拳と勢いでハイテク刑務所を突破せよ!押してダメなら更に押せ‼『大脱出2』

2019年は近年稀に見るスタローンバブルである。

『クリード~炎の友情~』を皮切りに、スタローン出演作品が何と上半期だけで3本が日本で公開、「え⁉年三回も見れんの⁉スタローン作品を!」と一部ファンを喜ばせた。

しかし一発目の『クリード~炎の友情~』は、あくまで病み上がりのセコンドというロッキーの設定もあり、当然ながら『ロッキー5~最後のドラマ~』ばりに自ら拳を振るうわけではなかった。

そこを差っ引いても大変満足な映画だったが、やはり元気ハツラツなスタローンを見たいのが親心ならぬスタローン心。

だが、安心してほしい。

そんな我々ワガママなファンの要望に答えてくれるスタローン映画二発目の『大脱出2』が3/29(金)、遂に日本公開された。

 

『わざとムショにブチこまれ脱獄し、システムの不備を指摘する』人呼んで脱獄コンサルタントの肩書を持つスタローンの危機を描いた第一作『大脱出』の続編である。

第一作では罠に落ち、どう考えても脱出不可能な刑務所にブチこまれたスタローン。

そこに偶然シュワルツェネッガーがいたので、ヤンキー漫画さながらに拳を使った語り合いを経て急遽タッグを電撃結成!

なんやかんやありつつ刑務所内で囚人達を巻き込んだ蘇民祭を決行し脱獄、ついでに嫌味な所長も爆殺するという、実に景気の良い作品であった

「色々頭を使ったがダメだった。もう最終的にゴリ押しだ!」というインテリ設定をド忘れして突っ走るスタローンの姿に元気を貰った人も多かったんじゃなかろうか。

 

 

そして今回の『大脱出2』である。

あれから6年。

色々懲りたのかスタローンは脱獄コンサルタントを引退し、警備会社を設立、後継者育成に力を入れていた。

 

その中でもイケイケなのが後継者候補№1のシュー。

詠春拳の使い手にしてスタローン相手に囲碁も打てる、まさに知と暴を兼ね備えた男である。

しかし、ある日飲みすぎた従兄弟を街に迎えに行くと、謎のマスクマン達に訳も分からず捕らえられてしまう。

果たして眼が覚めると、そこは凶悪なペッパー君が管理するハイテクなムショであった。

暇つぶしは囚人同士のストリートファイトオニギリを食べようとすると電撃を食らう、まさに前作以上に倫理的にはアウトだが映画としてはOKな刑務所だ。

なぜ俺は懲役を食らったのか…

持ち前の詠春拳でストリートファイトを勝ち抜き、スタローンアドバイスを頭に浮かべつつ獄中生活を送るシューだったが、どうにも身に覚えがない。

 

一方、スタローンの耳にもシューが行方不明になり、ムショに送られた情報が入る。

そのムショの名は『ハデス』

前作の墓以上に業界でも悪名高いハイテク刑務所であった。

普通であれば見なかったフリをしたくなるもんだが、男の教科書であるスタローンはシューを見捨てない。

会社の同僚、かつての相棒バウティスタなどのコネを総動員してハデスを調べ上げるスタローンだったが「よく分かんねえな!こりゃ!」と思ってる内に謎の組織に自らも捕らえられ、ハデスへ投獄されてしまうのだった。

果たして謎の組織の狙いは何なのか。

だがまあ、狙いは自ずと脱獄すれば分かるだろう!

『虎穴に入らざれば虎子を得ず精神でポジティブに切り替えるスタローン。

果たしてシュワ不在の中、難攻不落の刑務所を脱獄できるのか?

こうして掟破りの大脱出が再び幕を開けるのであった。

 

本作のキャッチコピーは『地獄からの挑戦状。』

奇しくも感想が軒並み酷評だらけの地獄になってしまった意味でも、ある意味間違ったキャッチコピーではない。

更に日本公開前にスタローン自身が「出来が酷い」とボヤいて不安を大きくした背景がある。

事実、おっさんと老夫婦に挟まれて鑑賞したのだが、隣のおっさんは5回位「う~ん」と唸り、更に隣にいた老夫婦はエンドロールが出た瞬間に間髪入れずに席を大脱出していた。

今になって振り返ってみると、前作はスタローンとシュワルツェネッガーの共演が最大の目玉であった。

新進気鋭のガタイ枠としてバウティスタを助っ人として招集したとはいえ、まさか続編が作られるとは夢にも思わなかったが、いざ蓋を開けたらスタローンもバウティスタも沈黙のテロリストのセガール位の出演だったのも酷評に繋がっているのかもしれない。

 

だが、そうした欠点を補うかの如く、本作は前作以上に修羅場拳と勢いで突破する。

おかげさまでスタローンも情報収集の為に酒場に来た刺客を躊躇なく銃撃する、オーバーザコンサルタントぶりを披露!

 

 

特に刑務所のシステムをダウンさせ、どうするのかと思いきや刑務所の入口を皆で押す流れは本作の見所の一つだ。

まさに『押してダメなら更に押せ!』精神。

周りの観客は唖然としていたが俺一人だけ爆笑したのだった。

 

結果、黒幕を煽りまくり、拳で決着をつける流れ(!?)になるのだが、下手したらクリード以上にスタローンがロッキーな瞬間である。

サウナ着みたいな囚人服を着用したスタローンが重い拳を放ち、超必殺技・監獄スタローンクラッチを極める姿は俺の観たかった元気ハツラツなスタローンそのものであった。

人によってはさっきまでのハイテク刑務所の設定は一体何だったんだろう」「ていうかハイテクの設定ド忘れしてんじゃねえか」と思わず遠い目になってしまうかもしれんが、たとえハイテクであろうが使うのは人間。殴れば壊れる。』というメッセージ性を強く感じる。

やはりスタローンのコンサルは伊達じゃねえな!と思う事だろう…

ていうか、思え!

 

カンフー、脱獄、元気なスタローン、ロボット闇鍋みたいな本作。

ともすれば不条理な映画と捉えるかもしれない。

だが、そもそも前作の大脱出も勢いとシュワで突破していたのを考えると続編としては正しい姿である。

 

かつて、「人生は、どんなパンチよりオマエを打ちのめす」と言ったが、まさに映画自体がスタローンからのパンチとも言える大脱出2。

そりゃあ正直、気の利いた映画ではないですよ!

「面白い」とか「つまんない」とかいう二元論を超えた映画—それが大脱出2だ。

確かに観客に親切な映画を観るのもソレはソレで良いが、映画に打ちのめされる経験も時には大事なんじゃなかろうか。

何の役立つんだよ、と言われれば俺も黙るしかないが。

だが絶賛にせよ酷評にせよ、記憶に強烈に残る映画なのは間違いない。

忘れたくても忘れられない映画とでも言おうか。

ともあれ社会という牢獄に囚人気分でいる人にはオススメな映画ですよ。

現時点では俺にとって今年のベスト1です。

シルヴェスター・スタローン