初監督作品!!スイングチードル!!

ドン・チードル・・・・1964年11月29日(いい肉の日)生まれの52歳。

ビーパワーハードボイルドを読んでくれている皆様には「アイアンマン」「アベンジャーズ」のウォーマシン、もしくは「オーシャンズ」シリーズでお馴染みだろう。

シネフィルなら「ホテル・ルワンダ」でアカデミー主演男優賞にノミネートされた俳優だろうと言うだろう。

出演作からもおわかりの通り、ハリウッドを代表する俳優である。しかしこの表情を見てほしい

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Googleで画像検索すると結構な頻度で絞り終えたコーヒー豆のような苦笑いを浮かべている。

陽気なお調子者、もしくはスラムから成りあがったブラザー的なキャラが多いハリウッドの黒人俳優の中でも、ダントツで押しに弱そうだ。

行きたくない飲み会に渋々参加してそう
休日出勤を頼まれて断れなさそう
パソコンを買ったらわけのわからんサービスにいろいろ加入させられてそう
もしくは中学の女子部員ばかりの吹奏楽部でもくもくとドラムを担当してそうな男子部員的なオーラがドン・チードルにはある。

twitterでも405,309人というフォロワー数がいながらツイートしている内容は

枯れ木のクリスマスツリー

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残飯

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と何を伝えたかったのかわからない内容で、リツイート数が1桁~2桁とフォロワー数から考えられない拡散力を発揮している。

確かに大スターなのだが、俺は勝手に親しみを持っている。「ドンチ」と呼んでも怒らなそうだ。

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本当はギャンブルとか興味ないのに友達の付き添いでラスベガスに来たドン・チードル

そんなドン・チードルがこの度初めて監督・主演・脚本・製作を務めた「MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間」が公開された。

黒人がメインの作品には簡単に資金がつかないらしいが、クラウドファンディングで34万ドルというフェラーリをダース買いできそうな資金まで集めたという。すげーな、おい!!

ジャズの帝王「マイルス・ディヴィス」が創作活動をしなかった5年間を追う物語らしい。
ジャズの事はさっぱりわからないが、マイルス・ディヴィスがあのタモリをインタビューでバキバキに緊張させた「とにかくすごい人」というのは知っている。

(youtubeでインタビュー動画を見たのだが、タモさんが緊張している中、「緊張するなよ」と言いながら目も合わせずお絵かき中。

「あなたは少ない音数で心に残るフレーズを作りだしていましたよね」と褒めるタモさんに対して「は?俺は音をたくさん使ったよ」と一蹴。

「すいません、私の聞き違いでした」とテレビで一度も見たこともないくらい動揺するタモさんに表情を変えず「冗談だよ」と終始マイルスのターンにしていた。

翌日コンサートにタモさんが挨拶で訪問したところ「お前誰だ?」と聞いたというオチまで残している)

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マイルス・ディヴィス本人。家の庭に虎とか放し飼いしてそう!!

ウェズリースナイプスの「黒い中学生」ならぬ「黒いお人好し」なドン・チードルが映画作りのみならず営業力も見せた懇親の一作。

とはいえ、全然キャラが違うマイルス・ディヴィスをしっかりやれるのか?と親戚のピアノの発表会に行くような気分で鑑賞した。

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見事スイングしていた。

「黒いお人好し」はどこへやら、口癖は「マザファッカ」「SO WHAT!?(だからどうした?)」のジャズの帝王になりきっている!!

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ヤンキーファッションに身を包み、ハードなラブシーンも披露しているのだから、童貞じゃないことも証明された。

冗談はさておき、1970年代後半当時、荒みに荒んでいたマイルス・ディヴィスのエピソードがおもしろい。

冒頭で「勝手にジャズとカテゴライズするな、俺の音はソーシャルミュージック」だと言い放ち、 ふらっとスタジオやセッション中のバンドに現れては「SO WHAT」精神で曲の途中でも神がかったフレーズを決める。

「セッション」のファッキンテンポ先生が下を向くしかない才能だ。
と思いきや、勝手にアルバムを出そうとするレコード会社のオフィスで発砲、コカインを酒で流し込み ユアン・マクレガー扮するローリングストーン誌のライターが記事を書きたいというものなら有無を言わせず顔面パンチという モーターヘッドの故レミーキルミスターに匹敵するロックンロールアティチュードを放つ。
(ジャズミュージシャンなのに死後「ロックの殿堂」に殿堂入りしたのも頷ける)

そんなマイルスをドンチが演じるもんだから、エピソードの破天荒さと今まで見たことのないドンチという二重のおもしろさが駆け巡る。

映画自体もジャズを全く知らない俺が「家に帰ったらマイルス・ディヴィス聴いてみよう」と思うほど楽しめたし、 現在と回想シーンの絶妙な移り変わりといい「ドン・チードルってすごい才能だな。やっぱりすごいんだ」とひたすら感動した。

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俺は本作を見て「人生はきびチードル、でもたのチードル」というテーマがドンと胸に響いた。

マイルス・ディヴィスが荒んでいる主な原因があらすじにもある通り、自分のゲスな言動のせいで別れた妻が忘れられないというところなので、「天才ゆえの苦悩」「孤高かつ孤独」と陶酔する人と「ラッパ吹いてないでしっかりしろ!!」と思う人の二手に分かれるだろう。

(個人的に女性からすれば全く共感できない男の不甲斐なさという点で。「バッファロー’66」的な要素があるなと思った。ちなみに俺は童貞の頃ヴィンセント・ギャロが好きだった!!)

マイルス・ディヴィスという天才ジャズミュージシャンに興味を持つきっかけになるし、何より「こんなチードル見たことない!!」と、ギャップ萌えに悶絶する一本だ。

最後にドン・チードルより日本の皆へのメッセージだ!!

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