幻の全裸で正座。そしてタナカ ヒデコ「パニッシャー(ドルフ・ラングレン版)」

「インフィニティ・ウォー」のブルーレイが発売された。
宇宙一の断捨離名人サノスによって悲惨な展開を迎えたとはいえ、シリーズ集大成に相応しい一本だった。特にワカンダでの最終決戦は景気が良い戦いっぷりで何度でも観たくなる。

そんなこんなで「インフィニティ・ウォー」発売より少し早めに小包が届いた。

「おっと、これはフラゲってやつかな?ありがてぇ!!」

わくわくしながら包装を解いていったところ

違うし!!

何故、俺の手元にこれが・・・?

2秒ほどして今年の5月にクロスオーバーでウダウダしていた時に勢いで注文したのを思い出した。

マーベル最初期の映画でありながら、長らく封印されていた一本。

パニッシャーは
ジョン・トラボルタを拷問するトーマス・ジェーン版
ひたすらハードコアだった「ウォーゾーン」
そしてジョン・バーンサルが「ヴォオオオ!!」とデスボイスを発する度に
人がアホみたいに死ぬNetflix版と観てきたが、これは映像としては最も古い「パニッシャー」で演じるのは我らが人間核弾頭ドルフ・ラングレン!!
「みせてやる、俺の殺人猟法!!」というキャッチコピーはとにかくやる気だけはビンビン伝わってくる。

これはビーパワー向けの一本だな!!

という事でブルーレイが5400円もしたこともあり早速紹介します。
(ロッキーやダイハードのボックスセットでもここまで高くなかったと思う)

大抵、というかほぼ全てのヒーロー物の1作目はヒーローになるまでの起源を
綿密に描くが全くない!!

基本的に、ドルフ・ラングレン版パニッシャー(以下ドルパニ)は丁寧な説明もなく、がんがん展開されていくので親切丁寧な作りのMCUですっかり甘やかされた我々はストイックに挑む必要がある。どれくらいストイックかというと

いきなり下水道で全裸で正座している。

ヴァン・ダムばりに真夏の果実のようなケツを見せる若き日のドル。
カメラが正面に変わってみると・・・・

目が死んでいる。

髑髏のTシャツは着ていないが、二日徹夜をしたような目つき。
劇中のニュースで家族を殺された警官が行方不明という説明がさくっと入るので
我々は数少ない情報から「既にパニッシャーにはなっているんだな」という状況を理解しなくてはならない。

マフィアが5年間で125人死んでいるという説明の通り、さくさくとマフィアをパニッシュするドルパニ。
銃殺、ナイフでの刺殺、人間UFOキャッチャーと言わんばかりの絞殺などバリエーション豊富な殺人術。

このペースなら30分以内に本編が終わる!!と思いきや、ある晩にマフィアが港でヤクの取引をしていたところ謎の組織に襲撃されている。

少しばかり予定外の展開に驚いたドルパニだが、自発的に処刑しようという積極性からとりあえず抗争に乱入!!
殺人カウントを回していくも、謎の組織から銃撃され、その場は一旦撤退する。
(ちなみに本作でのドルパニが使う銃器は全てマズルフラッシュが花火みたいに火が噴き出るのがポイントだ。)

日本が海外経済にガンガン進出していた頃の80年代のハリウッド映画らしく本作でのメインヴィランはヤクザ。マフィアのテリトリーを奪いに来たという設定。

組長はレディ・タナカことタナカヒデコ様。

異常に丈の短いジャケットを着ている子分達。
事務所では至る所に日本刀や鎧兜、浮世絵。
剣道の道場と思いつく限りの「日本」が誤った形で凝縮されている。

このヒデコさん、話が進むにつれてどんどん進化していくヴィジュアルも見ものだが、ヤクザとしてのやり方もかなりゲスく、マフィアの幹部の子供を人身販売するため誘拐するという鬼畜さ。

「やった!!俺がいなくても勝手に共倒れになる!!」と淡く期待していたドルパニだが、アル中のタレコミ屋のおっさんに「マフィアといえど子供たちの事は守ってやれよ!!」と何故か熱く説教される。

そこはパニッシャー、しっかり無視すると思いきやヤクザが経営するナイトクラブに天井から来店し、ヤクザの一人を捕まえて予告する。

めっちゃええ奴!!

正義感に溢れたドルパニは、M60機関銃でクラブを破壊。
気が向いた時だけマガジンチェンジすればOKの装弾数がファンタジーな重火器達を装備し、マフィアとヤクザの抗争に参戦するのであった。

基本説明のないストーリー展開とハイスピードで生産される犠牲者の数から「マーベル作品としては微妙、でもドルフ・ラングレン主演作としては名作」という何ともいえない位置づけになるパニッシャー

クオリティ的に長らくソフト化されなかったのはわからないでもないが、「ディレクターズカット版」となると評価は一変する。きちんと描かれる起源(娘の一人がスパイダーマンの服を着ている)、物語に影響のないシーンのカット、そしてラストシーンが変更されているので俄然おもしろくなる。

特にラストのヤクザ殴りこみ後のマフィアのボスとのくだりは公開版はグダグダの小競り合いの後に全裸で正座しているドルが再度出てきてエンドという救いのない仕上がりだが、こちらはパニッシャーとマフィアの子供との関わりがしっかりしており、復讐とは何なのか考えさせられるラストだ。

もしディレクターズカット版で当時公開されていたらマーベルももっと早くに映画事業に乗り出していたのではないか?

「ロッキー4」「エクスペンダブルズ」「ユニバーサル・ソルジャー」以外で何に出演していたかファンでも即答できないドル自身のキャリアも変わっていたのではないかと思う。

主演がドルフ・ラングレン、ドクロTシャツを着ていないというわずかな情報だけで永らく誰も観ていない割にはネタにされていたドル版パニッシャー。
百聞は一見にしかず。なかなか味わい深い作品である

【ドルパニみどころのおさらい】
・全裸で正座で瞑想
・タナカヒデコさん
・二日くらい徹夜したようなドルの目つき
・ラジコンのトラックでお酒を配達するパニッシャー
・ヤクザの丈が短すぎるジャケット
・ランボー直伝、漢の荒療治
・タナカヒデコさん
・情に厚い人情派黒人刑事
・バイク通勤にちょうどいい下水道
・タナカヒデコさん

観るしかないだろう!?ヒデコもびっくり!!