2001年。世間は「ハリー・ポッター」一色だった。
ベストセラーが映画化。作者のJ.Kローリングが生活保護受給者から一躍成功したというシンデレラストーリーも話題となっていた。
当時16歳の俺は「いつか俺はロックで世界を変える」という野望を持ち部活には入らなかった。
毎日CD、ラジオ、本や映画で知識を漁りギターの練習をしていた。
「青春パンクばかり聴いている連中はダメだ。俺が本当のロックを日本に教えてやる。」
と心の中ではロックスター気取りだったが、帰宅部で時間はあるはずなのに学力は学年で下の方。
おまけにメガネで身長の低い俺はゴリゴリにスクールカーストの底辺だった。
青春をスポーツに打ち込む体育会系の連中には柔道の授業の時に吹き飛ばされ、女子の視界には一切映っていない灰色の日々の中で珍しくクラスのイケてるグループから映画に誘ってもらえた。
映画は「ハリー・ポッターと賢者の石」だった。
いつも家でビデオ(まだDVDは普及していなかった)を一人で観ていた俺は内心嬉しかった。
思春期をこじらせていた俺は聞いてもいないのに原作を読んで得た知識を披露しまくったのがよくなかった。
イケてるグループ的には気を使ってクラスの隅っこにいるオタクを誘ってやったのに、調子に乗るもんだからイラついたのだろう。
俺が買ったポップコーンはカツアゲされて本編が始まる前に全て食べられた。
またハリー・ポッターのPS1のゲームを持っていたのだが、サッカー部の奴に貸したところ返ってこなくなった。29歳の時にようやく返してもらえた。
やがて俺の高校でのあだ名はチビでメガネというだけで「ポンコツハリー・ポッター」になった。
その後もハリポはホグワーツを救ったが、俺はしょんぼりした毎日を送り続けた。
若くして大成功したダニエル・ラドクリフの人生が転落することを願ったが、シリーズ終了後も様々な役柄に挑み、イギリス王室よりも資産が多いというポジティブなニュースばかり目に入った。
俺はというと大学、社会人を経てやっぱりしょんぼりした毎日を送っていた。
俺はハリポを激しく憎んだ。
そんな憎しみ続けて20年経った今、ダニエル・ラドクリフがクソリプだけが生きがいのオタクになったというニュースを見つけた。
残念な事に現実ではなく映画での役柄だったが、とにかくハリポ野郎のみじめな姿が見たかった。
それが今回紹介する「ガンズ・アキンボ」です。
あらすじ
ダニエル・ラドクリフ演じるマイルズの仕事はゲームプログラマー・・・といってもネットの広告に出てくる課金ばかり要求するゲームを作っている。
ネットのゲーム配信を観て元カノのノヴァのインスタを覗く毎日。
SNSにクソリプを書き込む事だけが楽しみなみじめな男だ。
※自宅に「ランボー怒りの脱出」や「コマンドー」のポスター
T-800やロッキーのフィギュア(おそらくNECA)が飾られており必須の知性の低い部屋だ!!
ある日、スキズムというサイトを知る。
実際の殺し合いを配信している闇サイトで凄まじい民度の低さを誇っていた。
最高のフィールドを見つけたマイルズは、熱心にクソリプを送り続ける。
すると運営から「何様のつもりだ」とリプが来る。
リアルではハエも殺せないがネットではターミネーターを自負するマイルズは
「粗チンをミキサーにでも突っ込んでろ!!」ととびっきりのクソリプを返す。
しかしインターネットは怖かった。
IPアドレスを特定されて自宅に殴り込みされる!!
目覚めると両手に銃をボルトで取り付けられスキズムに強制参加させられていた!!
パニくっている余裕もなく、現在スキズムで記録更新中の最強最悪の殺し屋ニックスに
襲撃される!!
まともに小便もできない中、ガウンとパンツ一丁、足はクソダサいスリッパで逃げ出すマイルズ
両手にハンドガンを固定されているもんだから外では完全にサイコパス扱い。
全米に配信されている中、果たしてマイルズは生き残ることができるのか?
アンチハリポの俺が見たわけだが、悔しいくらいおもしろかった。
勢いだけじゃない、西部劇から続く往年のガンアクション映画、特にジョン・ウーの映画に通じる熱さのある映画だ!!
ジョン・ウー・・・70年代から活躍する香港の映画監督。二丁拳銃を使ったスタイリッシュなアクションと義理人情溢れるストーリーが特徴。
1986年の「男たちの挽歌 英雄本色」で一躍有名となり、90年代から活動拠点をハリウッドに移す。
主な代表作は「男たちの挽歌」シリーズ、「ブロークン・アロー」「フェイス/オフ」など。
当時の中学生に二丁拳銃と言えばベレッタ、黒コートにサングラス、戦場を舞う白いハトというどうかしている美学を植え付けた張本人。
銃+格闘シーンが多い本作だが「ジョン・ウィック」のそれではなく、明らかに「ハードターゲット」の影響を受けている。
「ハードターゲット」はジョン・ウーのハリウッドデビュー作で香港時代からのケレン味溢れるアクションこそあるものの、主演のジャン=クロード・ヴァン・ダムが二丁拳銃を使っていても止めは回し蹴りというおかしな作品。
その後の二人のキャリアから「ジョン・ウーにとっては失敗作。ヴァン・ダムにとっては代表作」と主にビーパワーの中だけで語られてきたが、本作は「ハード・ターゲット」をベースによりスタイリッシュなアクションに進化している。
※実際「ハード・ターゲット」は劇中で重要なシーンで登場する!!ヴァン・ダムよかったな!!
また、登場人物達の被弾率も多いのだが、そんなところも「10発までは食らってもOK」のジョン・ウースタイルを踏襲している。
ネタバレになるので割愛するが「家族」をテーマにしたストーリー。魂のドッジボールと言わんばかりの人情の応酬。
美しい散り際など、単なる二丁拳銃アクション映画ではなく、ジョン・ウーの精神を完コピした内容なので終盤は拳を握りっぱなしだった。
ダニエル・ラドクリフが時折チョウ・ユンファに見えたのは俺の視力が悪いわけではないはずだ。
なんと最高のタイミングでこれまた「キックボクサー」の主題歌スタン・ブッシュの「Never Surrender」が流れる!!ヴァン・ダム抜きで名曲なのでテンションがぶち上がる事必須!!
また、殺し屋ニックス役のサマラ・ウィービングもたまらない。
汚い言葉を吐き捨てドラッグ中毒、ライダースジャケットに身を包み全身タトゥーの姿は女モトリークルー!!
わざと金玉を撃ち抜いたり、ガトリングガンを乱射しながら「イキそうだぜ!!」と叫ぶ姿に惚れてしまった。
今まで俺はハリポの野郎を逆恨みしてきていたが、ダニエル・ラドクリフは素晴らしい俳優だと思う。いつか「今までごめんな」ときちんと謝って二人で飲みに行きたい。
忖度なしで「ファンタスティック・ビースト」よりもファンタスティックなビーストばかり出てくるのでワーナーブラザーズさんに相談して「ハリー・ポッター外伝 狼たちの挽歌」といったタイトルで公開すれば相当売れるのではないだろうか?
ガウンとパンツ一丁のガキやロックファッションの女の子が集まり杖の変わりにガスガンを置く。そんなUSJを見てみたい。これならマリオにも負けないはず!!
絶対いい案だと思うからやろう!!
ダンブルドア校長、あなたの生徒は立派です。
公式サイト
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