地獄の闇キムチ鍋映画・アシュラ ※ネタばれあり

「なんでこうなった・・・」

思わず、そう言いたくなる瞬間がある。

言った時には、時すでに遅し。

大なり小なり、気が付いたら修羅場に足どころか腰まで浸かり、今更抜けるに抜けられない。

例えば、昨日は良い気分で同僚と飲んでいたはずなのに、気が付いたらカラオケボックスにいる。



床はゲロまみれ。

空の『いいちこ』のボトルが幾数本もテーブルに置かれている。

何故か俺より縦×横3倍のブラジル人の女2人が向こうのボックス席でいびきをかいている。

そんな二人にに挟まれる形で、酔いつぶれている半目の同僚。

ひたすら歌い手のいないジュディ・オングの「魅せられて」がインストゥルメンタル状態で爆音で流れている。

あるでしょう?

そういう地獄絵図が!

前に「なんでこうなった」と言いたくなる瞬間が。

そんな「なんでこうなった・・・」ムービーが韓国からやってきた!

その名もアシュラ」!

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韓国と言えば、キムチ、辛ラーメン、サムギョプサルを思い起こさせますな。

よく俺もお世話になっております

食い物以外でも、K-POP、韓流ドラマなんてのもあり、ここ日本でもお馴染みだが、隠れた名産品がある。

そう、バイオレンス映画ですね。

思わず見ているコチラも途方に暮れてしまう、やり過ぎなまでの絶望、そして暴力

俺もたまに度を越した辛いキムチ鍋を敢えて食いに行くのと同じ要領で、韓国映画を見ております。

しかし、この「アシュラ」は凄いですよ、奥さん。

そんじょそこらのチェーン店にはない、嫌がらせのようにビリビリ来る本格的なスパイシーさ

というわけで、今回は韓国直送のスパイシーな映画「アシュラ」を御紹介します。

 

都市開発を控えたアンナム市。

裏では汚職、賄賂、犯罪という名の食材がグツグツと音を立てている闇キムチ鍋状態。

そんな街の刑事、ドギョンも例にもれず絶賛汚職中であった。

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愛想の良い貴乃花親方みたいなルックスのパク市長の選挙違反を揉み消す為、

今日も子飼いのヤク中を使って証人をパワープレイで脅していた。

もはやメシの種は汚職になりつつあった。

もういっそ刑事を辞めて市長の下へ転職しよう!とドギョンは考えていた。

しかし、万事塞翁が馬。

上司に自分の今までの汚職を嗅ぎ付けられてしまう。

「金をよこせ!」「やだ!!」と揉み合う内に気が付けば上司を屋上からスローイング

その場の判断で、「おめえ!上司を殺しやがって!!」とヤク中へマウントパンチしながら罪を擦り付けるのであった。

現場に居合わせた部下のソンモへも定食を奢って黙らせた

よし!!とりあえず場は収まった!と思ったドギョンだったが、そうは問屋が卸さなかった。

随分前から市長とドギョンの黒い交際を内偵していた検察に呼び出しを受け、「市長が指示した汚職の証拠を持ってきなさい」と慇懃な丁寧語で言われる。

最初は「は!?知らん!!とスルーするつもりのドギョンだったが、検察は汚職の証拠を突き付け、たまにぶん殴りながら「余命のないアンタの嫁さんにバラしますよ」と脅されてしまう。

ほとんどヤクザのような検察であった。

一方の市長も外面は良いものの、裏の顔はタチの悪いヤクザ…というか、もっとヤバいサイコパスである。

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こうして刑事を辞めるに辞められなくなったドギョンなのだった。

とりあえず部下のソンモは一足先に市長の下へ転職させるものの、良いスーツやら高級車まで買ったという自慢を聞かされる。

更に検察と市長の板挟みの状態だ。

もうストレスしかない。

「果たして、どちらにつくべきか」と思いつつ、何とか事態を収拾しようにも殴られるわ、詰められるわと、舐められるわと全てがドギョンにとって都合の悪い方向へ進んでいく。

これ以上ない踏んだり蹴ったり。

募っていく焦燥、怒り。

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そんなドギョンを中心に市長および検察も互いにジワジワと尻に火が付き始める。

どちらについても俺はヤバイ。

こうなりゃ全員鍋にブチ込んでやる!

ヤケクソになったドギョンは、イチかバチかの賭けに出る。

果たして誰が生き残るのか?

 

こうして悪人しか出席しない、地獄の激辛闇キムチ鍋パーティが始まるのだった・・・

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最初から最後まで、お先真っ暗=ジャスティスが行方不明な本作。

悪意のトップダウン、ドギョンの身になったら胃がきりきりする展開が存分に描かれる。

特にラストは正義も体裁もない泥仕合だ。

もう食い散らかしたキムチ鍋のような様相を呈する。

「ツワモノどもが夢の跡」なんていう言葉があるが、こちらは「俗物どもが地獄絵図」だ。

思わず観ているコチラもなんでこうなった・・・と思わずにはいられない。

しかし、俺も見た後に色々考えてみたが、どう転んでも修羅場を避けようがなかったなあ、と。それまでは下請けとして市長に媚びて笑いを浮かべていたものの、仁義もへったくれもない板挟みになり、いよいよ笑っていられなくなっていくドギョン。

ひたすら誰かにぶん殴られ、狂気ゲージはMAX

結果、ヤケクソになってコップをバリバリ食っちゃう模写があるのだが、そりゃあ無理もない。

この毒を食らわばコップまで精神。

かつて俺もコップをバリバリ食いたくなる瞬間がありました。

 

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これから新社会人になる人もいると思うが、「コイツ、いけしゃあしゃあとよく言うよ!」と言いたくなる瞬間があるだろう。

いきなり夢に溢れた人に冷や水をぶっかけるようでアレだが、つく人間を間違えるとエライ目にあってしまう。

「ニコニコしながら意識高い事を平然と言う人は、大抵サイコパス」という持論があるのだが、そういう人を妄信するのは危ないぞ、というのを今作は証明してくれた。

そういう意味では、新卒の人に是非見ていただきたい映画だ。

・・・というわけで、「なんでこうなった」と思った時には全てが遅い。

ちょっとでもやばいと思ったら速攻転職しましょう。

コップをバリバリ食わないうちに。

そんな教訓を与えてくれる映画でしたよ。