片腕リボルバー娘!マッチョ食人族!武装パリピ!静かなる世紀末映画マッドタウン

皆さん焼肉は好きだろうか?

好きか!

そうか!

奢ってくれ!



「肉は隙あらば焼く!出来れば他人の金で!」がモットーな位に俺も焼肉が好きなのだが、とんと高級な焼肉には縁がないのだった。

えー何だ、叙々苑とか牛角とか。

主に俺が焼肉しよう!なんて言えば安いホルモンを焼いて食う機会がほとんどである。

テーブルマナーなんてしゃらくさいもんはない。

ましてや焼肉奉行なぞは存在しない。

そこにあるのは肉を貪る野蛮人の心のみ!

もうコレ何の肉なんだろう?

・・・・まあ、いいか!

なんてウへへと笑いながら各々肉を焼いて食い散らかす。

満腹になって表に出ると、その店で飼っている犬の数が明らかに減っている。

それが俺にとっての焼肉なのだった。

気軽に未開の地の食人族気分になれるのが焼肉の醍醐味なわけだが、こんな事を焼肉の席で言うと大層嫌がられるので、皆さんも是非試していただきたい!

 

というわけで、焼肉と食人は切っても切り離せないわけだが、今回世紀末食人マッチョ映画『マッドタウン』を御紹介させて頂きます。

何かしらの理由によって、政府が管理しない無法の荒野へ放逐された女のディストピア巡りを描く本作。

 

パッと見ると片腕片足ヒロイン!食人マッチョ!野蛮人!武装パリピ!

という、それ系のジャンルが好きな人にはたまらない、カルビ4種盛りみたいな映画に思える。

だが、この映画が他の世紀末映画や食人映画と一線を画すのは、世紀末と食人という摸写が淡々と、ごく当たり前かつ乾いたタッチで描かれる点である。

火力最大の焼肉かと思いきや、とろ火でじっくり焼肉しました感覚を味わえる映画なのだった。

例えば主人公の女の子は開始早々、食人集団にとっ捕まり、速攻で腕と足をぶった切られ、目の前でソテー!

飼い殺しにされそうになるものの、自らクソまみれになって何とか脱出!

ここから「食人族の野郎ども!全員殺す!」という、狂い咲きサンダーロードみたいな復讐を期待してしまうが、そんな展開にはならない。

とりあえず義足を装備するものの、主に逃げ延びた街をブラブラ歩いたり、薬でラリって荒野を歩いたりするのだった。

人生ままならないもんである。

気になるマッチョ食人族のマイアミマンことジェイソン・モモアも、常にタトゥーだらけの上裸、ホルスターには肉切り包丁を装備、移動はビッグスクーターのフュージョン、無駄に絵心があるという個性的なビジュアルおよび気合の入った設定である。

設定だけ見ると、叫びながら肉切り包丁を振り回す、意思疎通不可能なハッスルマッチョ野蛮人を期待してしまう所だが、目は怖いが所帯持ちなおかげもあり落ち着きがあり、更に娘思いの良いパパっぷりを披露。まあ人は食ってるけど。

おかげさまで人を殺すシーンも、人を料理して食べるシーンもやたら淡々としているのだった。

そしてキアヌ・リーヴスはゴキゲンなパリピ教団の教祖である。

クスリと音楽でアッパラパーになるパーティを夜な夜な開き「夢を追え」「都民ファースト」「増税反対」とか言いながら人を煽る。

そんな意識の高さとは裏腹に、常に武装した妊婦を周りにはべらせ、クスリについての独自の哲学をヒロインに披露し、気が付いたらナンパ!

作中、一気通貫で胡散臭さを炸裂させている。

ジムキャリーに関しては、言われるまで誰かわかんねえ!

 

そんな世界観に打ち込みのテクノっぽい音楽が被さるのだった。

 

静かではあるが、確実に狂っている世紀末を描いている本作。

系統で言えばニコラス・ウィンディング・レフンがセガール映画を換骨奪胎した映画「オンリーゴッド」にも似ている。

おそらく人によっては下手に疲れているときに見たら即5秒で寝落する。

そんな映画である。

 

 

『マッチョ食人族、意識の高いパリピ族に挟まれ、どのコミュニティにも属せない。結局、私に居場所なんてねえよ!』というテーマがあるのかもしれないが、マッチョ食人族寄りの思考の俺にはズバリわからねえ。

メッチャ雑に言えば変な映画であるのは間違いない。

中にはつまんねえよ!金返せ!と怒る人もいるかもしれない。

 

だが冷静に考えてほしい。

意外と格調高く、良くできた映画ほど記憶に残らなかったりするもんである。

それより、どっか変な映画

あるいは一部の摸写がぶっ飛んでいる映画ほど記憶に残るもんではなかろうか?

少なくとも俺はそうだ!

それはオマエが変だからだよ!と言われれば返す言葉もない。

だが、食いに行くたびに軒先の犬が減るホルモン屋とか心が引かれませんか?

「あれ何だったんだろう・・・」と思いながら、何度も無い答えを探すために通ってしまう、ていうのは叙々苑や牛角にはない要素であろう。

とてつもなく変てこな映画ではあるが、何だか分からん中毒性。

それがマッドタウンにはある…

気がする!!

というわけで、ヒマなら犬のモツを食うくらいにある人にはオススメの映画ですよ!