男も女も参考になるハードボイルドの教科書!!気合MAXの駿の力技!!「ルパン三世 カリオストロの城」

ルパンでお馴染みの車フィアット500を納車した。

以前から我が家ではダイハツ ミラ・ジーノに乗っており、2001年製の中古車で50万円と超安価だったこともありボロボロだった。

地元の六甲山を上るのが一苦労、スマホを繋げれるわけがなく、カーオーディオはCDとまさかのカセット。

貧相な車ではあるが、今の車にはないレトロでかわいい外見と、取り回しの良さ。
オーディオが俺の学生時代のipadのような程よく悪い音質でノスタルジーを感じる事。

何より30歳を超えて手に入れた初のマイカーなので気にいっていた。

友達から「チョロQ」「最高時速60km」とバカにされていても、愛着だけで乗り続けていたが、ここ数か月で命の危険を感じる事があったので、我が家の車買い替え問題は白熱していた。

嫁からの「何が欲しい?」という質問に「黄色のシボレーカマロ、トランスフォー・・・」と言い切る前に却下され、俺の発言権は瞬時にはく奪された。

嫁は「そもそも今買い替える必要があるのか?」と何度も根本的に事を言い出したり、
俺は俺で定期的に「ダッチ、スーパーチャージャー」「光岡のロックスター」「アウディ」と提案してはことごとく却下され続け自分に自信がなくなっていた。

ある日「これだ。」と嫁が言ったのがフィアット500だった。

フィアットと言えばルパンの車!!俺も嫁の気持ちが変わらないように猛プッシュした。

ディーラーに行ってみれば、ルパンが乗っているモデルに比べるとモデルチェンジしているが、外観はかわいく、内部はおしゃれ。そして命の危険がなく、きちんとスピードが出るという事で思いきって新車、男の一括払いで購入した。
(余談だが、ウン十万円も値引きしてもらえた。やはり高い買い物は交渉するのが大切!!)

契約した日に嫁とご飯を食べながら「ルパンと同じ車に乗れるなんて嬉しいわ。」と言ったら、いまいちピンと来ておらず、「カリオストロの城」は見た事ないらしい。

「奴はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です!!」と言っても「聞いたことはあるけどルパンだと知らなかった」との事。

カリオストロの城を観ないでフィアット500に乗るなんて、ローリングストーンズを一切聴いていないのにバンT着てる奴くらいダメだ!!

という事で急遽、ブルーレイを買ったので今回は「フィアット購入おめでとう俺!!企画「ルパン三世 カリオストロの城(以下カリ城)」です。

カリ城といえば、我々ビーパワーもなんだかんだで大ファンな「日本が誇るアニメクレイジー」宮崎駿の監督デビュー作。

アカデミー賞を受賞した事もあるだけにメディアでは人間国宝のような扱われ方をする御大だが、

・「風立ちぬ」の引退宣言後、「俺は終わった人間だ!!」とわかりやすく落ち込む

・最新のCGや若手アニメーターに闘争心を燃やしまくりスタジオを大火事にする。

・「(「風立ちぬ」がノミネートされた年にアカデミー長編アニメーション賞を受賞した「アナと雪の女王」に対して)

「ありのままって言葉が流行ってるけど、ありのままの人間なんて全然おもしろくねーんだよ!!無理しろ!!本気出せ!!」と吠えだして本当は思いっきり悔しがっていた事が発覚。

・本気を出し過ぎた結果、引退撤回する。

作るアニメに負けないくらい本人がおもしろい


この辺りの本は駿の狂ったエピソードがてんこ盛りでおもしろい。

キャッチコピーの

「さらにスピーディーに!さらにスリリングに!さらにスッとボケて!」

と景気の良い言葉の通り、冒頭のフィアットでのカーチェイスや大乱闘、城ジャンプなど「早過ぎたワイルドスピード」状態だ。

そんな御大の作品のテーマである「命」の言葉通り生命力に溢れまくった駿の、しかも初監督作品だけあってストーリーの方も駿の気合が暴走している。

当時放送中だったアニメ第2シリーズをガン無視して設定は第1シリーズ準拠。

お茶の間で人気だったコミカルなルパンをガン無視してゴリゴリの硬派路線。(そのためルパンなど登場人物の年齢設定を20代からアップして、30代の中年に。)

あまり興味がなかったのか、登場時間がルパンや次元と比べて圧倒的に少ない五ェ門。

と「みんなの求めるルパン」ではなく「駿がやりたい事をルパンでやった」内容に仕上がっている。

常人がやれば大批判されてその後、業界から干されるが、そこは超人の駿。
「渋いルパン」がウケまくり、今もルパンシリーズの代表作になっている。

モブキャラも表情豊かなカリ城。中でもMVPはバズーカみたいなカメラを振り回してすごい表情で撮影するカメラマン!!セリフは一切なし!!

本作の見どころは古今東西の映画と比較してもハードボイルドが炸裂しているところ!!
頭からケツまでビーパワーハードボイルド、明日から真似したくなる大人の流儀に溢れているので紹介していきたい。

・飾らない
三十路を超えてギラギラ感が収まったルパン、軽口を叩くのは変わらないがチャラいそれではなく心の余裕から来る軽さになっている。

車も世界に数台しかないようなベンツSSKからイタリアの大衆車のフィアット500がメイン。

スーパーチャージャーこそ搭載しているが、自己承認欲求少なめのおくゆかしいチョイスだ。

・ガッつかない。
テレビで不二子に見せたようなスーツの早脱ぎは見せない。
次元に「どっちにつく?」と聞かれたら「女!」と即答。
酒場の女店員がカリオストロ伯爵が有名な女たらしと聞くと「俺みたい!!今晩どぉ!?」と言うが性欲に溢れたいやらしさはない!!

クライマックスに自分の年齢の半分くらいのクラリスに惚れられるという奇跡のようなシチュエーションに遭遇するが「お前さんの人生は、これから始まるんだぜ!」とハードボイルドが性欲に打ち勝つ大金星を挙げる。

別れてからの車内での表情や、次元からの「おめぇ、残っててもいいんだぜ」という言葉に返答しない点、クラリスを抱きしめはしなかったが、額にキスしたあたり、相当「一回くらいは」と心の葛藤があったのだろうと想像できるが、そのみっともなさも含めて同性としては最高だ!!

「エクスペンダブルズ」3作品のエンディング全てが女にアタックされたスタローンが優しく断るカリオストロパターンなのでスタローンインマイハートの構成要素の一つに「宮崎駿精神」が混入されているのは間違いないだろう。

話がそれたが、若い女の子に「おじさんは地球の裏側からだってすぐに飛んで来てやるからな!」と言うと普通の男なら確実に「気持ち悪い」とネットに晒しあげられるが、クラリスは「きっとまた会えるわ」と喜んでいる。

男が目指す道の到達点の1つであり、ハードボイルド検定があれば1級間違いなしだ。

・相棒を超えると夫婦になる。
ルパンの相棒次元大介。寡黙でクールな次元だが、カリ城の次元は相棒というより夫婦に近い。

実力のある次元の事だ。
かつては「俺の方がルパンよりも・・・」と躍起になったり悔しい夜を過ごした事もあるだろう。

チーム解消しソロになる事を考えた事もあるだろうが、ルパンのマネキンを騎馬戦スタイルで担ぐ次元はそういった悩みから解き放たれたように思える。

「ルパンより自分の方がモテる」趣旨の発言もしたことのある次元が、マネキンの土台になるという事はどっちが上だとかメインをどっちが張るかといった余計な競争心に対する答え合わせだ。

相棒はあるレベルを超えるとライバルではなく結婚という形式が不要な夫婦になる。

他作品では「ドラゴンボール」での近年のベジータが同じく悟空の夫婦状態になっている。

・おさえるところはおさえる
おそらく駿の意向だが、登場時間及びセリフが他主要キャラに加えて圧倒的に少ない五ェ門。

レギュラーというかゲストに近いポジションになっているが、「またつまらぬ物を斬ってしまった」とはボヤいてばかりの石川さんじゃない。

クラリスを見て思わず「可憐だ」とつぶやいてしまう堅物になれない所が「五ェ門」でググると「五ェ門 萌え」「五ェ門 受け」と出てくる理由だと思うが、「今宵の斬鉄剣は一味違うぞ!」は全国の石川さんはもちろん、人類なら誰もが言いたいセリフだ。

・女もハードボイルド
「ハードボイルド」とは決して男だけのための言葉ではない。

不二子もハードボイルドが炸裂している。

腐っている銭形への電話。
決して甘やかさない、しかしさりげなくきっかけは与える
そして自分は去る。

この時の横顔が色気がある。

クラリスとのガールズトークの中で「(ルパンとは)恋人だったこともあったかな」
とさらっと言い「(ルパンに)捨てられたの?」という質問に
「まさか・・・捨てたの」と余裕いっぱいに応える。

他作品でのルパンと不二子との関係を考えるとカッコ良すぎるこのセリフ。

こんな不二子になら何度でも捨てられたいですよ。僕は。

・正しい棒読み
カリオストロ公国が作る偽札であるゴート札を発見するが、上層部から国家的な問題になるので絡まないように支持される銭形。

大悪事を発見したにも関わらず何もできない。部下達からの出勤準備にも「全員帰国の準備をしろ」というしかない。
無力感に打ちのめされてヤケ酒を煽る銭形のとっつあんだが、不二子の助言により上層部ガン無視の殴り込みをかける。

乱闘のどさくさに紛れて偽札工場に突入し、偽札を大量に抱えて「ルパンを追っててとんでもない物を見つけてしまった!どーしよう!」と棒読みですっとボケるとっつあん。

カッコ悪さも含めてカリ城のとっつあんは人間臭くて、どれだけうちのめされても気合を入れなければならない事を教えてくれる。会議や客先でけちょんけちょんにされた時はこの時のとっつあんを思い浮かべたいものだ。

一部でクサ過ぎると指摘のあるクラリスへの「奴(ルパン)はとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です」はとっつあん自身、若干自分に酔っていたかもしれないが、大仕事を決めた直後なんだ!!

ここは暖かく見てやってくれ!!この通りだ!!

・人生で最も言われたい言葉第1位。

作品のクライマックスでルパンや銭形の後ろ姿を見て、「アルプスの少女ハイジ」のおじいさんのジェネリック版みたいなおじいさんが言う

「なんて気持ちの良い連中なんだ」

人生で最も言われたい言葉部門第1位に選出されました(今決めた)。

「この作品で初めて自分の体力の限界を知った」という駿の言葉通り
気合と根性に溢れた一本。上映時間が1時間40分とコンパクトなのも良い。

ジブリの経営や映画の製作費の関係上、優しい物語を作らないといけないだろうし、それはそれで好きだが、日本で最もハードボイルドを知り尽くしている駿にはまたゴリゴリに硬派な作品を作って欲しい。「カリ城」とか「紅の豚」的ながっつりした奴を。かなりの年だけど、その辺は超越してるので大丈夫だろう!!

男も女も関係なく、高級品やモテるための指南を紹介するファッション雑誌を何冊も読むより「カリ城」を連続再生した方がハードボイルドが磨かれるはずだ!!

是非とも枕元に「カリオストロの城」の円盤を置いていて欲しい。

がんばるぞ!!何かを!!

フィアット