「ガンズ・アキンボ」が公開されましたね。
前回の紹介記事でも書いた通り、ジョン・ウー映画に通じる熱さがある。
至近距離での乱射、格闘とのコンビネーション、そして義理人情溢れる展開
若干ネタバレになるがサマラ・ウィービング演じるニックスは「男たちの挽歌」を凝縮したようなキャラだ。
というわけで「ガンズ・アキンボ」観賞後は二丁拳銃を欲していると思うので、今回はジョン・ウーについて紹介します。
ジョン・ウー(呉 宇森)
作品の特徴:二丁拳銃と義理人情、銃撃戦でスローモーション、白いハト、主人公クラスのキャラクターは銃弾を10発までなら食らってもセーフ
ジョン・ウーの歴史を解説しながら個人的にこれ!!という作品を紹介します。
【香港ノワール爆誕編】
香港映画界で独自の路線(ド派手な暴力)を追求し続けた結果ジョン・ウーが香港で干されていた頃、友人であるツイ・ハークの助けで再度香港で作った映画が
■男たちの挽歌(原題:英雄本色 A Better Tomorrow)1986年)
それまで香港といえばカンフーもしくはコメディだったが香港ノワールという新たなジャンルを確立させる。(超ザックリ説明すると日本の日活・東映ヤクザ映画+西部劇)
年齢的に後追いなので、当時事はわからないが、ハリウッド映画とは異なるアクション描写は衝撃的だった。
黒コートをなびかせサングラスをかけたチョウ・ユンファが二丁のベレッタM92Fを手に敵がいるレストランを襲撃するシーン。
お店のホステスといちゃつきながら店の植木鉢にベレッタを仕込む。
部屋が近づくと笑顔が消え・・・
装弾数は気にせず撃ちまくり、スローモーションで倒れる敵。
弾が切れたらマガジンチェンジをするのではなく、銃ごと捨てて次の銃を構える贅沢な使い方!!
ジョン・ウーが公言している通り本人は「暴力否定」「趣味がダンス」という事でビジュアル的なカッコよさを追求したアクションはそれまでのアクション映画とは違っていた。
アクション映画で大切なのはケレン味だと思うがジョン・ウーはケレン味を生み出すのがうますぎる。
本作の影響は絶大で後に「マトリックス」が公開された時に子供心ながら「男たちの挽歌」っぽいと興奮したが実際監督のウォシャウスキー姉妹はジョン・ウーのファンらしい
また、漫画「Black Lagoon」でも本作のユンファそっくりの張が出てきた。
余談だが、俺が子供の頃の映画雑誌やミリタリー雑誌ではこの派手な二丁拳銃描写を「ユンファ撃ち」とよく書かれていた。
アクションはもちろん特筆すべきポイントは義理人情。
刑期を終えて警察官である弟キット(レスリー・チャン)のためにカタギになることを決意した主人公ホー(ティ・ロン)
しかし、兄が元三合会であることから父親が死んだ事、警察内で出世が出来ない事から弟からは恨まれており、三合会時代の親友マークは怪我で落ちぶれていた。
静かに暮らしたいホーだが、失った誇りを取り戻したいマークのため、今や三合会のトップとなった後輩のシンの暴走を止めるため再び銃を手に取る。
家族や仲間のために再度裏社会に戻る。この義理人情に溢れたストーリーが「男たちの挽歌」がただのアクション映画ではないところだ!!
【ジョン・ウー香港黄金時代編】
一躍、香港で大出世したジョン・ウーは「男たちの挽歌」をドーピングした作品を連発!!
特におすすめなのが
■男たちの挽歌2(1987年)
前作で死んだマークには双子の弟ケンがいた!!という設定で前作で人気が爆発したチョウ・ユンファも続投。
前作以上の火薬量、ゼロ距離の乱射、弾がなくなればマガジンチェンジではなく銃ごと捨てる、大爆発!!日本刀!!
とラストの復讐シーンは映画史に残る戦い。
個人的に「1」より「2」の方が好きなのだが、理由としてディーン・セキ演じる元偽札偽造組織の親玉ルンの存在。
部下に裏切られた上に娘を殺されて廃人になるルンが正気を取り戻し、涙を流しながら「なぜ、善人でいることは難しいんだろう」とつぶやくシーンのカッコよさ。
「酔拳」の師範などコミカルな役が多いディーン・セキが渋さ爆発で演じるルンは今でも俺の中で「理想のおじさん」だ!!
ラストのルンに仇を取らせるためにケンとホーによる復讐の銃撃リレーは必見。
※それぞれの死んだ家族のために敵のアジトに飛び込むシーンは本作のハイライトの1つだが、何度見てもディーン・セキは着地に失敗して尻から地面に落ちたと思う。
■狼 男たちの挽歌・最終章(1989年)
「男たちの挽歌」とストーリーに関係はないがジョン・ウーと製作のツイ・ハークが2人とも邦題を気に入っていたのでタイトルの使用を許可した一本!!
チョウ・ユンファ演じる殺し屋と自身の失敗で失明させてしまった女性歌手、そして暴走した操作で組織から干されている刑事の物語。
これについてはジョン・ウーの義理人情描写が最高潮だと思っている。
敵対する関係ながら認め合うチョウ・ユンファとダニー・リー
チョウ・ユンファとヒロインのサリーイップとのラスト・・・たくさん人が死んでいる映画であることを忘れて涙が出る。
※ルピタ・ニョンゴ主演で本作のハリウッドリメイクが計画されていたのだが、いつのまにか聞かなくなった。どうなったんだろうか。
本作に憧れて子供の頃に夜中にハーモニカを吹いていたら親にバレたことがある。
ハーモニカは割とうるさい。気をつけろ。
次作のアクション描写が最高潮の「ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌」を最後に舞台をハリウッドに移す
【ジョン・ウーハリウッド世界統一編】
ついにハリウッドに白羽の矢が立ったジョン・ウー。
■ハード・ターゲット (1993年)
ハリウッド1作目。ジョン・ウースタイルは健在なのだが・・・ハリウッドでの初仕事に苦労したのか主演のジャン=クロード・ヴァン・ダムが原因かはわからないが・・・
・二丁拳銃を使っても、止めは回し蹴り
・唐突にコブラをかじるヴァンダム
・バイクの上で立ち上がるヴァンダム
・ヴァンダムの髪型
と消えた義理人情要素の変わりにヴァンダムが飽和。
家族の心温まる描写が得意なジョン・ウーだが、本作の主人公であるヴァンダムのおじさんは最新兵器で武装した敵を弓矢だけで壊滅させる。
その後の二人のキャリアから「ジョン・ウーにとっては失敗作。ヴァン・ダムにとっては代表作」な本作。
これまで笑われてきたが「ガンズ・アキンボ」の重要なシーンで登場!!よかったなぁ!!
■ブロークン・アロー(1996年)
映画としてはかなりおもしろいんだけど、ジョン・ウー成分は少な目なのでまた改めて紹介したい。ジョン・トラボルタを悪役として目覚めさせたのは大きな功績!!
■フェイス/オフ Face/Off (1997年)
ニコラス・ケイジの黄金のガバメント二丁拳銃と風になびくスーツ
15分以内に脱獄、敵の家族との絆、喪服で殴り込み。
間違いなくジョン・ウーの最高傑作!!
■ブラックジャック (1998年)
長らく絶番なので今や「牛乳まみれで悶えるドルフ・ラングレン」という情報だけが残り気味の本作だが、劇場公開ではなくテレビ映画という事に侮ってはいけない。
トランポリンを使った二丁拳銃、黒スーツが似合いすぎるドルフ、
ジョン・ウーとドルフの魅力がうまく合わさった隠れた名作!!
これこそネットフリックスやプライムビデオで配信されたら良いと思うんだけど・・・。
なお、ジョン・ウーを皮切りに盟友のツイ・ハークやチョウ・ユンファの香港ノワール勢、ジャンルは違うがジャッキー・チェンやジェット・リーもハリウッド進出できたのでジョン・ウーの功績は大きい。
【こんなのジョン・ウーじゃない!!期】
キャリア的にはミッション:インポッシブル2 (2000年)がトップだと思うが、香港ノワール臭さが急激に薄まったのがこの頃。
2000年代のハリウッド映画も、中国で作成した「レッド・クリフ」も映画としてはおもしろいんだけど・・・
俺の愛したジョン・ウーはこれじゃない!!と応援していたインディーズアーティストがメジャーに行って音楽性が変わったような切ない思い出。
【帰ってきたジョン・ウー!!】
■マン・ハント(2017年)
福山雅治、チャン・ハンユーW主演の香港、中国、日本、アメリカ合作とスゴイ映画!!
・居酒屋で始まる演歌をBGMにした「女たちの挽歌」
・「人を殺したくないから足を撃つ」と主張するチャン・ハンユーが2秒後に心臓にバシバシ銃弾を撃ち込む
・いつでもカッコいい福山雅治
・あべのハルカスでダンスパーティー
・唐突に出てくる鳩カフェ
・エヴァ初号機ばりに暴走する倉田保昭
・とにかく強いジョン・ウーの娘アンジェラス・ウー
と映画としてどうなの?と言われたら「さぁ!?」としか言えない。
とはいえ演出が唐突過ぎるとしてもだ!!
二丁拳銃(この時代になってもベレッタM92F)、友情、家族の絆、スローモーション、何発食らっても倒れないなどあの頃のジョン・ウーが帰ってきたことには変わりない。
この映画についてはこれまでに紹介した映画を一通り見た上で観る事を強くお勧めします。
間違っても最初には観るな!!
「ガンズ・アキンボ」で熱狂した映画好きのアキンボがジョン・ウーの扉を開いてくれることを祈って。
ジョン・ウーといえばベレッタ!!