“アメリカン・ロック界のヴァン・ダム”プリティー・ボーイ・フロイド

俺とPretty Boy Floyd 2025/3/29 @代官山Space Odd

Pretty Boy Floyd(プリティー・ボーイ・フロイド)というアメリカのロックバンドがかなり好きだ。

L.Aメタルブーム末期の1989年にデビュー。

1stアルバムでモトリー・クルーのインディーズ時代の曲「Toast Of The Town」をカバーしているマニアックさからもわかる通り、音楽性もルックスも初期のモトリーにゴリゴリに影響を受けている。

他にカバーしているのがキッスやアリス・クーパーと良い意味でストレートで陽気なバンドだ。

L.A最後の期待の新人の触れ込みとしてデビューしたが、派手なヘアメタルブームは終わりを迎えており、90年代に入ると大御所バンドも苦戦した通り、時代はニルヴァーナなどのグランジへ移行。

一瞬にして時代遅れになった彼らは即レコード契約を切られる。

90年代後半から再結成するが、特に話題になることもなく、純粋な新作はわずか。

数年に1枚ペースで過去曲の再録を収録したコンピレーション盤や、デモ音源集を細々とリリースしており、メンバーもボーカルのスティーブ・サマーズ以外は定着しておらず、今日にいたるまで地道なライブ活動を続けている。

アメリカン・ドリームを掴んだとは言い難いが35年以上経過した今でも活動中。
会場は数百人規模のライブハウスといえど、アメリカのみならず毎年国外でもプレイしているあたり幸せな生活だと思う。

語弊はあるが、「80年代のハリウッド」という点でも「ロック界のジャン=クロード・ヴァン・ダム」的な存在だ。
※もちろんヴァン・ダムの方が圧倒的に知名度も経済的にも成功している。

今から約20年前、大学生の時に雑誌Burrn!で知ったのだが
「B級」「チープ」「時代の流れで運よくデビューできたバンド」「アマチュアレベルの演奏力」「ライブで泥酔してた、ちゃんとしろ」

と愛のある(?)罵詈雑言を書かれまくっており、掲載されたボーカルのスティーブ・サマーズの派手なルックスに興味を持った。

2005年当時で既にカルト的な扱いのバンドだったので、サブスクのサービスはないし、Youtubeも今ほど動画は投稿されていない。

現在と比べてCDショップこそたくさんあったが、タワーレコ―ドなど大手にはCDが置いていない。
(タワレコだが店舗数も多ければ、1店舗の面積も広かった。あの時代が懐かしい。)

動画はもちろん音源を聞くことすら困難な状況だったが、今も神戸にある中古CDショップの「りずむぼっくす」にて奇跡的に見つけて購入。

「Porn Stars」という知能の低さが一発でわかるこのアルバムは再結成後の1999年に1stの一部の曲と再録と新曲、カバーを含めたコンピレーション盤だった。

アルバムタイトル、メンバーのルックス、何もかもが安っぽいひどい。

「買ってみたけどすごくひどかったらどうしよう」と不安になりながらCDをセットした。

・・・・めちゃくちゃカッコいい。

シンプルでストレートなロック。

スティーブのヴィンス・ニールのような甲高い歌声。

俺が憧れるLAのハードロックそのものだった。

歌詞も

「サタデーナイト!!パーティーしようぜ!!」
「週末が楽しみで5日間を生きている。48時間ロックしよう」
「俺達はロックンロールアウトロー」

など英語力が低い自分でも理解できるくらい薄っぺら・・・じゃなくてシンプルだった。

衝撃的過ぎて翌日から当時所属していた大学の軽音楽部で「マジでヤバイバンド見つけた!!」と布教活動を始めていた。

布教活動の結果、同じくハマった友達とプリティー・ボーイ・フロイドのコピーバンドを結成。俺がボーカル、友達がギター、他は強引にメンバーにした。

Amazonで輸入版の彼らのアルバムを取り寄せたり(人生初のネットショッピングだった)

友達はというと、当時絶版だった、1stアルバムを4,000円というプレ値で買っていた。
(2000年代当時のCDは1,000円~2,500円だったのでお金のない学生からしたら結構な出費だった。)

今回記事を書くにあたり調べたところ1990年の初来日以外にも2001年、2002年、2005年に来ていたみたいだが、当時はまだ学生。

2009年の来日は知っていたが、東京公演のみのライブは社会人になりたての自分には経済的に厳しく、どこかで入手したチラシは今でも持っている。

いろんなバンドのライブに参戦している自分だが、「プリティーボーイフロイドは生きてる間に見れないだろうな」と音源を聴いたり海外のライブをYouTubeで観る日々を約20年続けていたわけだが、なんと2025年3月に待望の来日公演が発表された。

一緒にライブを見に行くことが多い友達二人とは仕事や育児が理由でここ1年近くは一緒にライブに行くことがなかったが、今回の来日が発表された瞬間、グループラインで全員「絶対行こう」と即レス。

チケットは即決でメンバーに会えるvipチケットを購入することになった。

チケット発売日当日は受付開始と同時に購入して整理番号は9.10.11番だった。

友達の一人に至ってはライブのために予定されていた海外出張を1日ずらすという荒業をやってのけていた。

3月29日、新大阪から渋谷へ。

友達二人は新幹線の社内販売のウィスキーを売り切れにするくらい景気よく飲んでいたが、晴れていた大阪と違い渋谷は雨。

びちょびちょになりながら
「モトリーやガンズならまだしも、冷静に考えてなぜ俺達はマイナーなプリティーボーイフロイドのために渋谷にまで来ているのだろうか。」
「こないだYouTubeのライブ映像に外国人が「Horrible」ってコメントしてた」
「ピースメーカーのドラマで「彼らは女みたいなカッコしてたけど本物の男達だった」って言われてた。」
と言いながらネタにしながら会場に向かう。

vipチケットの特典でリハーサルを聴く。
「泥酔した普通のおっさん達が出てくるかも」と笑い合ってたら、めちゃくちゃカッコいい連中が出てきた!

唯一のオリジナルメンバーでボーカルのスティーブ・サマーズは昔から変わらないグラム野郎。

現在脇を固めるメンバーは
ディジー・レスター(Gt)
クリスDK(ドラム)
ロニー・ポール(ベース)
ロニーはガンズのスティーブン・アドラーのバンドにもいたことがある。

アマチュアのようなヨレヨレのライブアルバムと違い演奏はタイトでスティーブは声が出まくり。

全然B級じゃない、想像の何十倍もカッコいい。

そして写真撮影とサイン会。

緊張しながら「昔プリティーボーイフロイドのコピーバンドをしてました。アルバム「Porn Stars」バイブルです」と伝えるとスティーブが「Bible!?」と照れくさそうに笑ってくれて、めちゃくちゃ嬉しそうにしてくれた。

たくさん写真撮ってもらって、聴きすぎてボロボロになったアルバムにサインしてもらう。

メンバー全員と。

スティーブと。夢が叶った。全員めっちゃ笑顔で写ってた。

ライブ本編を観る前なのに、リハーサルの2曲と写真撮影、サイン会で舞い上がりきった我々は「ええ人らやった。来てよかった。満足した。」とのぼせあがっていた。

「さすがにプリティーボーイフロイドのTシャツはいらん」と言っていた友達の一人が「おい!!あいつらにお返しできることはグッズ買う事やぞ!!」と叫び、全員が物販でTシャツやらポスターやら散財していた。

ロックTシャツブームだが、この2枚は未来永劫値上がりしないと思う。

一旦会場の外に出てご飯を食べた後ライブへ。
整理番号9.10.11番だったので最前列へ行けた。
普段ライブハウスで見る時は後ろでゆっくり観る俺だが、今回は気合いが違う。

最前列の柵にしがみついて観賞した。

ライブは1stからの「You mama won’t know」でスタート。どの曲も20年聴き続けてるから口ずさめる。

やっぱプリティーボーイフロイドの曲は良い。間近で観るメンバーはスティーブはもちろん、他の楽器隊もカッコいい。

「RockN’Rolll Outlaws」は学生時代バンドでコピーしたし、俺達のバンド名だった。

「48hours」は好き過ぎてオリジナル曲を作った時に歌詞をパクった。

「なんのコピーバンド?プリティーボーイフロイド?なんやそれ?」と言われたら「アメリカの最高にカッコいいバンドや!!もっと音楽を聴け!!」と意味のわからん逆ギレをしていた。

この20年の思い出が駆け巡る・・・。

最前列なので友達にはバレていなかったと思うが、汗と涙でぐちゃぐちゃだった。

彼らの中でも一番好きな曲は「Porn Stars」収録の「Saturday Night」だ。この曲で彼らが俺の中で特別な存在になった。

プリティーボーイフロイドの中でというより、音楽全体の中でもベストに入るほど好きで、20年間毎週土曜日になると聴いている(マジ)。

彼らの中では少しマイナーな曲なので演奏すると思ってなかったので、スティーブが曲紹介した瞬間大声をあげた。友達も俺がどれだけこの曲を好きか知っているので「おまえマジでよかったな!!」と肩を叩いてくる。

これまでの人生で何回「Pretty Boy Flyod、saturdaynight」とYouTubeで検索しただろうか、好き過ぎてデモバージョンまで探した。

そしてさらに、すごいことが起きた。

スティーブがサビの時にステージを降りて俺の前まで来てくれて歌ってくれた。

夢中で「Saturday Night、Its your right To Party!Party!」と歌い叫んでいたらハイタッチしてくれた。

こんなん…20年前の俺に言っても絶対に信じない。

こんなに幸せな事が俺の人生で起こるなんて。

プリティーボーイフロイドに会えた土曜日の夜、歌いながら号泣した。

「Set The Night on Fire」では歌詞の通りに俺を高いところに突き上げてくれた。

スティーブのメイクがカッコよかったけど、今思えば顔を小さく見せるためにしていたのではないかと思う。

アンコールではモトリーのカバー3連発。
モトリーってヴィンスのボーカルのキーがめちゃくちゃ高くてカバーするのが難しいんだけど、さすがのスティーブ。完全に歌回こなしてた。

ただ・・・・

「Shy Diane」とか「Restless」とか良いオリジナル曲がたくさんあるのに、何故最後を他人の曲で締めるのか…

まぁその辺の甘さもプリティーボーイフロイドの魅力だけど(笑)。

終演後友達も
「実は感動して泣いてた」
「最高の1日やった」
「海外出張ずらしてまで来てよかった」
と言ってた。

心の底から生きててよかったと思えるライブだった。一生大切にする思い出が出来た。

ありがとう、プリティーボーイフロイド!!

当日のセットリスト

サインしてもらったポスター、CD、拾ったピック、VIPパス・・・家宝がいっぱいできた。

サビでスティーブが俺の近くに来てくれた瞬間もばっちり写ってた。

大学生の頃に作った曲。白状しますが、曲調といい歌詞の一部といい、元ネタはPretty Boy Floydです。