ミシェル・ロドリゲスの男塾。ちんちんがなくても男は男なのか?「レディ・ガイ」

「信じられるものは45口径だけ」
失われたちんちんを取り戻す男の物語
ウォルターヒル×ミシェル・ロドリゲスのジェンダーフリーバイオレンス

あけましておめでとうございます。

先日「君の名は。」が地上波で放送していたので、正月休みの終わりという現実に絶望しながらソファーに寝そべって観ていた。

「異なる時代から君を探し続けている」という古典的名作である「ターミネーター」をベースに二人が入れ替わるという「フェイス/オフ」のオマージュや「アルマゲドン」ばりに人力で大災害をなんとか収拾するというハリウッドからの影響を強く感じる名作だ。

今、たった4行で熱心な新海誠ファンを敵に回したわけだが、さらに突っ込んでいくと高校生が一品2000円近くするカフェに通うなよ、高校生ならマクドナルドで時間を潰すか、腹が減っているなら牛丼食えよと思う。(高校の時に野球部の友達が「牛丼は特盛頼むより並盛2つ頼んだ方が量が多いし安い」と教えてくれた。帰宅部の俺には全くもって不要な情報だった。)

それ以上に不可解だったのが、二人の体が入れ替わった時の反応だ。目覚めると女になっていたらあんな呑気に乳を揉んでいられるのか?

そんな疑問を「ラストマン・スタンディング」「バレット」でおなじみ、ハリウッドの道徳の先生ウォルター・ヒル「レディ・ガイ」でバイオレンスたっぷりにアンサーしてくれたのだから正月ボケも吹き飛んだ。



ブルース・ウィリス、スタローンに続きヒル先生がタッグパートナーに選んだのはミシェル・ロドリゲス。

世界で最も一人称が「アタイ」が似合う頼れる姐貴だ。

「バイオハザード」など性別を超越したワイルドな魅力を放つ姐貴だが、「ワイルドスピード アイスブレイク」ではシリーズが進むに連れて筋力が増す男性陣の中でヒロインらしく画面の中の清涼剤となっており女優としての底力を見せつけてくれた。

「やっぱ姐貴も女なんだな。なんだかんだでキレイだな」と思ったわけだが、本作では手術で女に改造された男として、男よりも男らしい姐貴がついにガチで男になるわけだ。

「おつりが出るくらいに復讐」「よく殴り、よく撃つ」と今までウォルター・ヒル先生の授業から人生のイロハを学んだきた俺だ。

1月7日時点で各県1館ずつというあまりに上映館が少ないという現実に切なくなったが、早速新たな男の必修科目を履修してきた。(こんな時なんだかんだ俺って映画好きなのかなと思う)

あらすじ

フランク・キッチンはチャイナタウンの安宿をアジトとした凄腕と評判の殺し屋。小汚い大金を手にしては行きずりの女と楽しむなど、充実した裏社会人ライフを送っていた。

ある日、宿で仕事の準備をしていると依頼主のマフィアのジョンがやってくる。

「お前は敵を作り過ぎた」・・・そっちから依頼しておいて今更何を言っているんだ?と疑問に思うフランクに「なんつーか、おまえを拉致ればいっぱい金貰えるから。」と正直にジョンがカミングアウト。ジョンの隣のパワーデブに気絶させられるのだった。

目覚めると、全身を包帯で巻かれていたフランク。
強烈に気分が悪い。なんともいえない違和感がある。包帯を取ると鏡に映っているのは女だ。誰かと入れ替わって・・・いない・・・性転換している!!

乳がある!!でもちんちんがない!!

絶望の中、部屋にあったテープレコーダーからは女医(シガニー・ウィーバー)の声。とりあえずフランクに恨みがあるらしい。殺すのは簡単だからもっと苦しめようと考えた結果、性転換してやったとの事。

見ていたはずの夢が思い出せないんじゃなくて現実じゃねーか!!

ひとしきり落ち込んだ後、「信じれるものは45口径だけ」というキレッキレの名言を自分宛のビデオレターでキメるフランク。

何かを誰かを探しているんじゃない、俺を女に変えた奴を探して殺す!!とフランクの失われたちんちんを取り戻す復讐が始まる!!

まず、男の時のフランクもミシェル・ロドリゲスが演じている。


特殊メイクでイケメンの殺し屋になっているわけだが、顔だけじゃない。

ちんちんがある。

「世界よ、これがハリウッドの技術だ」と言わんばかりのリアルかつアルティメットなちんちんだ。

R-15になった理由は間違いなくこれだろう!!

そんな最先端の技術を総動員したちんちんがノーモザイクで映される。

作り物とはいえ、ちんちん付属のミシェル・ロドリゲスを観ると何故か得した気になった。

女になってからも胸も何もかも大放出の姐貴。

自分の胸を触ったり股間を触って泣き叫び部屋を破壊する。

これだ、「君の名は。」での違和感は。目覚めたら性別が変わっていると呑気に乳を揉んでないだろう!!

乳があることよりもちんちんがないことの絶望感が勝つ。

姐貴本人は女性であるが、我々男性以上にちんちんを深く理解しているのがよくわかる迫真の演技だった。

前半でちんちん付きのミシェル・ロドリゲス、股間に指を突っ込んで泣き叫ぶミシェル・ロドリゲスと一生忘れる事の出来ない強烈な画を見せられるわけだが、後半はウォルターヒル先生の漢気バイオレンスがたっぷり。
①M1911A1の2丁拳銃

②派手ではないが必要以上に弾をぶち込むガンアクション

③主人公によるナレーション

おまけに「バレット」のスタローンばりに姐貴が仮面で雑な変装をするという細かいおまけ付きだ。(速攻でバレて拉致られる)

最近はガンカタ的な格闘技と銃撃がブレンドされた映画が多いが、煙の臭いがしそうな一発一発に重みのある、ガンアクションというのは銃好きにはたまらないご褒美だ。これほどM1911をぶっ放すのは「ラストマン・スタンディング」以来だろう。

「元祖姐貴」であるシガニーウィーバーとの対決も見どころだ。

設定が設定だけに「変な映画」の一言で片づけられかねない本作だが、さすがハリウッドの道徳の先生、「アイデンティティ」という深いテーマが根底にあったりする。

特技や趣味・・・「自分とは何か」を定義づけている要素は誰にでもあるだろう。その最たるものの一つが「性」だと思う。非常に重要なところだけに今回観て知ったが性転換にはかなりの準備期間と手順が必要らしい。

単なるちんちんがあるなしではない。ちんちんがなくて男は男であることを証明出来るのか。自分自身を肯定できるのか・・・

殺し屋として暴力の世界だけで生きてきた男が自分自身を破壊された絶望。

目が覚めた時、医学的に元に戻る事はできないと言われた時に流す涙の重み、俺が姉貴の裸を見ても股間が1mmも反応しなかったのは逞し過ぎる背中が原因なのではなく絶望にあふれていたからだ。

死んだ方がマシかもしれない苦痛を味わった後、「胸が邪魔だし立ちションできなくなったけど!!」と女である事を受け入れ、犬を飼い(これ良かった!!しかも割と犬が重要だったりする。わかってるなぁ!!)、再び銃を手にする。

結果、新たな生き方を模索するどころか反省ゼロなのだが、女として生きることを受け入れ暗殺に励むフランクと異なり、劇中でアイデンティティを失って自分の殻に閉じこもる全く別の道を歩むキャラも登場する。

「バレット」でもスタローンが「人生、生きているうちが華だ」というセリフを言うが、「レディ・ガイ」はウォルター・ヒル先生からの「全てを失った時に人生が始まる」というメッセージなんじゃないかと思う。

老若男女関係なくアイデンティティを失いかねない出来事はあるだろう。

・ケガをしてスポーツを辞めざるおえなくなった。
・「絶対にプロになる」と何年も生活の全てだった音楽活動をやめた。
・何年も付き合っていた相手と別れた。
・推していたアイドルが結婚、妊娠した。
・ルーク・スカイウォーカーが死んだ。

自分がわからない、これからどう生きていけばいいのかわからないあなたにこそ「レディ・ガイ」を観て欲しい。

人によっては「ミシェル・ロドリゲスのちんちんが見れる」だけの映画かもしれないが、俺にとってはこれからも大切にしたい映画だった。

今日は朝日が昇るまで自分のちんちんをじっくり見ながら「自分とは何か」見つめ直すとしよう。