人間、男だろうが女だろうが生きていれば、常に漢気を発揮しておきたいもんだが、現実では中々難しいもの。
どうしても芋を引いてしまいがちである。
そんな訳で人は折を見て、ジョン・ウーの映画を観てしまうのだが、ここ最近は現代アクションの監督作がなかったのだった。
そんな彼氏が久しぶりに現代アクションを引っ提げて帰ってきた!
舞台は日本!
中国からはチャン・ハンユー、日本からは福山雅治の豪華なW主演!
道理や理屈を優先し、漢気、愛を忘れた現代に叩き付ける最新作!
それが映画「マンハント」だ!
↑無名時代、ゴミ捨て場に落ちていたカブキロックスの氏神一番を駅まで送った福山雅治。ジョンウー映画に出る資格は充分だ!
濡れ衣を着せられた無実の弁護士チャン・ハンユーと彼を追う刑事福山雅治が陰謀に立ち向かう本作。
大体、映画で製薬会社が出てきたらロクなことをしないもんですが、ただの冤罪殺人から芋づる式で製薬会社の陰謀が明らかになっていくのが主なあらすじである。
こう聞くと名探偵コナン君的な展開を期待してしまうが、本作は想像の斜め上を行く。
重視しているのは文脈や整合性などの理屈じゃない。
漢気だ。
思えばジョンウーといえば一貫して理屈より漢気を優先してきたので当然っちゃあ当然なのだが、今回は久しぶりなのも手伝ってか、観ているコチラの脳みそを揺らしにかかってくる。
まさに漢気の供給過多!
良く出来た映画が宝石だとしたら、本作はゴリゴリの漢気の岩だ。
男も女も敵も味方も漢気をむき出しに、みてるこっちの頭をガツンガツン容赦なく殴ってくる。
もし映画に整合性や文脈を求める人だったら、鼻血を出して憤死するんじゃねえかと思わせてくれる。
おかげさまで「え!?何で?」と二度見したくなる瞬間が連発するのだった。
↑あざとい位にハトも飛ぶぜ!
例えば…
のっけから港町に演歌という渋さ150%のオープニング。
めちゃくちゃ渋いけど弁護士設定が全く活かされないチャン・ハンユー
銃弾という名の酒をヤクザに出す殺し屋居酒屋。
いまいちノリが一世代ほど遅いダンスパーティ。
殺人の被害者が平野ノラ似。
何故か長いものを持つと戦闘力が2倍になる福山雅治。
プロファイリング中、被害者の気持ちがシンクロしすぎて泣き出す桜庭ななみ。
だだっ広い山の上に何故かあるハトカフェ。
若干吹き替えがズレてる中国俳優。
ガタイが一人だけ違うアンジェルス・ウー (ジョンウーの娘) が披露する横滑り二丁拳銃。
唐突に戦闘力を発揮するホームレスの和製ドラゴン倉田保昭
「え!濡れ衣着せたの理由それなの!」と思わず腰を抜かしそうになる衝撃のラスト。
↑美人だらけの女性キャストの中で異彩を放つ圧倒的なガタイのアンジェルス・ウー。
こうザッと箇条書きにしても、脳内の処理が追いつかない濃すぎるキャラや展開が約2時間巻き起こる。
まともな人には「バカな映画」、多少映画を知っている人には「どうせジョン・ウーなんてハト飛ばすだけでしょう」と片付けられそうだが、手錠で繋がれた福山とチャン・ハンユーのマガジン装填リレー、振り向きジャンプ銃撃など震える演出をブッこんでくるので油断がならない。
↑ハ・ジウォンの振り向きジャンプ銃撃!ちなみにアンジェルスウーの姉妹設定だ!無理があるだろ!
元ネタは「君よ憤怒の河を渡れ」という邦画なのだが、見事に中華鍋で炒めた100%ジョン・ウー味に仕上がっている。
俺もケーブルテレビかなんかで元ネタの「君よ、憤怒の河を渡れ」を見たことがあるが、高倉健が乗ったことないセスナで自衛隊の戦闘機とドッグファイト、新宿駅前を走る馬、唐突に遭遇する熊など忘れたくても忘れられない模写があった。
そういう意味ではマンハントも、リメイクとしてはオリジナルに忠実と言える。
しかし、こういうビリビリ来るアジア的な展開の映画は久しぶりだった。
冤罪、陰謀という不条理に、理屈を超えた仁義や男気で挑む展開とでも言おうか。
映画としてみたらどうなのよ?と言われるかもしれんがジョン・ウー映画としては正しい!
というかねえ、なんでもかんでも理屈や文脈を重視しなきゃ何も出来ねえなら、寝てろ!
ともあれ、流行りのIMAXとか4DXとは違った意味で、横っ面をブッ叩かれる映画ですよ。