バツイチ、前科持ち、無職・・・でも毎日幸せ「アントマン&ワスプ」

 バツイチ、前科持ち、無職、中年

思わず無言になる。社会で生きていくにはハードモード過ぎる。

信じられないがアントマン(スコット・ラング)のスペックだ!!

かつてキン肉マンは「私はドジで強いつもり」と主題歌でも劇中でもダメ超人とバカにされていたが、軽い!!

冷静に考えて欲しい、例えば同窓会で隣に座った昔の友達が「俺(私)バツイチで無職、おまけに刑務所に入っていた事があるんだ。」とカミングアウトしてきたら・・・その場はお通夜のような空気になるだろう。

一旦は笑い飛ばしてネタにするかもしれないが、別れ際に「いろいろあるだろうけど、頑張れよ」とみんながガチで同情するお開きになるパターンだ。

MCUといえば、社長、外科医などの港区キラキラ女子が群がるような高給取りだけでなく伝説の兵士、神様などなんつーかいろいろ超越した面々が揃っている。その中で無職!!俺がスコットならアベンジャーズから飲み会に誘われても100%断る。つらいもん!!

ヒーローを続ける目的も他の面々とは一味違い、基本的に「なんとなく」。

1作目では世間が冷たすぎて即ドロップアウト、出所直後(!?)に盗みをしたところ、忍び込んだ屋敷でスーツを発見。屋敷の主の先代アントマンであるハンク・ピムに「このままじゃ娘に顔向けできないぞ」と諭されてそのまま2代目アントマンになる。

正直、素直に謝ってスーツを返した方が良かったのではというレベルの危険な任務をさせられるが、その辺はとやかく言わないのが良いところ。

「シビルウォー」に至っては他のヒーローがソコヴィア協定を巡る政治的主義を持って戦う中 「大ファンのキャプテンアメリカに声をかけられたから」というその場の勢いだけで空港で大暴れしていた。

今回この記事を書くにあたって「シビル・ウォー」を観返したが、軽く見積もって空港での戦闘30分前の時点で寝起き、話の流れを把握せずに、二つ返事でチーム入りを承諾。戦闘中に至っては車を爆破、その場にあった飛行機の羽をちぎる、荷物をぶちまけるといった様子で故意に空港を破壊していた。

おまけにトニー・スターク(同年代)からは知られてもいなかった。

全く何も考えていない・・・。ヒーローというか大人の男としては完全にどうかしている。

他のヒーローと違って憧れはしない、どちらかというと「もうちょっと頑張れや、おっさん!」と言いたくなる。

ただ、きつい状況にもめげず、笑顔を忘れない(もしくは深く考えていない)精神、「娘にとっていい父親を見せたい」というだけでしがないオッサンが頑張る姿は感動的だし嫌いになれない。

そんな愛すべきポンコツの続編「アントマン&ワスプ」が公開された。

ストーリー

「シビルウォー」後、逮捕されて2年間の外出禁止を命じられてたアントマンことスコット・ラング。FBIに監視されており家の敷地から全く外に出れない監禁状態だったが、 それはそれで満喫していた。

毎日たっぷり眠り、5時間のテレビと2時間の風呂、ネットでマジックの練習。段ボールで家の中にちょっとしたアスレチックも作っている。時間はあるが金のない100点満点のニートの過ごし方をしていた。

とはいえ、後3日で監視も終わり外に出れる。スコットは浮ついていた。

なんとなくシビルウォー参戦で世界レベルの迷惑をかけた事から、先代アントマンことハンク・ピムと娘のホープとも長らく音信不通状態だったが、寂しさから「こないだあんた達の30年前に行方不明になったおかんになる夢を見た」というマジでどうでもいい留守電を入れたところ、緊急招集。

「調査の結果、マジでおかんが生きてるかも!!いろいろ迷惑かけてくれたしそれくらい手伝え」とホープに言われる。

後3日だけ待って欲しい、もし外出がバレると懲役20年以上になると思ったが、久しぶりにホープと喋れてうれしかったので、なりゆきで母親探しを快諾。(もっと考えろや!!)

肝心の新しいスーツが調整不足で動作不良を連発、 シビルウォーの頃の2代目に比べてカッコよくなったが、おそらく1作目の頃よりも性能は落ちているので苦労する。(反対にワスプスーツは明らかにアントマンより高性能)

さくっと済む一件かと思いきやハンク・ピムに恨みを持つ連中達からの邪魔が入って戦いに巻き込まれる。 よくよく思えば、前作もハンク・ピムの部下の裏切りだった!!ジジイ、いい加減にしろよな!!

お願いだからもっと人に好かれてください、博士!!というボヤキをぐっと我慢し頑張ったらホープとワンチャンあるかもという淡い下心を抱き、今回もなりゆきで頑張るスコットだった。

先日の「インフィニティウォー」以来絶賛お通夜モードのMCUであるが、
「アントマン&ワスプ」は打って変わってサザエさんやちびまるこちゃんで描かれてもよい町内会レベルの内容だった。

アントマンはもちろん、さらにアップデートされたスーツを着たワスプのアクション、ヴィランのゴーストといい、さすがMCUといえる予算だが、あくまで基本は「無職がなりゆきで母親探しを手伝う」お話。

近年、映画館では月1ペースで地球の未来がかかっているスケールのデカい話ばかり観ているだけにこんなこじんまりとしたスケールの話を観るとホッとする。

アントマンのポンコツっぷりにも磨きがかかっていた。

「シビル・ウォー」の後世界を飛び回り姿をくらませながら戦っていたキャップ達とちがってこいつは2年間家でゴロゴロし続けていただけだった。
(ポール・ラッドが役作りで本当に2年間何もしていなかったのではないかと思える程ポンコツだった)

特に、やたらと独り言が増える、半笑い気味になる、新しい事(マジックや楽器)をはじめるあたりはリアルな描写でさすがMCUと思った。(そこかよ!!)

俺自身、転職前に2.3週間くらい何もしていない時期を2回経験したのだが、あれは本当に良い。通常の休みと決定的に違うことはストレスが一切ない事だ。

まだ手をつけていない見積、客からの電話、トラブル対応、一切のストレスがない・・・心の底からリフレッシュできる毎日。

(仕事を辞めない限り)もう二度と来ないあの楽しかった毎日を思い出して、少しだけ切なくなった。

とはいえ、俺はますますアントマンが好きになってしまった。

それは元嫁の旦那パクストンとの関係だ。
元嫁はとまだしも旦那とも親友のようになっている。

日本よりも離婚率の高いアメリカ。
「フラーハウス」や「MEG・ザ・モンスター」でもあったが、近年は離婚歴のある人間が新しい恋愛をする事を後押しするような描写が度々描かれるが、「アントマン&ワスプ」は一歩上を行っていた。

元配偶者の新しいパートナーとも良い関係になる。これは通常の心の広さでは対応できない。仕事で実績を残す、給料を上げるなんかよりも難しい事だと思える。(ちなみにスコットは自分を監視しているFBI捜査官とも良い友達になっている)

無職、バツイチ、前科持ち、中年という普通ならくじけそうなスペックのアントマンだが、いつも笑顔だ。

誰だって日常に悩みがあるだろう、仕事がきつ過ぎる、金がない、嫌いな奴がいる、結婚できない、別れそう、便秘続き、ちんちんが小さい・・・アントマンに比べたらちっぽけに感じるだろう。

「毎日を楽しむ。」当たり前のようでなかなかできない事をアントマンが教えてくれる。どうしようもないが最高にナイスガイだ!!

PS.個人的にマイケル・ダグラスが活躍していたのがうれしかった。
70歳を超えたとはいえ、昔からのファンとしてはやはり「ブラック・レイン」の松田優作とガチンコで殴り合っていた時のようにマイケル・ダグラスには無茶して欲しい。

また、本作でしつこいくらい劇中で説明された「量子世界」。エンドロール後のあの展開いいこの「量子世界」とアントマンが「アベンジャーズ4」のカギになるのではと今から胸が熱くなる!!

ハリウッドのドル箱!!アメコミ映画