あえて無理なジャンルに挑む。映画SMのススメ

心のストライクゾーンを広げて新たな性に目覚めよう。

ビーパワーハードボイルドを見ればご覧の通り俺の観る映画を選ぶ基準は

・漢気がある。
・爆発が多い
・人がアホみたいに死ぬ

であり、物心ついた時から全くブレていない。しかしこれには問題がある。

あまりにも同じジャンルを見続けると、感動が薄まる。それどころかどれがどの映画かわからなくなってしまう

実際、大学生の頃、セガール映画を連続で観た時に
「セガールが環境問題について突然語り始めたのは・・・」
「セガールがお茶で街を救ったのは?」

沈黙の何だったかわからなくなったことがある

これではせっかくの好きなジャンルを楽しめなくなる。何よりセガールに失礼だ!!

「問題なのは映画ではなくおまえの頭だ!!」と思うだろうか、まぁ待て!!

この苦い経験から俺にはある性癖が備わった。

「映画SM」だ。

引くんじゃない!!

決してムチで叩かれながら映画を観ることではない。

あえて自分にとって無理めな映画を観る・・・。

普段なら絶対に観たくない、むしろ嫌悪感すらある作品をきちんと観る。

自分にとってきつければきついほどハードさは増す。

薄っぺらい恋愛、余命いくばくもないヒロイン。ポジティブの押し売り・・・

決して目をそらしてはならない、停止ボタンを押してはならない。覚悟を持って映画に挑む。

地獄のような2時間を味わい、心は衰弱しきる。部屋にいても寒気がするだろう。ボロボロになった状態で大好きな映画のワンシーンを観る。
(俺の場合はエクスペンダブルズ2のスタローンVS、ヴァン・ダムやランボー最後の戦場のラスト、 BvSのバットマンとスーパーマンの殴り合いなど)

脱水気味で目覚めた真夏に朝に飲むアイスコーヒーのように体中に生気が宿る・・・。

この行為を「心のクレンジング」と自分で呼んでいるが、これにより自分の好きなジャンルの映画を心から楽しめることができるのだ。

毎回地獄というわけでもない、観た映画が予想外でおもしろかった場合好きな映画のストライクゾーンが広がっていく。

巷では「視野を広げる」とか「自分の幅を広げる」とか「人生が豊かに」とか意識高めに言う奴もいるが、大したことじゃない。ただ、楽しみが増えるのは間違いない。



今週の土曜日は早朝から久しぶりに映画SMを実践した。

選ばれたのは昨年アカデミー賞を席捲した「ラ・ラ・ランド」!!

スパルタ指導を美化して反吐が出た「セッション」の監督作という時点で以前から拒否反応を示していた。
(ちなみに「セッション」が寒気がするレベルで無理だったので、大学時代に全国最優秀サックスプレイヤーに選ばれてプロミュージシャンのツアーメンバーもしていた友達に感想を聞いたら 「テンポを守る以外全部共感できなかった。」と返ってきた。)

更に「俺はわかってる」系映画クラスタ・・・要約すると「クソみたいな映画オタク」が軒並み絶賛していたし、あの有名なポーズを真似る奴を見ては足払い(スト2の↓大キック)したくなっていたので「絶対に見ない、俺にとってのLAはこれだ」とイラつきながら「エンド・オブ・ウォッチ」を再生したものだ。

無理どころか「生きている間に観ない」と思っていたレベル・・・・今回は最高にハードなプレイになりそうだと覚悟を決めて再生したが・・・

ええ映画やん。

冒頭の渋滞の高速道路で全員が車を降りて「トップを目指す!!」大合唱、何かと突然歌いだす連中に 「ボーダーラインの国境前の銃撃戦より狂ってる、全員ヤク中だ」と笑っていたのだが、

どちらも「高速道路で信じられない事が起こる」という点では同じ!!

ジャズバーを開きたいライアン・ゴズリングと女優志望のエマ・ストーンの関係にすっかり見入ってしまった。

そしてラストシーン。
お互い夢を追うために別れることに決めた二人。

実際、二人とも成功し、5年後偶然にも再会する。

頭を駆け巡るあの頃の思い出と当時思い描いていた未来・・・・夢見た生活は掴んだが、別々の人生を歩んでいる。

決して会話する事なくその場を去る。
人生とは何かを少しづつ理解できるようになった今だからこそ染みる。

「目標に向かって生きろ」「切ないのも人生」というスタローン・インマイハートに溢れた作品だった。

気づけば今日の犬の散歩の時のBGMは「Another Day Of Sun」になっていた。

いろんな映画をたくさん観るのが映画好きのあるべき姿とは言わない。
(余談だが、「年間〇百本鑑賞」という奴は「暇してるニート」としか思えない。)

とはいえ、自身のストライクゾーンを広げられる可能性があるし、失敗しても
自分の好きな映画をより貪欲に楽しめるようになるので定期的に映画SMを実践する事をおすすめします。