真夏の悪戯「男に抱かれたあの日」 – Be Power Hard Boiled
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真夏の悪戯「男に抱かれたあの日」

仕事途中の電車の中で海を眺めていた。

あの子の笑顔も、あの夜に誓った愛も、そして「さよなら」も・・・
波が悲しみを全てさらってくれる。

この季節になるといつも「あの夏の日のこと」を思い出す。
そう、それは人間ドッグのバリウム検査後のうんこのようにこびりつく。

8年前のことだった。当時勤めていた会社の同期と須磨海岸に行った。

もちろん同期の女の子達は水着。
「日頃スーツ姿しか見ていない子の水着姿ってなんてエロいんだ!!」と俺は新たなる性の喜びを知った。

「スーツ姿から水着でこれだけ感動するんだったら、会社の制服が鎧兜だったら水着になった時もっと興奮するんだろうな、きっとそうに違いない!!毎日が合戦だ!!乱だ!!大塩平八郎!!」などと思ったものだ。

俺は「5000円払うからそのTシャツに水をかけさせてください。水着を透けさせたいんだ!!」
と全力で提案活動をしたが、結果だけいうと今その女の子達とは連絡を取り合っていない・・・あれは良くなかった。

会社の同期達と仲良くお昼ご飯を食べた後、せっかく海に来たので泳ぐ事になった。

女の子にいいカッコを見せよう、と泳いでいた時に、事件は起こった。

「久しぶりの海もいいもんだ」と気分よく海を漂っていたら、突然、浜辺の方から猛スピードで
筋肉ムキムキのお兄さんが全速力でこちらへ向かってくる。

何かの間違いかと思ったが、間違っていない、確かに俺の方に来ている。

「これは・・・性的な意味でやばいパターンだ・・・。」

俺はそんな趣味はない。

必死で逃げたが、どんどん距離を縮められる。はちきれんばかりにパンプアップした色黒の男が向かってくる!!

ただでさえ性的にはノーマルな人間なのに・・・しかもいきなり海中だなんて。

Holy Shit!!摩訶不思議アドベンチャー過ぎる!!

そしてついに抱きしめられた。マジで怖くなった俺は「なんやねん!!」とキレ気味にガチで抵抗した。
小麦色マッチョマンは抵抗する俺を話さず「ライフセーバーです!!助けに来たんですよ!!」と叫んできた。

「何がやねん!!めっちゃ自分の意思で泳いでるやんけ!!溺れてへんわ!!はよ離せって!!」と返すとライフセーバーと名乗る男は「それが危ないんですって!!あなた気づいてないけど、思いっきり潮に流されてるんですよ!!」と厳しい声で叱られる。

まさか・・・確かに陸から遠のいていた

俺は以前から泳ぎのフォームが悪くのんびりしているので、自分では何も思っていなくても勘違いされる事があった。

小学生の時、自分のペースで泳いでいて50m泳ぎきった時に何故かクラス全員から褒められた。担任は少し泣いてた。

よくみたら俺以外が全員プールサイドにいる。俺はマイペースにのんびり泳いでいただけだったのだが、周りからは「何度もくじけそうになりながらも必死で50m泳ごうとしているえらい子」に見えたらしい。

潮に流されていたのか・・・・だから、今日はすいすい泳げるなと思ってたんだ・・・・・

状況は理解したので「すいません。じゃあ今から戻ります。」と言ったが、ライフセーバーは
「この辺は潮の流れが速いので僕が沖まで送ります。離れないようにつかまってください」
と絶対にNOと言わせない口調で諭してきたので俺は初めて男に抱かれる少女のようにコクリと
うなずくしかできなかった。
それから時間にして2分程だろうか・・・俺は鍛え上げられた小麦色の肉体の男に抱きしめられた状態で沖まで送って頂いた

男に抱きかかえられて戻ってくる私を見て、同期のみんなは「大丈夫だった?」と心配そうに声を掛けてくれたが・・・

翌日には細かい部分が削られて、「海で男に抱かれていた。」という部分だけが破竹の勢いで社内に広まっていた。

あれから8年経った。もうあの会社にはいない。

男に抱かれたのはあの日が最初で最後だった。

夏が来るたびに思い出す、あの日とあの筋肉。

教訓
イキリオタクは陸でも海でおとなしくしとけ。