ラスト13分、タランティーノ全力の大爆発!!
※はじめに 先日のサイトダウンの件で、多数の方からのご声援を頂き、初めてこのサイトを楽しみにして頂いている方がいらっしゃる事を知りました。
こんなサイトを愛読頂きありがとうございます。
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クエンティン・タランティーノといえば物心つかない我々に「ヨタ話が出来る男はカッコいい」という人生における間違った美学を叩きこんでくれた男。
また、「パルプ・フィクション」でのチャック・ベリーに乗せたダンスや「キル・ビル」での ブルース・リーリスペクトの戦闘スーツなどの「よくわからんがカッコ良い!!」世界観。
タランティーノに出会ってしまうと文科系映画オタクの男子から意識高めのシネフィルまで誰もが心の中学生を火傷させられるのであった。
ブレない俺ジナルなカッコよさ。 そんなタランティーノの「名探偵サミュエル・L・ジャクソン」だった「ヘイトフル8」以来の新作 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」が公開!!
主演はレオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー!! 「時は来た!!」と鼻息を荒くして試写を一足早く観させて頂いた。
おもしろい、つまらないではない。気持ちよかった。
実際、観賞後に体が軽くなったしまるでサウナで汗を流した後水風呂に入ったかのようなさっぱりした気分だった。
お盆の間はいろいろ映画でも見ようかなと思っていたが、まだ余韻を味わいたいなと いうことで「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」のサントラを聴いてはニヤニヤしていた。
休日寝てばかりで時間を無駄にしてもいい映画を観れば「今日はいい日だったな」と その日一日が幸せになる事はあるが、何週間もふやけた顔になる中毒性はなかなかお目にかかれない
というわけでサイト崩壊から復活しビーパワーハードボイルドZになってからの 一発目は「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」です。
本作は1969年のハリウッドが舞台で実際に起こった「シャロン・テート殺人事件」がベース。ハリウッドに生きる人間達の生活を描きながら、若手女優シャロン・テートがチャールズ・マンソンの信者に殺される8月9日、それぞれの人生が交錯する。
劇中、60年代の音楽とファッションが溢れており、例えば「オースティンパワーズ」が好きな人あたりには たまらない世界だ。 (ロック好きの俺としてはDEEP PURPLEが普段スポットライトのあたらない第1期を取り上げられていたのが激シブポイントだった。)
オシャレ度がタランティーノ史上最高だが、「哀愁」も過去最高だ。
本作の主役であるレオナルド・ディカプリオが演じるのが架空のスター、リック・ダルトン。そしてブラッド・ピットが演じるのがリックのスタントマンであるクリフ・ブース。
リックは人気TVシリーズの主役で50年代は人気だったが、映画俳優にステップアップ出来ずに今は悪役を演じる事しか出来ない。
クリフはそんなリックのスタントマンであること、過去に自身の悪い噂もあり、仕事はほとんどなく今やリックの雑用係。
隣に越してきたシャロン・テート(マーゴット・ロビー)と「ローズマリーの恋人」の監督であるロマン・ポランスキー (ラファエル・ザビエルチャ)夫婦は二人とも評価がウナギ登り、パーティーに行けばどこでも主役。
お隣さんだけど、状況は全く違う。リック&クリフとの対比が切なさを加速させる。
自分達は成功をつかみ切れなかった。落ち目である事も自覚している。 隣に住んでる女優は若くしてトップに上り詰めようとしている。うらやましくてつらい。
何も成し遂げていない俺が言うのもおこがましいが、ディカプリオとブラピの姿は心に沁みた。
20代の頃は根拠のない希望と元気で突っ走る事ができるが、30も超えると現実が見えてくる。40,50になればもっとだろう。
そんな時にただ一緒にいるだけで落ち着く友達の存在は貴重だ。
CGがなかった時代だけに現代以上に俳優とスタントマンの関係は夫婦以上の関係だったのだろう。リックは「俺は時代遅れだ。今や何もない」と人目をはばからず泣く。それを口数少なく受け止めるクリフ。
リックは落ち目ではあるが、まだ、豪邸に住み高級車に乗っている。 クリフはというとトレーラーハウスで犬と暮らしている。リックの雑用が終えるとトレーラーハウスに帰り 犬にドッグフードをあげて自身はチーズマカロニを作る。(このブラピ特製チーズマカロニは 「パルプフィクション」のバーガー&スプライト「デス・プルーフ」のナチョスに匹敵するタランティーノ飯なので 要チェック!!)
明らかにクリフの方が泣き叫びたい状態なのだが、ぐちぐち言わず暗い顔のリックを毎日車でハリウッドに送迎しては「おまえはスターだ!!リック・ダルトンだ」と勇気づける男気!!
リックはリックで現場でセリフとトチって凹んだり、休憩時間中に将来の不安から泣き出して子役の女の子に慰められるなどポンコツっぷりを発揮するが、クリフのためにスタントマンの仕事をもらえるよう業界の関係者にお願いする。
みじめな中年男二人の不器用な友情には熱くなるものがある。最近「男の友情」と「BL」が混同されている風潮があるが、これは「男の友情」だ。
過去にもかつて華やかだったスターが落ちぶれている様子を描いた映画はミッキー・ロークの「レスラー」やジャン・クロード・ヴァン・ダムの「その男ヴァンダム」があるが、本作はコンビというところだ。
(また「レスラー」と「その男ヴァンダム」は主演俳優自体が切ない状況だったのでもはやドキュメンタリーだったという点で本作はまだ救いがある)
ファッション雑誌が飛びつくようなレトロでオシャレな世界観、哀愁たっぷりの人間ドラマにしんみりしていたが、やはり男タランティーノは違っていた。
「イングロリアス・バスターズ」以降の近年のタランティーノは後半に一気にスパークする傾向があるが 本作のラスト13分でタランティーノ全力の大爆発が起こる。
例えるなら海際のカフェでボサノバのコンサートを見ていたら、突然デスメタルのバンドが出てきてカフェに火を付けたような大惨事。
今回呼んでいただいた試写会が一般向けではなかったので業界人らしき人が静かに見ていたのだが、 ラストで大爆笑の嵐が起こっていた。
ネタバレになるので詳細は割愛するが・・・・
ドラッグによる深刻な症状
「ぐちゃっ」という音がするまで顔面を殴られる。
股間を噛みちぎられたクソ野郎の断末魔。
生きたまま火炎放射器で焼かれるクソビッチ
漫☆画太郎先生でも「ちょっと落ち着いて!!」と止めに入るレベルの死、死、死!!
人が死ぬってこんなに素敵な事だなんて・・・。
普段から爆発と流血を映画を見慣れている俺でも胸がときめいた。
本筋以外でも
駐車場でわんわん泣くディカプリオ
カッコ良さが「ファイトクラブ」以上のブラピ
とにかくかわいいマーゴット・ロビー
調子に乗ってブラピにボコられるブルース・リー(ドラゴンの安売り)
抜き打ちで恋愛を語るスティーブ・マックイーン
ひょっこりアル・パチーノ
腋毛
ドラッグとセックスまみれのダコタ・ファニング
ティム・ロスの衝撃的な扱い(大爆笑だった)
そして腋毛
何度でも見たくなる要素が満載。
以前より10本撮ったら引退すると公言しているタランティーノだが カンヌ映画祭で「今回が好評だったらもう(引退しても)いいかな」と言っていたらしいのもうなずける。
やりきった、否、殺りきったタランティーノに「お疲れさん!!」と送別会を開いてあげたくなる 「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」 観終わった後はタランティーノ映画ばりにヨタ話がしたくなる傑作ですよ。