男の哀愁 ガンズアンドローゼズと共に年を取る。

ガンズアンドローゼズ(以下ガンズ)がどれくらい好きかというと

中学生の時、筆箱にマジックで「GUNSN’ROSES」と書いていたし、
自分の机にも同じように彫刻刀で掘って怒られたし、

30歳を超えてバンTを大量に処分したのにガンズは3着増えたし、

ハワイに旅行に行った時、地元でアメコミでも買うつもりが無意識で「Appetite For Destruction」のレコードを買っていたし、

東日本大震災の影響で大阪公演のみで終わったスラッシュのソロライブでスラッシュが投げたピックをヘッドスライディングでキャッチした。(スポーツと無縁の自分が人生で最初で最後にしたヘッドスライディングだ)

くらいに好きだ。

というわけで今回はガンズアンドローゼズについて書きます。

■男たちの意地のぶつかりあい期

俺がガンズを知った2000年当時はある意味、バンドの歴史の中で最も過激だった。

1986年に
アクセル・ローズ(Vo)
スラッシュ(Lead Gt)
イジー・ストラドリン(Rhythm Gt)
ダフ・マッケイガン(Ba)
スティーヴン・アドラー(Ds)

の5人でデビューし1987年の「Appetite For Destruction」がリリースから1年かけて大ヒット。

LAのストリートから出てきた不良的なルックスもMTVにウケて、当時のビジュアルの派手なバンド達を一網打尽。世の中のトレンドを変えて一躍世界的なバンドになった。

ただ複雑な生い立ちが影響と思われるアクセルのややこし過ぎる性格が原因で
・ライブは2,3時間遅れが当たり前
・客とケンカして終了
・数多くのバンドとのケンカ
で内部も徐々に崩壊

1994年にリリースしたローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」のカバーでアクセルが他のメンバーに無断で地元の友達を加入させてギターを弾かせたのが決定的な理由で活動停止。

一人ひとりメンバーが脱退していき、オリジナルメンバーはアクセル一人残った状態で沈黙。

1999年に5年ぶりに出したシュワルツェネッガーの「エンド・オブ・デイズ」の主題歌「Oh,My God」が当時の流行っぽい曲調だったり、(これはこれで好きだった)

2000年の年越しライブで数年ぶりに表舞台に出てきたアクセルが若干ふくよかになっていたりとネガティブな話題が多かったが、危険さは健在で、中学生の俺はしびれにしびれた。

ちなみにサマソニ2002で来日した時も、無断で2時間遅らせたが誰も注意できない空気だったらしい。

スラッシュとダフも、元ストーン・テンプル・パイロッツのスコット・ウェイランドをボーカルに2002年にVelvet Revolver(ヴェルヴェット・リボルバー)を結成。

MCUの以前のアン・リー版「ハルク」の主題歌を担当し、2004年には1stアルバムをリリース。打倒アクセル!!なハードロックが満載の名盤だった。

当時、Velvet Revolverの初来日公演に行ったが、1時間近く開演は遅れ、絶賛ヤク中だったスコットの終始目がうつろだった。

ステージにはペットボトルが投げ込まれるがスコットは煽っていたし、ライブ終了後は入れ墨だらけの兄ちゃんがメガネのおっさんを殴っていたし、今思えば治安の悪いライブだった。

やがてアクセル率いる本家ガンズも2008年に14年ぶりのアルバム「チャイニーズ・デモクラシー」をリリースした。

■本当の意味の暗黒期

「チャイニーズ・デモクラシー」はアクセルの嗜好が爆発した大作揃いの曲が多く、これはこれでカッコいいのだが、世間は厳しい。

沈黙が長すぎて90年代のファンも離れていたのだろう。さらに昔のガンズとは異なる曲調だったのでアルバムのセールスも評価もぱっとしなかった。

悲しいことにアクセルが思うほど世間はガンズを待っていなかった。

全盛期に比べて太りはしたもののアクセルのカリスマ性は健在だし、他のメンバーもリチャード・フォータスやDJアシュバなどカッコいいメンバーもいたが、厳しい見方をすると昔の曲しか盛り上がらない「アクセルとバックバンドによる懐メロコンサート」だった。

嫁が2009年の来日公演に行ったそうだが、見ててつらかったそうだ。さらに2時間遅れた上に3時間演奏したので終電がなくなり、ライブ後の会場は騒然。

「あの時はアクセルを恨んだ」と語っていた。

ヴェルヴェット・リボルバーもヤク中だったスコットが主な原因でアルバム2枚で活動停止。
後任にスリップノットのコリィ・テイラーを入れる話も出たが実現しなかった。

時を前後してスラッシュはゲーム「ギターヒーロー」のマスコットキャラになり子供たちの人気者になる。

この頃に出版されたスラッシュの自伝を読んだのだが、母親が業界の人間でデヴィッド・ボウイと付き合っていたので一時期家に住んでいたりと、比較的裕福な家庭なのは知っていたが、

「ギターの練習をサボった日はない」
「練習をしないやつが「自分のスタイルはルーズ」なんて言語道断。しっかり練習したうえでルーズなスタイルを作れ」
「ビラ配りなど地道な宣伝が大切」
「モトリークルーに絡まれて怖かった」
など根が真面目なのが垣間見える内容だった。

その後、同じく根が真面目なボーカル、マイルス・ケネディとソロバンドを結成。CDの付属のドキュメンタリーでも

「俺は自分がヒーローだと思っていない」
「称賛はありがたく受け取るがあぐらをかくつもりはない」
「多少はギターのセンスがあるかもしれないが、自分の理想に比べたらまだまだ足りないところだらけ」
と謙虚な性格が爆発していた。

ちなみにスラッシュのソロバンドはアルバムリリースの度に買っているが、個人的に曲にパンチがないというか正直あまりピンと来ていない。

ダフはというと「ガンズが売れ出した時に散々カモられたからきちんと勉強する」という事で大学に進学して経済学を専攻。
ツアーの合間もレポートは欠かさず提出し優秀な成績で卒業した。

■おっさん達の仲直り

2014年頃くらいだろうか、ガンズ界隈の動きが出る。

「久しぶりに会ったら楽し過ぎてホテルで何時間も昔話で盛り上がった」ということで一時的にダフがガンズに復帰したり、最も関係が悪化していたアクセルとスラッシュがついに歩み寄ったというニュースが世界中を駆け巡った。

アクセルはライブ遅刻によるプロモーターからの違約金などでメンバーから給料未払で訴えられるほど金欠。
スラッシュは離婚で金欠。

これはチャンスと多くの関係者が動きだし二人だけの食事会を企画。

「関係修復は絶望的」と言われていたが、二人とも金に困っていたおかげで、20年越しの仲直りとなった。

当初はオリジナルメンバー5人での再結成が計画されていたみたいだが、
脱退後はそれぞれのバンドに飛び入り参加したりマイペースに生きていたイジーは
「ギャラが平等じゃないからしらけた」と辞退。

スティーブンはインタビュー動画を見ればおわかりの通り長年使い続けているドラッグの影響が深刻過ぎるのでバンドには復帰できないが、ゲスト参加で数曲演奏するだけで高額なギャラを受け取れるというある意味一番おいしい待遇で落ち着き、

アクセル、スラッシュ、ダフに加えて

誰も注目していないが、さりげなく91年からずっと在籍している
ディジーリード(Key)

アクセルワンマンバンド時代からの
・リチャード・フォータス(Gt)
・フランク・フェラー(Gt)

ガンズ初の女性メンバーの
メリッサ・リース(Key)

の7名で復活した。

アクセルがスラッシュとの再結成について聞かれた際に答えた発言を冠した

「Not In This Lifetime(生きている間はない)Tour」

は2016年4月からスタート。

2017年1月に来日もしたので俺も夫婦で観に行った。

アクセルワンマン時代のライブに行って「アクセルが太り過ぎてショックで途中から目をつむって聴いていた」と言っていた嫁も楽しみにしていた。

これまで2,3時間は遅れるのが当たり前だったのに定刻ぴったりにスタート。
会場はのんびりビールを買いに行くつもりだった客の失笑と悲鳴に包まれた。

健康的な生活で全盛期よりカッコよくなったダフが名曲「It’s So Easy」のイントロを弾き
飛び出してきたアクセルは遠目からでもわかるくらい太っていた。

そして隣にいるスラッシュも同じくらい太っていた。

名曲中の名曲「Welcome To The Jungle」が始まっても隣で嫁が笑っている。

明らかに感動で笑っている様子ではないので聞いてみたら「(当時アクセルのマイクスタンドが太かったので)ダイソン持ったアメリカのおじさんがくねくね踊ってる」と言っていた。

曲が終わるごとに何度もお辞儀をするアクセル。

それに応えるかのように「チャイニーズ・デモクラシー」の曲もしっかり覚えて演奏しているスラッシュとダフ。
※ロックバンドが再結成した場合、絶対に「Burn」は演奏しないディープパープルなど主要メンバーが在籍していない時代の曲はセットリストから外れる事が多い。

最後は肩を組みあうアクセルとスラッシュ。

当日の写真。

ライブが始まった時は大半が冷ややかに見ていたのに、圧倒的な実力でライブが終わる頃には
会場のほぼ全員が拳をつきあげていたというBABYMETALの方が遥かにロックだった事は誰も触れなかった。

ただ、声を大にして言いたいのは初めてのガンズのライブが楽しかった。

確かに想像と違うものだったけど、優しい気持ちになったライブは2017年のガンズがダントツ1位だ。

ドラッグ、金、裏切り。憎しみあってきた男たちが乗り越えた。

あれだけワルのイメージで売ってたのに笑いあってるし太っている。
大人になった事のカッコよさと、ほんの少しの寂しさが混在した哀愁漂うライブだった。

■その後

再結成はコロナによる中断もあったがついに5年目。

そして「チャイニーズ・デモクラシー」から13年ぶり、アクセル、スラッシュ、ダフによるオリジナル曲としては30年ぶりとなる新曲が2曲発表された。

「Absurd」は20年前に小遣い2か月分で買ったブートレッグに収録されていた「Silkworms」のリメイクだ。

いわば「チャイニーズ・デモクラシー」の没曲だ。

一緒にイチから曲を作るのは大変なので性格的に一番我の強いアクセルのアイデアをもとにスラッシュとダフが乗るスタイルになったのだろう。

すこぶる評判は悪いが、これは大人として正しい判断だ。ご満悦なアクセルとプレイヤーに徹する他メンバーの姿が思い浮かぶ。

続く「Hard Skool」は仮タイトルは「ジャッキーチェン」だったらしい。確かにジャッキーの主題歌くさい歌メロだ。

これも元は「チャイニーズ・デモクラシー」の没曲だ。

アクセルが作ったものの「昔過ぎるから」と封印していたのか、スラッシュとダフの発言権がスタジオに籠っているうちに増えたのかはわからないが、「Abusurd」に比べると全盛期のガンズらしさは強い。

ただ、「あの頃の自分たちを再現した」感があってこれはこれで味わい深い。

退廃さはすっかり薄れたが、長年疎遠だった男たちがまた集まって音楽を楽しんでいる姿はカッコいい。

現在のガンズのツアーでは新曲だけでなくヴェルヴェット・リボルバーの「Slither」までカバーしている。アクセルなりの最大限の歩み寄りだろう。

スラッシュはインスタやツイッターでおもしろ画像を頻繁に投稿しているし(一度フォローしているアカウントをチェックしたがギター関係、フィギュア関係、動物のおもしろ動画ばかりだった)

ダフはというと奥さんが美魔女で売れているし娘たちもメディアに出てきており、「イケてるお父さん」キャラが定着している。

ロック的にはダメかもしれないが人間的な哀愁がある。

ガンズにはこれからも誰もが憧れる老後を突き進んで欲しい。
そしてほんの少し我々に「若かったあの頃」を思い出して切なくさせてくれたらそれでいい。

【余談】

ちなみに一番好きなガンズのメンバーは91年~93年までいたギルビー・クラークです。

スラッシュから「ライブでガンズのカバーばかりして小遣い稼いでみっともない」と言われたこともあるが小さい会場でマイペースに演奏している姿は達観していてカッコいい。

インスタは家族や犬、趣味のバイクの投稿ばかりで、たまに娘と一緒にライブもしていて幸せにあふれている。憧れる生き方だ。