クソなみたいな人生を過ごしているあなたに「ソウルフル・ワールド」

「マンダロリアン シーズン2」と「ワンダヴィジョン」のために1年ぶりにディズニープラスに加入した。

ディズニーのやり方には正直懐疑的ではあるが「口ではそう言っても体が正直」とはうまくいったものでマーベル、スターウォーズだけでなくコンテンツがとにかく強力。

気づけばピクサー系の短編を見たり、昔見た作品を見返したりとディズニープラスに首までどっぷりつかっている。

再生ランキングで上位の「ソウルフル・ワールド」を見てみた。

昨年公開予定だったがコロナの影響で国内では配信となったらしく、「人生」について考えさせられる名作らしい。

この手の映画は「ちょっとリラックスして楽しく生きましょう」の押し売りなところがあり、
「ロッキー」を子供の頃から見てきて「つらくても頑張るしかない」をスタローンから教わっている俺としてはどうかと思う事もある。

例えば同じディズニーの「プーと大人になった僕」は全く肌に合わなかった。

社畜になって苦労している主人公に人生一度も頑張ったことがなくフラフラ生きてきたくまのプー(もう「さん」付けもしたくない)が「仕事って風船より大切?」と寝言を言うばかりか勝手に家に転がり込んで散らかす、主人公の金で森まで送ってもらう、仕事の邪魔をするというなかなかイラつく内容だった

いつだって全力のスタローンが「たまにはゆっくり休め」と言われたら響くが、適当に生きてきたプーが「僕は何もしないを毎日やってるよ」とほざくのを見て、

「人生舐めんな。綿を引き抜くぞ!!」ととにかくイライラした。

おい、プー!!世の中なめんな!!「プーと大人になった僕」

「ソウルフルワールド」は声がなんとジェイミー・フォックス!!

本業の傍らミュージシャンとしても活動しているし、過去にレイチャールズを演じてアカデミー主演男優賞を受賞した信頼できる男だ!!

「アメイジングスパイダーマン2」でも会社の窓際族がエレクトロになるという、いろんな意味で俺をシビレさせてくれたので、きっとソウルに満ち溢れた映画だと思い観ることにした。

あらすじ

主人公ジョーはジャズピアニストに憧れているが、芽が出ず中学で音楽の非常勤講師をしている中年男!!

個人的に「音楽で芽が出ない中年」という設定が染みた。(みんな、You Tube聴いてくれ!!俺は武道館でライブしたいんや!!)

母親からは定職につけと口うるさく言われ、授業では生徒の大半がやる気がない。

そんなジョーがニューヨークで一番有名なクラブでライブできるチャンスを手に入れる。

「ついに夢が叶う!!やった!!」とはしゃぎすぎたジョーはライブ当日うっかりマンホールに落下。

まさか!!死んだ!?クソが!!

厳密にはジョーはギリギリ死んでおらず、肉体と精神が分離されて死後の世界ではなく生まれる前の世界に迷い込んだ。

このソウルフル・ワールドで性格が設定され、「人生で何にときめくか」が決まり次第地上に出荷されるらしい

一刻も早く地上に戻りたいが、このスピリチュアルじみたイカれた世界から出られない!!
そんな時「22番」と呼ばれるソウルと出会うジョー。

22番は何百年も地上に降りることを拒み続け、攻撃的でネガティブ、嫌味ったらしい。

要はクソをかき集めたような奴だ!!

どれくらいカスかというとソウル指導員のガンジー、リンカーン、マザーテレサも「勝手にしろ!!」と諦めたレベル。

偶然22番の教育係になったジョーだが、筋金入りのヤバい22番は、音楽、スポーツ、食事など心が躍るであろうものを見せても嫌味な感想しかしない。

「絶対に生まれてこないで欲しい。周りのために一刻も早く死んでほしい」
と俺は映画のキャラクターとはいえ22番に激しい殺意を覚えたが、意地でも戻りたいジョーは22番にイラつきながらも諦めない。

ソウルフル・ワールド内でジョーの半生を振り返ることが出来る部屋に行く。

自分の人生を客観的に見せられて何も成し遂げていない現実を突き付けられてむなしくなってくるジョー。

ジョーの半生を見て22番から

「おまえの人生マジでクソだな!!なのに何故そこまで生きたいか逆に興味出たわ!!地上への通行証やるから生き返るの手伝ったるわ!!」

と協力をもらえる事に。

やった!!22番の事はとりあえず地上に戻ってから殺そう!!

一番地上に近い「ゾーン、もしくはメンタルがやられた人の世界」経由で地上に戻ることに成功するが、地上に降りるつもりのなかった22番を巻き込んでしまい、ジョーの体には22番が、ジョーは猫の体に入ってしまう。

地上では昏睡状態から目覚めたジョーに病院は盛り上がるが中身が22番なので意味不明な事を言い出す。

現世的には「生き返った!!でも壊れた!!」とちょっとした騒ぎに。

22番は不本意にも地上に降りてしまったので「地上最悪!!一刻も早く死にたい!!」と言い出すが本当に殺せばジョーも死ぬ。

ひとまず「これでも食ってろ」とピザを食わせた瞬間「クッソうまい!!!!!!!!!!!!!!!」と突然ポジティブになる。

床屋での会話、うまい飯、ジョーの教え子との邂逅、ジョーの母親との腹を割った会話で
心境に変化が起こる22番。

「空が青い、歩くのが気持ちいい。生きているって何もかもがいい」と言い出し最終的に
「しばらく生きる意味を探ろうと思う」とジョーの肉体を借りパク宣言!!

どんどん調子に乗り始める22番に「今日ライブだから!!おまえはさっさとくたばれ!!」
と揉めていたところ、天界からの刺客にソウルフルワールドに連れ戻される二人。

そう!!本日死ぬ予定だったジョーがいないという事で天界では騒ぎになり
「見つけて殺さなくちゃ!!」とエクスペンダブルズのようなノリになっていたのだ。

いつの間にか現世への通行許可が出ていた22番。

本来であれば22番は生まれ、ジョーは死ぬ予定だが過労で頭に血がのぼったジョーが

「俺は音楽がしたいのに。

おまえみたいな何も目的のないやつが生きれるなんて!!

ほんとクソだわ!!ドクズ野郎」

とボロカスに言ったところ凹んだ22番から通行許可証をもらうジョー。

地上に戻りライブに出れることになったジョー!!最高のライブをして観客も大喜び!!
母親の理解も得られた!!

ようやく夢が叶ったジョーだが、ライブ終了後、自分の気持ちが冷めてる事に驚く。

人生の目的を叶えたのに・・・どうして。また毎日が続くだけ。

帰宅した時に22番の「空が青い、歩くのが気持ちいい。生きているって何もかもがいい」という言葉を思い出す。

「夢を叶える」のが人生ではない。

家族と過ごした時間、青空、花火、ダイナーで一人で食ったケーキ。

「そんなものは人生じゃない。ただの生活」と切り捨てていた事全てが大切だったことに気づくジョー。

静かに涙を流し、ゾーンの世界に戻ったジョーは22番に謝る事にした。

しかし22番はジョーにボロカスに言われた事でメンタルが崩壊し怪物になっていた。

ジョーは22番のメンタルを救うことが出来るのか!!

監督のピート・ドクターが「インサイド・ヘッド」が世界で大ヒットした時に「これからどう生きようか」と燃え尽きたらしくその時の経験をヒントに作ったらしい。

クソの塊みたいな22番がピザを食べた瞬間ポジティブになるシーンがあるが、これがこの映画で一番深いシーンだと思う。

他人にしても自分にしてもクソみたいな気分を変えるのは大きな成功体験や金ではなく、うまい飯だとか何気ないことがきっかけなのは何となくわかる。

SNSによくいる何をしているか全く謎だがやたらフォロワーが多い奴が、人生や夢や自己肯定とか語られると「黙れ」としか言えないが、世界的に成功した監督が「燃え尽きた」とカミングアウトした上で

「夢を叶えたかどうかではなく、普通の日々のちょっとした瞬間に美しいことがたくさんある。それが人生を作っている」

と言われると説得力がある

そういやロッキーも試合の前からトレーニング中に「やったぞーやったぞー!!」とガッツポーズしていた。

何度見ても意味がわからなかったが、この映画を見てスタローンの気持ちをより理解できた気がする。

「ゾーンに入っている人もメンタルが壊れる人も1つの事に集中しているという点で似ている」
というセリフも心に刺さったのだが、嫌味な奴に対して
「他人をけなして安心を得てるだけ」

「心の痛みをごまかしてる」

という最高の回答例が提供されている点でもさすがディズニーだ!!

こちらもめんどくさい奴にクソリプで絡まれたら是非実践していきたい。

「なにか特別な人間になりたい」という思いで必死になっている人が多い世の中で、考え方を見直せる。

クソみたいな毎日の中に良いことはたくさんあるが見落としているのかもしれない。

「ソウルフル」な一本です。


曲がとても良い


俺の「ソウルフル・ワールド」


俺が知る限り一番人生が美しくなるもの