「立派な人間」とは何だろうか?
発展途上国へのボランティア、ポリコレを配慮した生きやすい社会作り、動物愛護。
確かに大切だが勘違いしている人が多いように感じる。
まずは自分の周りを幸せにする事なんじゃないだろうか?
映画もここ最近はそういう意味でスケールが大きすぎる作品が増えた気がする。
週1ペースで世界的な危機になり、その都度ヒーローが平和が守られている。
その手の映画は好きだが、誰もがスーパーヒーローではないし、地球の立場からしても毎週危険な目にあわされるのもたまったもんじゃないはず。
半径1km以内の問題を解決するヒーローの活躍も注目すべきだ。
というわけで今回紹介するのはチャールズ・ブロンソン主演の「マジェスティック」です。
ブロンソンの映画のポスターは95%文字が真っ赤だが、本作は一味違う。
ビーパワーの元ネタにもなったシュワルツェネッガーの「ゴリラ」の衝撃を超えた。
完全にイってしまっているブロンソンの目、「暴力は現代の掟」という強烈なたたき文句。
そしてあらすじは「スイカ畑を荒らされたブロンソンがショットガン片手に復讐」らしい!!
一刻も早く観なければ!!とはいえ、配信されていないのでネットで買った。600円で。
今からあらすじを書くが・・・先に予防線を張っておくがこれから書く事は全て事実だ。「嘘つくな!!」と思うだろうが、一切盛っていない。俺を信じてこの続きを読んで欲しい。
ヴィンス・マジェスティック(チャールズ・ブロンソン)は、スイカ畑の農場主。
いよいよ収穫の季節という事で人種差別でトイレすら貸してもらえないメキシコ移民たちを雇う。
農場に戻ったところ既に作業員たちがいる。
食は細そうなのに高価な服を来た生意気なガキのコーパスがショットガンを持った仲間と共に「移民なんて使うな。単価を安くするから俺たち経由で人を雇え」と絡んできた。
大企業勤めだからと調子に乗ってきたイキりリクルートに怒ったマジェスティックは
ショットガンを奪ってイキりリクルートに肛門に思いっきりショットガンをぶっ刺した。
悶絶しながら帰るイキりリクルート達。
案の定、暴行罪で訴えられてマジェスティックは逮捕される。
「スイカの収穫があるんだ!!帰らせてくれ!!」と主張するマジェスティックだが
いくら売られたケンカとはいえ他人のケツの穴にショットガンをぶち込んだ罪は重い。
留置所には、殺し屋レンダ(アル・レッティエリ)もいた。
有名な殺し屋ということで他の囚人が目をそらす中、
「ソーセージ食べないなら俺にくれよ!!」
「有名人なの!!あっ、知ってる!!アコーディオン奏者だろ!?」
と一方的にあおり続けるマジェスティック。
護送されることになった段階で、護送車がレンダの組織に襲撃される。
街中での銃撃戦。警官、暴力団員共に多数の死者が出る中、他の囚人たちを避難させたマジェスティックはレンダを捕らえたまま護送車ごと逃走。山小屋に立てこもった。
一緒に逃げたもののマジェスティックの考えていることが一切わからないレンダ。
一応殴ってみたが、やっぱり返り討ちにされる。
殺し屋だからこそわかる。「この人は・・・ほんまにアカン人や」
レンダは冷静にマジェスティックに逃がしてほしいと頼みこみ、仲間のワイリーに電話をかけたら2万5,000ドルあげるという事で落ち着いた。
ところが、マジェスティックは警察に電話して「レンダを引き渡すから自分のことはなかった事にしろ」と国家権力相手に交渉をしていた。
やってきた仲間のワイリー(なんと美女)には電話をかけた店の公衆電話代だけ払わせて警察署に向かう3人だったが、スキをつかれレンダに反撃されたマジェスティックは猛ダッシュで逃げる。
殺し屋レンダを連れて帰るといったが手ぶらで警察署に戻ったマジェスティック。
結果、暴力罪で捕まったあげく、護送車ごと逃亡しただけの立派な危険人物なので、スイカの収穫は絶望的だったが、なんと釈放された。
なんとレンダはコーパスと手を組み、マジェスティックに復讐するためにコーパスに起訴を取り下げさせていた。
「おまえこれから大変だぞ、殺されるぞ」と警告する警官達の声は届かずスイカ収穫に向けて笑顔で帰るマジェスティック。
スイカの収穫も終わり、軽くナンシーと飲みにいったマジェスティックの元にレンダが現れた。
ドン引きする他の客。マジェスティックはよろめいたふりをしてレンダを黙ってグーで殴るのだった。
やがてはじまる嫌がらせ。
働く移民達を脅してマジェスティックの農場から追い出し収穫したスイカを機関銃を乱射。
脅しにも屈せず最後までマジェスティックの元で働いた移民は暴行を受けて両足を粉砕された。
もう我慢の限界だ・・・・。
マジェスティックはショットガンに弾を込めた。
世界平和ではなく自分の元で働く移民のため、スイカのために悪党を皆殺しにする、ご近所トラブル解決映画だ。
マジェスティック(威厳のある)という言葉通りブロンソンが気持ちの良い男を演じている。
1974年の映画だが、移民及び女性の扱いといったポリコレへの配慮が素晴らしい。
個人的に気に入っているのが両足を砕かれた移民を病院にお見舞いに来た時警官から気遣われて「おまえの召使いまで襲われてしまって」と言われた時に、きつい口調で「召使いじゃない!!俺の友達だ!!」と一喝するマジェスティックの漢気。
本作のヒロインであるナンシーと飲みに行った時、マジェスティックが「君はきれいだ」と口説くのだが、移民として雑に扱われる事に慣れているナンシーは「寝たいのなら率直に言いなさいよ」とぶっきらぼうに返す。
普通の男なら思わず黙ってしまうだろう。しかし男の中の男だ。
「俺のやり方じゃない。君をきちんと知りたい。」
とニヒルに返す。
ゴリゴリの肉食系のブロンソンが言うのだからたまらない。
※ちなみにナンシーも素晴らしく最後までマジェスティックと行動を共にするのだが「逃げろと言っただろ!!」という彼に対して
「私ってめんどうな女なのよ」
と返すのがカッコ良過ぎて、思わずドキっとしてしまった。
終盤での復讐シーンでのカーチェイスも現代の視点で見てもレベルが違う。
ピックアップトラックの荷台に乗って戦うのだが、舗装された道は一切走らない。
「俺が進む方向が道だ」と言わんばかりにどんな悪路でも爆走するので飛び跳ねまくる。
冷静に考えて復讐以前に全身打撲で死んでもおかしくないのだが、マジェスティックはご存知の通りチャールズ・ブロンソンなので元気にショットガンで悪党たちを確実に仕留める。
ラストのレンダの隠れ家での死闘。
CQBなのに何故かショットガンをロングバレルに変えるセオリーをガン無視した戦い方はもちろん、窓から飛び込む「お宅訪問射殺」はマジェスティングなのでアメコミ好きの方も是非とも見て欲しい。
大きな目標を持つ前にまずは自分の周りを幸せにしよう。
必要に応じて暴力は使え。
アンジェリーナ・ジョリーやキアヌ・リーブスに憧れるのもよいがチャールズ・ブロンソンを目指すのも悪くない。
「マジェスティック」と名乗っても恥ずかしくないマジェスティカルな人間になろうではないか。
ちなみに最近の俺は劇中のマジェスティックそっくりの服装をしている。
チェックのジャケットがなかなか見つからなかったのだがユニクロで4000円で売っていた。
ただ今のところ誰も「マジェスティックですよね?」と声をかけられない。残念だ。
いつか東京コミコンあたりでハーレイクインのコスの女の子と写真が取れればいいなと思っている。マジェスティックコスで。
最後に、散々絡まれた挙句、襲われることになったマジェスティックに対する殺し屋レンダのセリフを書いて終わります。
「なんて野郎だ。イカれてるぜ」
ほんまそれな!!