サム・ライミ版ファンとしては嬉しかった。腹も出て白髪も増えたスパイダーマン「スパイダーバース」

いくつになっても親愛なる隣人

「スパイダーバース」を早速観てきた。

今やヒーロー大集合が当たり前になってきたが、各次元のスパイダーマンが揃った時は鳥肌が立った。集合しただけであんなにテンションが上がったのは1作目の「アベンジャーズ」以来だ。

この映画がアカデミー長編アニメーション賞を受賞したのだからアカデミー賞も捨てたもんじゃない。

色々な姿の同一キャラというと子供の頃に観た「ドラえもんズ」があるが、小学生ながら
「ただでさえ四次元頼みのくせについに頭数も増やしてきやがった。どこまで卑怯やねん。」とドラえもんに対しては厳しい姿勢を貫いていたが、スパイダーマンがたくさん出てくるのは素直に嬉しい。

(子供の頃から能力がチート過ぎるキャラを嫌う傾向がある。MCUでもドクターストレンジやハルクが好きになれないのはこの辺だろう。)

スパイダーマン・ノワールとかもっと早くから知っておきたかった。

ネタバレしないように最小限にするが、スパイダーマンあるあるがたくさんで
「大いなる力は~」をやたら最後まで言わなくていいと止めたり、

各次元のスパイダーマンが「(スパイダーマンとして生きるのって)結構きついよね。人々は守れても大切な人は守れないし・・・ベンおじさんとか」とそれぞれがオリジンで必ず死ぬ人の名前を挙げたりと同じヒーローではなく同じスパイダーマンだからこそ盛り上がるシーンがあったり、かなり笑う事もあった。

まさに「スパイダーマンのためのスパイダーマンによるスパイダーマンの映画」だった。

トム・ホランド演じるMCUでのスパイダーマンは最高だけど、今年で34歳になるオッサンからするとサム・ライミ版のぶら下がってMJとキスするシーンはもちろん、「スパイダーマン3」でのグレ方を間違い過ぎて不気味なダンスをするあの迷シーンが取り上げられていたのは嬉しかった。

(あのダンスが象徴するように、終始大いなる力及び責任を忘れがちなピーターとスネ夫みたいな役回りのヴェノムなど、「スパイダーマン3」はおかしな映画だが、ある意味アメコミ的なバカバカしさが満載なので今も好きな作品。マーベルっていうか最近のDCに近いノリ)

サム・ライミ版オマージュだけで元は取った気分だったが、何よりも年を取ったピーターと出会えた事が個人的に「スパイダーバース」最大のポイントだった。

スパイディ史上最も胸アツ!!スーパーヒーローとは心意気!!「スパイダーマン ホームカミング」

↑俺のスパイダーマンへの想いを書ききった記事。

ヒーローなのにバスに乗り遅れる。
まともに告白もできない。
スパイダーマンとしての活動とバイトの両立で病む。
ダサ過ぎるサム・ライミ版スパイダーマンは当時の陰気な童貞の俺にとって救いだった。

そういう事もあり、エマ・ストーンが彼女のガーフィールド版は「リア充やんけ!!出直せ!!」と全く受け付けなかった。

その点、
高校生になって男二人でレゴのスターウォーズ作り。
体育の時間に女の子を眺めて気持ち悪がられる。
そもそもスパイダーマン自体そんなに街から必要とされてない。

ピンチになった時に「誰か助けて!!」と泣きべそをかくトム・ホランドのスパイダーマンは俺の理想のスパイダーマンだった。

最高にカッコ悪くてカッコいいスパイダーマンが帰ってきた事で「ホームカミング」を絶賛し大喜びしておもちゃを買い漁ったが、なんとなくスパイダーマンとは線を引いたような、お別れした気持ちだったのも事実。

というのもピーターは今でも学生だが、俺はというと、もういい年したオッサンだ。ピーターが抱えるような悩みは今の自分にはない。

ノスタルジックな気持ちにさせてくれたが共感はしない。スパイダーマンとは今も好きではあるがどちらかというと「思い出のヒーロー」 だった。

しかし、スパイダーバースで出てきたピーターは思いっきりオッサンだった。

オッサンと言っても「カリオストロの城」のルパン三世のような若い頃のギラギラ感が消えて良い大人になった年の重ね方じゃない。

ヒーローとしての活動に疲れて体中ボロボロ、白髪も混じり腹も出ている。MJとは離婚している孤独なオッサンだ。

よれよれの服でハンバーガーを貪り、おまけにマイルスに奢らせる。体型をごまかすためスーツの上からスウェットを履いている。

ダサさに加えて痛々しさもトッピングされていた。そんなピーターが世界の平和のために立ち上がり、若いマイルスを導く。

俺もこじらせた悩みはすっかり過ぎたが、疲れた中年になった。

仕事に追われてクタクタ。家の中では犬の方がポジションが上。

なかなか体重は落ちないし白髪は激増しているし、何よりすぐに疲れるようになった事を最近割と悩んでいる。

この前、俺が届いたばかりのホットトイズを触っている様子を嫁に盗撮されていたのだが、上下灰色のスウェットでソファーに寝転び薄笑いでフィギュアを触っている自分の姿は客観的に見て悪夢だった。

それだけに冒頭のサム・ライミ版のオマージュの影響もあり、まるでトビーマグワイアのスパイダーマンの20年後に会ったような気分。

「おまえもいろいろあったんだな!!30超えると色々変わるよな!!」と同窓会で再会した友人のような親近感がわいた。

家にあるホットトイズのサム・ライミ版スパイダーマンが経年劣化で褪色、スーツも弛んできているのでバッチリだった。

今回は吹替で観たが(宮野真守のピーターはもちろん、大塚明夫のノワールも最高だった)字幕でも観ようかなと思っている。ノワールの声がニコラス・ケイジみたいだし。

思春期の親愛なる隣人スパイダーマンは別の次元でくたびれたおっさんの親愛なる隣人でもあった。

このまま一緒に年を重ねていけばいつか老後の過ごし方で悩むスパイディーと会えるかもしれない。

P.S 劇中の要所要所で昨年天寿をまっとうし旅立ったあのじいさんが出てきて沁みるセリフをキメてくれるので胸を締め付ける。
まだ生きてたらアカデミー賞取った時にユーモアたっぷりのコメントをしてくれただろうに。