男一匹ミュータントが見せる、最後の漢気ダッシュ!!『ローガン』 ※若干ネタバレあり

~気合と根性で何とかしてきた17年!!気が付いたら要介護のジジイとじゃりん子しかいねえ!!絶望の中で、男の中の男=ローガンが魅せる最後の漢気ダッシュ!!~

X-MENの看板キャラクター=ウルヴァリン(ローガン)

どれだけダメージを負っても回復するヒーリングファクター、アホみたいに硬いアダマンチウム製の骨、飛び出す三本爪という、一度に三度美味しい能力を持つミュータントである。



実際、実写映画においても美味しい役柄であった。

タフガイかつアウトローな見た目からも分かる通り、率先して体を張った無茶をシリーズを通して俺たちに披露してくれた。
ミュータントの中で言えば間違いなくトップクラスの漢気を持つ、まあ男の中の男ですね。
勢いに乗ってウルヴァリン単独のスピンオフが2本作られてきたわけですが、気合と根性で駆け抜けてきたヒュー・ジャックマン版ウルヴァリン一代記もついに終わりを告げる。

それがつい先日公開された「ローガン」である。

という訳で気になるあらすじ。

時は2029年。
不死身!!ムキムキ!!剛毛!!

とX-MENでブイブイ言わせていたウルヴァリンことローガン。

死んでも死なないタフな能力のおかげで常にアンチエイジング状態健康保険要らずだったものの、いよいよ寄る年波が遂に彼を追い詰め始めていた。(ざっと200年近く生きているわけだからこの時点でどうかしているが今突っ込むことじゃない。)

どんな強敵も体固めでねじ伏せる漢気を発揮したのも今は昔。

気が付けばX-MENは解散。
それどころかミュータントさえいない世界になっていた。

最近じゃ傷の治りは遅いし、満足に爪も出やしない。

咳も止まらないし、足腰にもガタが来ている。

そんな訳で今ではタクシーの運ちゃんとして日銭を稼ぐ日々を送るローガンなのだった。

同居しているのは陽に当たれないという引きこもりレベル5000のハゲ=キャリバン。

かつては「プロフェッサ―X」として類まれなるリーダーシップを発揮していたチャールズ校長も、今ではすっかりボケてしまい超能力を暴発させてしまう要介護レベル6000になっていた。

金を貯めて船を買うのが夢だが、何より毎日の生活がままならない。

おまけに生きるか死ぬかの老老介護(主にチャールズのせいで)。

かつて世界の平和を守り続けたミュータント達とは思えない人生ハードモードである。

もう哀愁しかない。

ローガンがやさぐれてしまうのも無理はない話であった。

闇金ウシジマクンの登場人物ばりに出口の見えない生活を続けるローガン。

ある日、EXILEみたいなルックスのアンちゃん(ピアース)に人探しを依頼される。

ツーブロック、丸形サングラス、機械の義手。
明らかに堅気ではない。

何より人を舐めた態度なので速攻で断るローガンであった。

という訳で引き続き運ちゃんの仕事を続けるローガンだったが、前後してメキシコ女からスペイン語で助けを求められる。

女いわくヤバイ奴ら(案の定ピアース)から追われているから、女の子=ローラをカナダ国境に近い州まで送ってくれ、と。

かつてのローガンであれば話を聞いていたかもしれないが、少女の未来より今日の飯である。今は自分の生活が第一だ。

全力で見なかったふりをするローガンであったが、結構良い金が出してくれるという。

金が出るなら話は別だ!!

何より「これで船が買えるじゃない!!」と考え直し、改めて迎えにいくローガンだったが、何とメキシコ女はピアースに殺されているじゃない!!

再び見なかったことにして直帰したローガンだったが、気づかない内にローラが車に忍び込んでいたらしい。

思いがけず家に転がり込んできた「世紀末のじゃりん子チエ」ローラ。

このローラ、無口で無愛想な上に食い物を奪われそうになったら歯を剥いてブチ切れる。

子供の世話なんか見ている余裕はないローガンであったが、元校長の血が騒いだチャールズは小さな子供の突撃訪問に全力で喜ぶのだった。

しかし、ローラが家に転がり込んできたので大方の予想通りピアースもたくさんのオラオラ系のお友達と一緒に襲撃という名の家庭訪問に来たのだった。

以前であれば千切っては投げも出来たであろうが、あっという間に取り押さえられてしまうローガン。

もちろんチャールズはボケているので戦力にはならん。

いよいよピンチな、その時!
何とじゃりん子の拳からニョキニョキ二本の爪が生えてきた!!
子供離れした戦闘力を発揮し屈強なオラオラ系を瞬時に肉塊に変えるローラなのだった。

日本一不幸な少女

世界一危険な少女

なんとなく似てるなあ、と思っていたが、ほとんど血を引いているとしか思えない戦闘スタイルを改めて目の当たりにし「俺、子供いたっけ・・・」と思わず目を疑うローガン。

だがまあ、とりあえず状況は覆った!!

「ソレはソレ!!コレはコレ!!」精神でチャールズ、ローラを車に乗せて修羅場から逃走に成功するローガンなのだった。

なりゆきで始まってしまった逃避行。
果たして、ローラの正体とは?何故拉致されようとしているのか?
チャールズの介護と両立できるのか!?
何より、やさぐれたローガンは漢気を取り戻せるのか?

こうして本人の意思とは無関係にローガンの最後の戦いが始まった。

■ヤケクソに切り刻め!問答無用の残虐ファイト!

「子供と楽しめるアメコミ映画」という大前提を覆し、ショッキングな残虐ファイトが展開される本作。(まさかのR指定だ)

冷静に考えればあの爪で戦ったら、そりゃあ人肉なんてさけるチーズ感覚だろうという話ではあるが、 恐らく今までのXMENシリーズのウルヴァリンは綺麗に戦う余裕があったのだろう。

だが、本作のローガンは生活も体力も限界。というわけで余裕のないローガンの戦い方はえげつない。

人間の五体がポンポンと飛び、血飛沫も良い感じに飛び散る、景気の良さを見せる。

X-MENの映画で、こんな模写が見れるとは夢にも思わなかった。

奮われる暴力もえげつないのだが、本作のローガンが置かれている状況もえげつない。

何せ、仕事道具の車が車上荒らしに遭遇して傷が付きそうなもんなら「車は辞めろ!」と体を張って守るという…

今まで人類とミュータントの共存のために体を張っていた男が、たった1台の車の為に体を張るんですよ!!

泣かずにいれるか!?

…そうか!俺たちだけか!!

これは俺たちの事情であるが、常に生活に追われているくすぶったオッサンコンビとして充分身につまされたのだった。

■四捨五入したら「じゃりん子チエ」

オッサンと少女という組み合わせは映画では多い。
オッサンが少女を救う展開はまま見受けられるが、今作の少女=ローラはすこぶる戦闘力が高い。

歯をむき出しにして、ローガン顔負けの残虐ファイトを見せてくれる。

あまつさえ一般人にたいしても隙あらば容赦なく爪を出すデンジャラスライオンである。
思えば「じゃりん子チエ」でも、チエちゃんが下駄で学生をぶん殴っていたが、今作のローラとダブる気がしないでもない。
またローガンも、そんなローラに対して、あくまで対等かつぶっきら棒に付き合う。

しかし、いざ修羅場になれば二人で合体殺法Xジェットストリームアタック(今名付けた)をかます!!

この距離感は、じゃりん子チエのチエちゃんとテツの関係にも似ている・・・気がする!!

というわけで、映画「ローガン」は四捨五入したら「じゃりん子ローラ」だ!!

幼女と聞くと鼻を伸ばすペド野郎も世の中にはいるが、是非ローラに切り刻まれて欲しいもんである。

というか、駿!お前のことだぞ!!

■男一匹ミュータント!最後の漢気ダッシュ

本作ではやさぐれ具合に拍車が掛かっているローガン。

そのせいもあってか、いつもの獣ぶりを小出しにしていたが、本作ラストでは満を持して男気という名のタウリン1000mgを自ら注入!!

「結局俺は体を張るしかねえ!」とヤケクソに突っ走り、

吠えながら人をブチ殺す。

絵面は間違いなく殺伐としていたが、ここで俺達の目頭が熱くなった。
あるいは俺達の頭がオカシイのかもしれないが!!

ともあれ男一匹ミュータントの見せる最後の漢気ダッシュは、「俺もこうありたい」と思わせてくれたのだった。

これで遂にシリーズ皆勤賞のヒュー・ジャックマンもウルヴァリンを引退。
思えばX-MENとの付き合いも長くなり、俺達もいい年になった。

「記憶も金もないけど、元気と漢気だけはいっぱいです」精神で17年。
よく続けたもんだなあ、と感慨深い。

俺達も「長い付き合いの友人が仕事を辞めるので、ちょっと会ってきます」と仕事を早めに切り上げた価値は十分にあった。

アメコミ映画なので、原作の豆知識とかを入れるべきなんだろうが、敢えて言わせて頂きたい。

そんなもん期待するな!このサイトで!!

乾いた世界観。
煮詰めたような哀愁。
過剰なまでの残虐ファイト。
漢気ダッシュ。

ビーパワーハードボイルド的には、そこにビリビリ痺れる映画である。

是非ローガンの最後のけものフレンズぶりを劇場で見届けて欲しい。