社会のモブキャラへの応援メッセージ「フリー・ガイ」

「デッドプール」以降絶好調のライアン・レイノルズがまたおかしな映画を引っ提げてきた。

主人公がテレビゲームのモブキャラ(背景にいるNPC)!!

子供の頃にポケモンでお月見山のおっさんからコイキングを500円で買わされたことがあるが、まだ印象に残っているキャラは幸せだ。

この記事を書いている今も「グランド・セフト・オート」や「龍が如く」あたりで多くのモブキャラが人々の記憶に残ることもなく、殴られたり乗り物を奪われたりしている

そんな彼/彼女たちを元に作られたのが「フリー・ガイ」です。

https://www.20thcenturystudios.jp/movie/Freeguy.html

舞台は大人気オンライン・ゲーム「フリー・シティ」(画期的な治安の悪さからしておそらく「グランド・セフト・オート」が元ネタ)

現実世界ではゲームデザイナーのミリー(ジョディ・カマー)が開発元であるスナミに自分のゲームを盗用されたという事で独自に捜査を続けており、今日もプレイヤー「モロトフ・ガール」として自身が開発したプログラムの痕跡がないかゲーム内を探索していた。

場所は変わり「フリー・シティ」内のモブキャラのガイ(ライアン・レイノルズ)

自分がゲームの中の背景という事を知らない彼は、銀行員として毎日同じルーティンを繰り返し、朝から銃撃戦が起こったり、1日に何度も銀行強盗されたり、車にはねられたりする事に一切の疑問を抱かず生活していた。(銀行強盗がゲーム内のサブミッションに設定されている様子)

ある日出会ったモロトフ・ガールに一目惚れしたガイの中で変化が起こる。

いつものように入ってきた銀行強盗をなんとなく返り討ちにして装着しているサングラスを奪ってみたところ街中にアイテムや情報が表示されるようになる!!

Ryan Reynolds as Guy in 20th Century Studios’ FREE GUY. Courtesy of 20th Century Studios. © 2020 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

試しにアイテムを拾ってみれば大金を入手できた!!

警察から突然「NPCのスキンをどこで手に入れた!?」「永久BANするぞ!!」と理解できない警告をされるも、ガイはモブキャラなので言っている意味がわからない。

「規約違反」いう事で銃撃されるがサングラスに表示されたアイテムで高層ビルを上ったり飛び降りる事で切り抜けることに成功。

サングラスをかければ色々表示されるし、警察に襲撃されるし状況はさっぱりわからないが片思いしているモロトフ・ガールに接近したところ「レベル」をあげるように言われる。

彼女に振り向いてもらいたい一心で街で暴れている人たち(プレイヤー)を退治していき
レベルを上げていくガイ

現実世界では「NPCのスキンを使った凄腕アカウント」と誤認されてガイ人気は爆発。

モロトフ・ガールと距離を縮めていくガイ、そしてモロトフ・ガールの「中の人」であるミリーもガイに惹かれていくが、ミリーの以前の同僚で現在はスナミに勤務するキーズ(ジョー・ローリー)からガイこそが以前自分たちが作った人工AIであると教えられる。

「自分で作ったデータに惚れてたなんて・・・」と若干凹むミリーだがやはり「フリー・シティ」は自分のゲームを盗用したと確信する。

スナミの社長アントワン(タイカ・ワイティティ)は「フリーシティ2」を「1」とデータを一新した完全新規作品で発売するつもりだが、ガイ人気で「2」の予約数が伸び悩んでいることにイライラしていた。
(旧作と互換性がないあたりもグランドセフトオートのパロディっぽい)

ガイを削除したいが調べても削除方法がわからない。

というわけでアントワンは「フリー・シティ」を再起動させる荒業にでる。

ゲームの再起動によってこれまでの記憶がなくなり元の銀行員に戻ったガイだったが、「再起動しても元のデータは消えない。」という事で開発者であるミリーとキーズの奮闘ですぐに記憶が戻るガイ。

ガイの証言でついに「フリー・シティ」内の通常ではいけない所に過去に作ったゲームのデータが残っていることを発見する。

「2」の予約数は伸びないし、自分たちが過去に他人のゲームをパクったのがバレる。

アントワンは「フリー・シティ」のサービスを終了させる事にする。

記憶が戻ると共に自分がゲームの世界の架空の人物だという事を知って落ち込むガイだったが
同じモブキャラ仲間のバディの一言で立ち直る。

「ゲームの世界かもしれないが、友達がいるこの世界は俺にとっての現実」

崩壊(データ削除)されていく世界を食い止めるためガイはモブキャラを集結させて決起する。モブキャラは世界を救うヒーローになれるのか!?

Jodie Comer as Molotov Girl and Ryan Reynolds as Guy in 20th Century Studios’ FREE GUY. Photo by Alan Markfield. © 2020 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

正直、軽い気持ちで観たが、期待を遥かに超えていた。

まず、ライアン・レイノルズ名物のシュールかつブラックユーモアの効いたジョークがおもしろい。

フリー・シティで最も影響力のあるプレイヤーが現実ではゲーム内でのフォロワー数だけが自分のアイデンティティの引きこもりオタクだったり、

ガイを追い込むためにリスポーンを禁止にしたり、ガイを倒すために作られたキャラクターが未完成のままリリースされたためにセリフが設定されておらず、「キャッチフレーズ!!」と叫ぶ等こんなノリが連発する。

そしてアントワン社長を演じたタイカ・ワイティティ。近年絶好調の彼が監督ではなくキャストとして登場。

「金が全て」「ファンの気持ちやコンテンツの愛着より利益」と最近いろんなところで揉めているディズニーを暗喩したようなキャラだが、出てくる度に大暴れするので出てきた時は飲み物は飲まない方がよい。

また重要ポイントとして「フリー・ガイ」は20世紀フォックス時代に製作が進められていた企画で、ディズニーに買収され「20世紀スタジオ」となった後も製作が進められた作品だ。

(今気づいたが、劇中のジョークで不謹慎なネタがないのはディズニーチェックが入ったのかもしれない。とはいえソフトな笑いという事ではなく思わず笑ってしまうほど冴えている。)

この買収劇についてはネガティブな意見が多かったと思うが「フリー・ガイ」については
ディズニーの買収がめちゃくちゃ良い方向に作用している。

劇中最後のあの演出はマーベル、スターウォーズファンは人によっては涙するレベルだろう。あの登場と音楽の使い方はたまらない。

正直ちょっとやそっとのサプライズ演出では驚かなくなってきたけど、あれは俺も立ち上がりそうになった。

ゲーム以外にもディズニーネタの小ネタも盛りだくさんでそこら中に表示される。

おまけにチャニング・テイタムやドウェイン・ジョンソンやヒュー・ジャックマンなどカメオ出演が連発する。

正直1回じゃ全ての小ネタを把握しきれない。劇場はもちろん、早くブルーレイで一時停止しながら何度でも見たい。

(パンフレットが販売されないのが残念。この映画こそパンフレット必須なのに。)

Ryan Reynolds as Guy in 20th Century Studios’ FREE GUY. Courtesy of 20th Century Studios. © 2020 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

本作を語る上で重要なのが「優しく背中を押してくれる」という事。

ディズニープロデュースとなると「感動のごり押し」「ポジティブの押し売り」気味なテーマだったり、こういった仮想世界をテーマにした作品だと「バーチャルよりリアル」という着地になったりする。

過去に「レディ・プレイヤーワン」で古今東西のキャラクターの集結に大喜びしたが最後は「リアルが一番、恋人を作れ」というオチにメンタルを負傷した人は少なからずいるだろう。

「フリー・ガイ」のテーマはリアル、バーチャル関係なく「自分の現状を悲観しない。自分自身で動けば環境は変えれる」と個人的に思っている。

ガイのモブキャラ仲間の警備員のバディ。最初は映画によくいるやたらテンションの高い友達キャラだと思っていたがこいつが本作のMVPだ。

世の中の大半はモブキャラだ。ずば抜けた才能もなく、裕福でもなく世に出ない存在で一生を終える。

・身長が10cm高かったらよかった。
・もう少し整った顔に生まれたかった。
・もっと良い学校や会社に所属したかった。
・スポーツや音楽の才能が欲しかった。

と現状を悲観することもあるだろう。

ゲームの世界とはいえどんどんレベルアップして目立っていくガイよりも、
モブキャラの中でも目立つ存在ではない警備員のバディの行動がゲームのみならず現実世界の人々の心を動かすシーンは涙が出そうになった。

タイトルや予告から「目立たない存在が頑張って感動させる映画」とは推測していたが、観た後にこんなにポジティブになれるとは思いもしなかった。

「フリーガイ」はくすぶっている全てのモブキャラに送る応援メッセージです。

俺も一生モブキャラの一人として自身のスペックの低さに悲観せず仕事しようと思ったし
今後ゲームをする時は不要ににモブキャラを殴ったり撃たず親切にしようと思いました。

【8月28日追記】※ネタバレあり

ミリーとキーズの恋愛パートはめちゃくちゃベタなんだけど、ミリーの鈍感さとキーズのあと一歩いけない感じが好きでした。

ヒュージャックマンはマスクを着けているプレイヤーの一人、ドウェイン・ジョンソンは銀行強盗の一人の声を当てているそうです。わかるか!!(笑)

いろいろ微妙なディズニーですが、劇中終盤でアイテムとしてキャプテンアメリカの盾が登場→アベンジャーズテーマが流れる→カフェでゲーム動画を観ていたクリス・エヴァンスが「俺の盾だ!!」と驚くの流れは買収したからこそ出来た奇跡の名シーンです。

続編が決定したみたいですね。今後ディズニーチェックがより厳しく入ると思いますがこの世界観は守って欲しいです。

「フリー・ガイ」

8月13日(金)全国公開

© 2021 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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