社会からのリンチに打ち勝つ友情と家族愛!!No More オッサン差別「リチャード・ジュエル」

オッサンというのは惨めな生きものだ。

昨今ジェンダーやらミソジニーやらと言った言葉を頻繁に目にするが、なんだかんだでひどい扱いをされているのはオッサンだと思う。

「おじさん好き」という人もいるだろうが、その言葉の先には我々量産型オッサンはいない。容姿であれば真田広之や竹ノ内豊であり、声であれば山寺宏一や大塚明夫の事のみを指す。

オッサンというだけで「臭い」「気持ち悪い」とネガティブ要素たっぷりなので何をトッピングしてもダメだ。

例えば「女子大生」に「アメコミ好き」をプラスしてみよう。

アメコミ好きの女子大生なら

「意外な趣味を持ってるんですね」

「一番好きな映画はどれ?」

「今度原作コミック貸すよ!!」

という流れになるが、アメコミ好きのオッサンとなると

「精神がガキ」

「家でフィギュア眺めてニヤニヤしてそう」

「おもちゃやDVDばかり買って貯金なさそう」
と思われかねない。

これに「実家暮らし」「独身」といった要素が追加されていったら「もう死んでしまえ!!」と言わんばかりに社会のクズと認定され罵詈雑言の嵐となる。

親の介護で実家暮らしかもしれんだろ!!という反論は闇に消えていく。

そんなオッサン差別について考えさせられる映画が今回紹介するクリント・イーストウッド監督最新作「リチャード・ジュエル」だ。

1996年のオリンピック開催中のアトランタ。

音楽イベントが開催されていた公園で警備員をしていたリチャード・ジュエルがバックパックの中の爆弾を発見。

100人以上が負傷、2人が死亡する大惨事だったが、的確に避難を呼びかけたリチャードのおかげで被害を抑える事が出来た。

一躍国のヒーローとなったリチャードだが、FBIは彼を容疑者として捜査を開始する。

容疑がかけられている理由が
「警察官をクビになっている過去があるので社会に恨みを抱いている」
「未婚。実家暮らし」
「承認欲求が強そう」
というクソみたいな推理なのだが、スクープ欲しさにFBI捜査官と寝た新聞記者に口を滑らせてしまう。

翌日「リチャード・ジュエル犯人説」が報じられ一瞬にして「アメリカの敵」になってしまったリチャード。

一歩も家から出られない、テレビを付けたらどのチャンネルも彼を批判している。
FBIは「家宅捜査」と称して同居している母の下着まで持ち帰る。

報道が進むにつれて
「ミリタリーオタクで銃を複数持っている危険思想の持ち主」
「仲良い男友達がいるのでゲイ」
と見当違いな情報まで報道される。

FBIは強引に犯人にしようと生真面目で押しに弱いリチャードの性格を利用して
「公園に爆弾がある、爆破まで30分」と言わせて録音しようとする。

社会的に殺されようとするリチャードが電話したのが昔、弁護士事務所でバイトをしていた時に仲良くしてくれていた弁護士ワトソンだった。

精神的ダメージを受けながら耐え続けるリチャード
無実を証明しようとするワトソン
息子を信じる母

たった3人でFBI、マスメディアからのいじめに立ち向かう。

みんなを救ったのに。真面目なリチャードが適当な理由で社会的に追い込まれる。

一般人が社会的にリンチされるのは現代では当時以上によくある光景になっていて胸クソ悪い。

あらすじで書いた通りFBIの推理はボロボロなのだが、元々警察官志望であるリチャードからすれば司法のトップ層であるFBI捜査官は憧れ。
FBI=聖職者だと信じて疑わないため誘導尋問にもガンガン引っ掛かる。

マスメディアからは
・太っている
・独身
・母と同居
・過去に職場でトラブルを起こした(本人が真面目過ぎたのが原因)
・今は警備員
・ミリタリーオタク
という事で「社会の底辺」と決めつけられおまけに全く事実じゃない同性愛者とまで言われる。

冤罪で世間から叩かれる理不尽な怖さに加えて、FBIとマスメディアというどちらかというとエリートに分類される職業の面々がオッサンを差別しまくるという選民思想による弱者いじめが加わるから最悪だ。

特に嫌悪感を感じたのが新聞記者のキャシー(オリヴィア・ワイルド)
・汚い言葉遣い
・人を見かけと職業で判断する
・スクープのためなら平気で体を売る。
ととにかく下品。

映画的に盛られている所はあると思うが、個人的に大嫌いな女だった。

リチャードと同様に追い込まれる母ボビ。外に出歩けずテレビをつけたらどのチャンネルも息子がテロリスト扱いしている日々を考えるだけでつらくなる。

もう自殺した方が楽なのではという状況の中で、リチャード、ワトソン、ボビの3人が立ち向かう物語後半はどんどん温度が上がっていく。

「アイアンマン2」ではイタい社長役だったサム・ロックウェル演じる弁護士ワトソン。

口は悪いが人情味溢れるワトソン。リチャードが電話をかけたのも弁護士事務所でのアルバイト時代唯一「人間」として接してくれたから。
(太っているから「ミシュラン」とか言われて弁護士連中にバカにされていたリチャードにワトソンだけ上下関係なく仲間として接し、一緒にゲームセンターに遊びに行ったりしていた。この冒頭で描かれるシーンが後でジワジワと沁みる)

いろいろあってあまり仕事がなく落ちぶれた弁護士だが、実は超凄腕。
相手はアメリカ全土、敵がでかすぎる戦いに人情だけで挑む姿は漢の中の漢だった。

ワトソンが絶望している親子を励まし、呼応するように立ち上がる親子。

息子の無実を訴える母の愛が爆発したスピーチ

気弱なリチャードがFBIに感情をあらわにして論破

無実が晴れた事が証明された日のカフェ。戦いが終わり緊張の糸が切れて号泣するリチャードを観て俺も号泣していた。

クリント・イーストウッド最高傑作と言われるのも理解できた。

御大自身「自分が80を越えた老人だという実感が未だにない」という発言通り
「運び屋」で3Pに挑み、私生活でも23歳の彼女が出来た事が報道されているが、
映画もさらにレベルを上げていっている。生涯成長期!!あいつまだまだ伸びるよ!!

友情と家族愛が理不尽に打ち勝つ「リチャード・ジュエル」は1月17日公開。

劇場で観て涙した後は近くにいるオッサンについて接し方を今一度考えて欲しい

オッサンの全てがウザいLINEを送ったりしないし臭くない。ちゃんと風呂に入っているオッサンがほとんどだ。
良いオッサンだっているんですよ(^^;)←オッサンが最も使う顔文字。