MCUの学級委員長ことブラックパンサー。
思えば2年前、世界におけるヒーローの在り方についての考え方の違いから、いつのまにか、キャップの社会人になってからの友達よりも地元の友達を優先し過ぎる事に苛立つトニー陣営というサークル崩壊になっていた「シビル・ウォー」にて彼は我々の目の前に姿を現した。
何名かに至っては完全にその場のノリで戦闘に参加している中、「親父の仇」という一切ブレない軸、そしてサークル崩壊の真犯人に対してトドメを刺すどころか「生きて償え」と漢気に溢れた青空教室を開講する彼らに我々の心は鷲掴みされた。
そしてこの度いよいよ単独作「ブラックパンサー」が公開された。
監督は「クリード」という「ロッキー」シリーズの価値をうなぎ上りにして映画が終わってもしばらく立てない程泣かせてくれたライアン・クーグラーということで、初日に観たわけだが、これまた涙腺を崩壊させられた。
後述するがキルモンガーことマイケル・B・ジョーダンにまたしてもやられたのだった。
あれからというもののマイケル・B・ジョーダンのインスタを見るだけでじーんとする。
心が清すぎてインスタ映え。
先日友達の息子(6歳)と2回目の鑑賞に行った。当日卒園式だった彼。
しかも卒園と同時に引っ越しのため、幼稚園の友達とはもしかすると永遠のお別れかもしれない。
「おまえ、3年間幼稚園通ってたんやし,最後に友達と遊んでからバイバイしたかったんちゃうの?」という俺に「昨日の晩からブラックパンサーの事で頭がいっぱいで寝れなかった。卒園式ははよ終わって欲しかった」との事。
実際観終わってからずっと無言でニヤニヤ笑っていた。
というわけで6歳児にとって幼稚園の3年間よりも重要だったブラックパンサーについて公開からしばらく経ったのでネタバレありで紹介します。
アフリカ大陸に位置するワカンダ王国。表向きは農業中心の途上国だが、実態は世界一固い金属ヴィヴラニウムを資源に持ち、バリバリに発展している超国家である。
そんなワカンダの王子、ブラックパンサーことティ・チャラは里帰りの真っ最中。親父が死んだので王位を継承するためだ。
MCUの和田アキ子、オコエに送迎してもらい途中で元カノのナキアもピックアップ、
おかんと妹に軽く挨拶した後、汁を飲んだり、滝で殴り合ったり、これまた汁を飲んで砂に埋められるという手続きを踏んでいるうちに王になるのだった。
「シビルウォー」では全くブレない陛下なプラパンだったが、実は割とこじらせている事が本作で明らかになった。
まず、ワカンダは他国との関わりを最低限にしている。難民を受け入れたら自分達の生活もつらくなるかも、情報漏洩による悪用のおそれなどから国家レベルで身内ノリである。
ブラザー精神溢れる彼としては地元の飲み会に大学で出来た友達を誘おうとしたらめっちゃ断られたかの如く悩んでいるのだった。
悩みはこれだけじゃない。元カノとの微妙な関係も絶賛継続中である。
さらりとプロポーズもしてみるが、軽く返されヘコむ。この距離感、受け流され具合、絶妙に微妙なのがリアルだった。
というわけで恋に政治に大忙しな中、突如ワカンダにやってきたエリック・キルモンガー。
元海兵隊で現在は工作員。殺した人間の数だけ体にはスカリフィケーションをしているので全身がレゴブロックのようになっている。
ヘアスタイルの時点で悪そうなのは明白だが、なんとMIT卒。
ヤンキーなのに秀才、しかもかっこよくて彼女持ちという学生生活ならトップみたいな野郎だ。
不幸は続く。キルモンガーの生い立ちを調べていくうちにわかるワカンダ国の闇。尊敬していた親父の許しがたい過去にさらにぶれるブラックパンサー。
元カノ、国家の方針、一家の闇と心が不安定な中、抜き打ち王位争奪戦が始まるわけだが、相手は都合が悪くなった彼女を躊躇なく射殺できくらい修羅場なれしたキルモンガーである。
王位をカツアゲされたあげく滝に捨てられる。
追われる一家。王家から即日でホームレスになったわけだが、ワカンダ一のウザ絡みゴリラことエムバクが瀕死のブラックパンサーをキレイに冷凍保存してくれていた。
これまた謎汁を飲んで復活するブラックパンサー。
一家の過去の清算のため、自身のプライドのため、何よりいろいろあり過ぎて暴動になってしまったワガンダのためブレない王位争奪戦が始まった。
興行収入といい黒人がここまでフューチャーされたという点でも深い作品だろうが、個人的に消費税の動向くらいしか気にならないので政治的な事は書きません。
本題に入る前に・・・とにかくあの謎汁が気になって仕方ない。
元気になれる方の汁は、東南アジアのリゾートホテルっぽい場所で栽培されているハーブをすり潰したものはわかるが、あの元気がなくなる方の汁はなんなのか・・・あれについては今後のMCUで解き明かしてもらいたい。
俺から言えることは、以前からビーパワーハードボイルドにて提唱している「ブラザー精神」が画面中を駆け巡っていた事を声を大にして言いたい。
元カノや国の方針など割と悩みの多かったブラックパンサーだが、最終的に「よし!もっと優しくしよう」で大盤振る舞いする国家レベルのおすそわけ。
我々個人が世界を変えるなんて事は出来ない。
しかし自分の周りに親切にすることはできる。
電車でお年寄りに席を譲るとか、
例えば一緒にラーメン屋に行った時に友達が悩んでいたらそっとチャーシューをわけてあげるとか、
めっちゃ彼女自慢してくる奴の彼女がブサイクだったとしても、「理想の彼女やん!!」と褒めてあげるとか、
小さな事でいい。
日々に追われているとついつい心も消耗しきってしまうものだが、ブラザー精神は忘れずにいたいものである。
そしてブラパンの周りの愉快な仲間達
トニー・スタークばりの技術力の妹シュリ(百田夏菜子の吹き替えがよかった)と真っ白なドレッドがチャームポイントのおかんラモンダ
海外に行って人生観が変わりまくり過ぎてる元カノ キア
部下から「アッコにおまかせ」とか「ワカンダのご意見番」とあだ名をつけられてそうな、ソウルフルかつバイオレンスなオコエ
「オコエの彼氏」ウカビ
「オコエの彼氏のペット」サイ
フォレスト・ウィテカー
中でもブラザー精神が高かったのはエムバク。王位授与式の時に殴り込みするなど元気にウザ絡みしていたが、キルモンガーにやられたブラックパンサーをしっかりお持ち帰りし冷凍保存。翌朝の着替えも用意するあたりの男前な彼の活躍は是非ともインフィニティウォーでも見たい。
この面構えであの情の厚さと地元愛。絶対ET-KINGとか好きそう!!
そして最初にも触れたが
やっぱりキルモンガーが良かった。
クリードでアホほど泣かされた身としてはドレッドヘアのマイケル・B・ジョーダンに清純派アイドルに男が出来たような切なさを覚えたが、今回も最後の最後で泣かされた。
クライマックス、親父を殺され自分は見捨てられ、憎くて憎くて仕方なかったはずのワガンダ王国への彼の本音が詰まったセリフ
「親父が言ってた。ワカンダの夕日が世界で一番キレイだった。笑えるよな。俺は親父のおとぎ話をずっと信じてた。」
彼の生い立ちを考えると泣かずにいられない。クリードの「俺は過ちじゃない」に匹敵する涙腺爆破ワードだった。
この後、黙って夕日を見せにいくブラックパンサーの男気の二人の表情に2回見て2回とも撃沈したのだった。
純粋にカッコいいこと、非情なのに感情移入できるキャラクター…MCUの中で1番というか「ダークナイト」のジョーカー以来の名悪役だと思っている。
今年のハロウィンから街で青いロンTにボディアーマー、迷彩パンツを目にするだろう。
俺が黒人だったらより深く理解出来たのだろうが映画で世界は変えれる事を証明した本作、観た後にブラザー精神が溢れる事間違いなし。
ブラックパンサーが「エイジ・オブ・ウルトロン」にいれば、飲み会で悪口ばかりネチネチ言っていたウルトロンもこじらせずに爽やかなナイスガイに変わっていたかもしれない・・・。