ジョーカー・フォリ・ア・ドゥを観て(ネタバレあり)

本国での公開時から酷評の嵐だった「ジョーカー・フォリ・ア・ドゥ」

ようやく日本でも公開されたので記事を書きます。

前作「ジョーカー」はおなじみのアメコミキャラクターの映画かと思えば弱者男性映画の傑作としてアカデミー賞まで受賞してしまった。

全ての社会人に響いたセリフ

小汚くて貧しくて、おまけに突然大声で笑い出す持病を抱えているアーサー(ジョーカー)。
さらに親は毒親、彼女は妄想、職場や社会でのいじめでついに心が崩壊。
凶悪事件を起こすまでの過程をじめじめと描いていた。

いわゆる胸くそ映画だけど、秀逸なのが細かい描写。例えば
・コメディセンスのないアーサーが「元気に下ネタを言えばウケる」と真剣にノートにメモするズレた感覚
・アーサーがテレビでスベリ倒している様子を取り上げられて司会者役のデ・ニーロが「イタいwww」とネタにする。

のが生々し過ぎてきつく、社会の嫌な部分の描き方が絶妙だった。

最初は監督がコメディ映画「ハングオーバー!」シリーズのトッド・フィリップスと知って「どうして?」と思ったが、「ハングオーバー!」でも中年になっても無職で実家暮らしのアランを懇切丁寧に描いていたので「ヤバいおっさんを的確に描くという点で一緒だ!」と納得した。

映画が大ヒットしたこともあり、公開当時は毎日のように色々な意見がネットを飛び交った。

その中で一定多数いたのが「俺/私もジョーカーかも」とジョーカーに心酔、
「社会でうまく生きていけない自分ってカッコいい」と言い出す連中。

ジョーカーに自分のメンヘラっぷりも重ね合わせて「俺も近いところがある」と自分語りするわけだが「おまえはジョーカーではなくロッキーを見ろ、階段を降りるな、登れ」と思ったものだ。

あれから5年、世の中にはジョーカーにも負けないくらいのおかしな人が増えた。

迷惑行為をする配信者、飲んでる薬自慢のメンヘラ、世の中に怒り続けている引きこもり、TwitterやTiktokで映画やテレビ番組をアップしてフォロワーを増やすことだけが生きがいの人、コロナは風邪、映画アクティビ・・・この辺でやめとく。

皆共通して、社会に何らかの不満があり寂しいんだろうけど「おまえはそこまでして注目されたいのか?」と思う。

個人的にちょっと前に出てきた裸同然の格好でギター弾いて注目集めてる女とか大嫌い。

前作ジョーカーを妄信する連中および世の中に溢れかえるジョーカーみたいな自称インフルエンサー

トッド・フィリップスはこう思っただろう。

「気持ち悪っ!!」と。

※思いっきりネタバレするので未見の方は要注意

 

 

 

 

 

あらすじを超簡単に書くと

「前作で起こした事件で一躍有名人になったアーサー。
裁判には芸能人の追っかけのように人が殺到、テレビでは特集が組まれ「理不尽な世の中の代弁者」とカリスマ扱いされる。

おまけにリー(レディ・ガガ)という彼女まで出来て、収容されている身ながらもイチャイチャしている日々。

これまで手にすることが出来なかった「リア充」への切符を手にしたわけだが、結局はただの犯罪者。

ろくでもない最期を迎える。」

前作ではアーサーのみじめな人生が細かく描かれていたが、今回は劇中で何度もミュージカルパートが出る。

ネットで酷評している連中が多いのも納得できる。

前作を心酔してたような人間からすれば、
現実なのか妄想なのか全くわからないシーンの連発な上にもっとも苦手な映画であろう「ラ・ラ・ランド」のようなミュージカルを何度も観させられ続けて最後に、

「気持ち悪いことしてまで承認欲求満たすな。
しっかり生きてない奴が幸せになれるわけないだろう!!」

とビンタされるようなラストなのだから。

個人的な感想だが、塀の外で一部の連中から神格化されたのは事実だけど、法廷での演説も、最後の法廷爆破も彼女(レディ・ガガ)が出来たのもアーサーの妄想だと思う。

おそらく今回キレてる奴は「レディ・プレイヤー1」で「ネットよりリアルの生活を大切にしろ、恋人を作れ」と言われてキレてた奴と同じだと思う。

もしくは自分と同じだと思っていたジョーカーに彼女が出来てエッチなことまで出来たことに対して激しく怒っているのかもしれない。

 

おそらく冷や水を浴びせられて「金返せ!!」とキレる声はどんどん増えるだろうが、そこはトッド・フィリップス。

「ハングオーバー!」シリーズでも中年ニートで親のスネをかじって生きてきたアランが最後にまともに生きるきっかけを作ったように本作でも最後の最後で手を差し伸べている。

エンドクレジットで流れる歌の
「True love will find you in the end」
の和訳はこんな感じ

「悲しまないで、私はあなたが悲しんでいる事は知ってる。
でも、あきらめないでください
真実の愛は最後にあなたを見つけるでしょう。あなたがそれを探しているなら」

一生懸命生きていたら、自分の人生は作れる。

というわけでいつまでも切れずに「ジョーカー・フォリ・ア・ドゥ」を観て
ボコボコになった後はポジティブな気持ちになる作品もたっぷり味わってください。

ほら「ロッキー」シリーズとか、ゲームなら「龍が如く」シリーズとか。