「午前0時、キスしに来てよ」という映画が公開中だ。
国民的スーパースターと普通の女子高生の秘密の恋らしい。
夜中に「キスしに来てよ」なんて言われたら「コンビニ寄ってハーゲンダッツでも買ってからおまえが来い!!」と即答したくなるが、俺も同じような映画を20年近く観ている事に気づいた。
国民的スーパースターと普通の女子高生の話なら、今回紹介するのは世界的スーパースターと普通の男子高生の話という事。
KISSと言う点では同じだが午前0時にはロックしてパーティーしろ!!という二点が異なる。
というわけで「ボヘミアン・ラプソディ」がヒットする遥か昔に作られた世界一ホットのバンド、キッスの「デトロイト・ロック・シティ」を紹介します。
こちらはメンバーの自伝ではなく舞台は1978年、キッスに憧れる高校生4人組のホーク、トリップ、レックス、ジャムが主人公。
毎晩ガレージで下手な演奏を垂れ流し、ディスコに夢中の女子からはバカにされているとびっきりのポテトボーイズだ。
そんな彼らの夢はキッスのコンサートに行くこと。
(4人組の1人、ホーク役がなんと「ターミネーター2」のエドワード・ファーロング‼︎)
コンサート当日、キッスを悪魔の音楽だと信じてやまないジャムの母親(カーペンターズ好き)にチケットを燃やされる&ジャムは全寮制の学校に強制転校させられる。
そこは「4人で一つ」精神の友情パワーに溢れたホーク、トリップ、レックス。
宅配ピザ屋に扮装してピザにドラッグをたっぷり混入。校長をラリらせてジャムを救出する。
目指す先はライブ会場があるデトロイト!!キッスの「Shout It Out Loud」を大声で歌いボロい車でハイウェイを爆走する(若さと情熱とキッスへの愛が爆発したシーンが最高!!)
途中でディスコ好きをしばいたり、女の子を車に乗せるが特に何もなく終わったり、ドラッグでラリったりしながらデトロイトに到着。
ラジオ局のキャンペーンで入手できたはずのチケットが調子乗りのトリップのうっかりミスで入手できないことが発覚。
何とかしてキッスを観たい。ずっとこの日を待ち続けてきた。
4人は誓う。ライブがはじまる時間にもう一度集合しよう。絶対にキッスを観よう!!
ストリップコンテストに出場する者、
コンビニ強盗にチャレンジする者
童貞を失う者、
監禁された女の子を助ける者
それぞれにとっての忘れられない夜がはじまる。
決して涙するシーンはない。
身を隠すために逃げた女子トイレで学校でかわいいと評判の女の子がでかい音で屁をこくのを聞いて男4人で爆笑したり、カツアゲしたガキの兄貴がファイナルファイトに出てくるアンドレみたいだったなど知能の低さが光っている。
特にエドワード・ファーロングは滝のようなゲロを吐く、ダサいストリップダンスをする、パンツの中で連続して射精すると「ターミネーター2」の頃からは信じられない迫真の演技を見せてくれる。
終始目つきがうつろなのは役作りではなくガチだ‼︎
おなら、ゲロ、エロ、ドラッグとある意味で「スクール・オブ・ロック」よりロックしているが、キッスに限らず未だに好きなバンドのライブに行くときは頭の中でこの映画が流れる。
この映画にはライブに行くまでのわくわく感が詰まっている。
前日の夜から興奮し、バンドに関するうんちくを語り合う、チケットを握りしめてコンサート会場に入る瞬間、そしてライブ中に投げたドラムスティックをゲット・・・ファンの気持ちが完璧に映画になっている。
残念ながら興行収入は大失敗だったようだが、観る度に10代、20代のようなキラキラした情熱が蘇る。
キッスに限らず他のバンドでも良いし、アイドルグループでも声優でも良い。
Youtubeなどで気軽に音楽を楽しめる今こそ大好きなアーティストのライブに行ってみて欲しい。
良いライブじゃなくても、ボーカルが泥酔してたり、がたがたの演奏でも良い思い出になったりする。当日の会場の様子、タバコのにおい、買ったTシャツ、ライブ後に食った飯・・・。十数年たっても忘れられない思い出になる。
30超えた今もライブに行けば毎回10代のように興奮する。
今回記事を書くにあたり観返したわけだが、キッスのメンバー(オリジナルメンバーの4人)のインタビューがめちゃくちゃおもしろかった
ジーン・シモンズ(ベース、ボーカル)
映画のプロデュースも担当したジーン。
結成当時のローカルバンドだった頃やブレイクした70年代当時の事をたくさん話しているうちにどんどん熱くなり「この映画は神を求める巡礼者の物語」だと絶賛する。
ポール・スタンレー(リズムギター、ボーカル)
「俺達ではなくファンに感謝するための映画だ。」
「劇中ディスコとの対立が描かれているけど 今を楽しむという意味でダンスミュージックはキッスのロックと同じ」と優等生なスマート発言をする一方で「70年代当時にホテルに帰って電気をつけたら裸の女がいてびっくりした」とぶっちゃけてくれる。
ピーター・クリス(ドラム、ボーカル)
まず、出だしの時点で「土曜日なのにこれのせいで外出できない」と愚痴りながらいやいや話す始める。
「殴り合うシーンがあってよかった。バンドも口喧嘩より殴り合う方が良いと思う」
「当時はたくさんセックスしたしドラッグもOKだった。ドラッグはしてもいいけど依存はダメ。人生と向き合わないと」とわけのわからん名言を飛ばす一方で1978年当時のステージについては「昔のことだから忘れてた」の一言。
「俺の演技、この映画で一番良かっただろ?」と自画自賛して気分も乗ってきたと思いきや終わるなり「やっと外出できる!!」と喜ぶ。
エース・フレーリー(リードギター、ボーカル)
監督が「マジメな質問だけど・・・」というと「俺にマジメな話をしろと?」といきなりかます。
「俺に会いに来るファンが「あなたは神だ」と言って震えて握手にくる度に申し訳ない気持ちになる。俺はただのバカでたまに犬のうんこも踏むのに。」
「本名はポールだけど、女の子を紹介するのが得意だったからエースと呼ばれるようになった。」
「歌詞の深みについてファンが言ってくれるけど、基本的に15分で書いて曲ばかりで歌詞の意味はあまり考えてないから困る」と絶好調なコメントを飛ばしまくる。
音楽が好きでなくても是非とも観て欲しい。純粋な情熱を思い出すし、かならずキッスというバンドが好きになる作品です。
やっぱり鼻かじりキッスより「お前は引き金を引いちまった。俺のラブガンをな!!」とセクハラすれすれの歌を叫ぼう!!ロックンロール!!
入門ならこれ。
映画は「Love Gun」ツアーが舞台。今回記事を書くにあたり好きなアルバムについて考えたがマジで選べない。
■俺とキッス
ここまで書いて俺がどれだけKISSが好きかお分かり頂けたかと思う。少しばかり自分語りをさせて欲しい。
今から19年前の中学3年の時、キッスがヘビーメタル雑誌Burrn!の表紙を飾った2000年の夏だったと思う。そのルックスからゴリゴリのデスメタルを想像して聴いてみたところ、シンプルで一度聴いたら口ずさめる曲ばかりで驚いた。
それからしばらくして色んなバンドを聴くようになった頃、「自分の理想の音楽」について考えた事があった。
・シンプルなロックンロール
・歌詞は政治や世界平和ではなく、恋愛や下ネタなど明るいもの
・一緒に歌えるコーラス
・ビートルズのようにメンバー全員が目立っているバンド
と自分の好みがはっきりしてきた。じゃあ全てに合致するバンドはどれだろう?
突き詰めた結果キッスだった。(更に調べた結果、キッス自体バンドのコンセプトが「ハードなビートルズ」という事がわかった。あのド派手な格好もメンバー個人を目立たせるためだった。)
ルックスと演奏はもちろん、ライブでのコントみたいな演出(やたら火薬が爆発する、火を吹く、血を吐く。ギターから煙が出る。ドラムが何メートルも上昇する。)やメンバーのおもしろいインタビューや小学生レベルのケンカの内容を知ってどんどん好きになった。(ライブ前の恒例コール「you wanted the best.You got the best. The hottest band in the world KISS!!」について「結成時から言ってたけど今思えば最初からハードルを上げ過ぎた。」と言ってた)
「毎晩ロックンロールしたい、そして毎日パーティしよう」
「君がどんな人間でも関係ない、誰もがロックンロールしよう、大きな声で叫ぼう」
「彼女は言った「今夜は独身なの」俺はロックンロールを愛してる‼︎」
といった頭の悪くて明るい歌詞に元気を貰った。
それから運良くライブも2回観る事が出来た。特に最初に観た2004年5月31日の大阪城ホールのライブは人生で最も感動したライブだった。
2004年、大学の授業を抜け出して行った。
この年は今のメンバーになって最初の年でポール、ジーンに加えてドラムにエリック・シンガー、リードギターがトミー・セイヤーとなり「二人オリジナルメンバーじゃない」という否定な意見をはねのけ。バンドは絶好調だった。
(先ほどのメンバーのインタビューで何となく勘づいたと思うがエースとピーターは演奏面と人格面でかなり問題があった。
ポールの自伝を読んでいると「エースは酒とドラッグ中毒、ライブに遅れまくって出番10分前に来たりした。そのたびに飛行機とホテルの予約を取り直した。」
「ピーターの演奏はスティックを持ち始めた初心者レベルに退化していた。再結成するまで金がなくてスタバにも行った事がなかった」と書かれている。
最近でもポール、ジーン共に「二人とも親友なのは間違いないけど二度とバンド活動はしたくない」と語っている。)
ド派手な演出、ステップを踏みながら演奏し、ドラムもリズムを刻むだけでなく、スティックも回しまくりながら歌う姿にロックンロールのカッコよさと楽しさが爆発していた。
他の外タレと違って明らかに意図的にジェスチャー多めで簡単な英語を使ってMCをしてくれているところも感動した
2013年のライブ。会社を休んで行った。
大学生の時に学祭でキッスのコピーバンドを組んだ。
ライブ以外でもメイクしてキャンパスを歩き「ロックンロール!!」と叫んでいたが、今思えば完全に殴りたくなるナメた学生だった。
いつかキッスのメンバーに会いたい。そんな夢を持って10数年、ついに解散ツアーが発表された(解散ツアー自体2回目だし、バンド自体は終わらないと思うが最年長のジーンが70歳という年齢を考えるとワールドツアーは最後だろう。)
vipチケットならメンバーと記念撮影が出来る。夢を叶えるのは今しかない。
何の躊躇もなく15万円というアホみたいな金額のチケットを買った。
2019年12月17日は俺の人生の夢が叶う予定だ。キッスのメンバーに会える!!
今の俺は「午前0時、キスしに来てよ」の橋本環奈よりピュアな気持ちのおっさんだ!!