東映、松竹タッグで放つ怪獣映画「大怪獣のあとしまつ」
死んだ怪獣の死体処理に挑む人類。
これまでの怪獣映画でも触れられることがあったが、その一点にフォーカスする作品はこれまでなかったと思う。
邦画を映画館で観ることは「ガンダム」くらいしかない俺だが、楽しみ過ぎて前売り券も買った。
前売り特典が全然興味のない主演のHey!Say!JUMPの山田涼介のクリアファイルだったが、早速使うくらい期待していた。
公開当日、レイトショーで観ようとTwitterで軽く感想を確認したところ
「クソ映画」
「令和のデビルマン」
と罵詈雑言が並ぶ。
辛辣な意見を書く人は
・基本的に何を見てもケチをつけている
・そもそも暇な人
・炎上しにくいを盾に駄作をここぞとばかりに叩いてバズり狙い
という側面もあるのでそれは無視として本作については満場一致で「否」の意見。
何より通常と異なるのがホームページ内のコメント欄。
映画『大怪獣のあとしまつ』公式サイト | 2022年2月4日(金)全国ロードショー (daikaijyu-atoshimatsu.jp)
「各界から絶賛の声」と書かれているが、
8割くらいは映画の中身については触れない「大人なほどほどの距離感」のある内容、一部の方はなんと遠回しにディスっている。
長年色々な映画を観てきたが、「各界からヤケクソな声」が並んでいる作品は初めてだ。
これは・・・・ワクワクしてきた!!
俺は初日のレイトショーで観ることを決心した。
「ボロカス書かれてるけど、人間にも映画にも簡単に「クソ」っていうんじゃないよ!!
絶対に何かおもしろいものがあるはず。
だいたいゴジラだって子供の頃から観てるけどおもしろかった映画って5作くらいしかないじゃないか」
とネットで書いたら怒られそうな事を考えながらチケットを発券。
家から車で10分で行ける近所の映画館は人も少なく、俺含めて10人もいなかったと思う。
これなら周りを気にせずリラックスして観れる。
予告の「シン・ウルトラマン」がめちゃくちゃカッコよかった。
今日一番おもしろかったのがウルトラマンにならないように・・・暗転した時、普段とは違った意味でドキドキした。
あらすじ
大怪獣が死んだ。死体は腐敗し始めて異臭がたちこめ、やがてガス爆発を起こす危険性が出て来た。
ガス爆発してしまうと、立ち入り禁止区域が出てしまう。
大怪獣の死体をどのように処理するか、どの省庁が担当するのか、緊急事態宣言の解除をするか否かと対応に追われる政府。政府の指示が降りず対応に困る現場。
実際、死体処理にあたる特務隊を中心とした現場のパートは楽しい。
これは「シン・ゴジラ」路線の新たな名作誕生かと思うのだが・・・
政府を中心としたギャグパートが致命的におもしろくない。
「対応に追われていまいち解決できない政府」はリアルな話だけど、監督はよほど今の日本に文句があるのか、いくらなんでもバカに描き過ぎている。
政府だけならいいが、韓国やアメリカも小バカにしているような演出まである。
ただでさえデリケートな問題なのに・・・。もしあっちの国の方が観たら怒るぞ。
何より一番きついのが出てくるギャグが寒過ぎる。おっさんが言うようなダジャレや下ネタばかり。
チ〇コネタは悔しいが少し笑ってしまったが、しつこい。
飲み会で周りがドン引きしているのに気づかず自分の言ってることに大声で笑っている人を見るようなきつさがある。
現場パートと政府パートが交互に続くのだが、現場パートで体温が上昇し、政府パートで急激に冷めることが繰り返される。
決してサウナのように整う事はなく心が削られていくだけだ。
しかも悪い事は重なるもので話が進むにつれて政府パートの方が長くなるし、伏線が回収されることのない不倫パートまで出てくる。
「ゴジラ(84)」での武田鉄矢のそれとは違うただただ寒いギャグが延々と続く。
公式HPのコメントでも何名かが触れている衝撃のラストも中盤あたりで展開が読めてしまう。おそらくマジギレする人も出てくるだろう。
エンドロール後についても、飲み会で泥酔して散々迷惑かけた奴が二次会に行こうと言い出すようなイライラが募る内容だった。
寒すぎるギャグによって映画の世界に没入できないまま観賞終了。
中年のおばさんが「レイトショーで観てよかったわ!!1900円で観てたら無理やったわ!!」と叫んでいたのが印象的だった。
基本どんな映画でも楽しめる自分でも「勘弁してくれよ」と思ってさっさと寝たが
観賞から一晩明けて本作の魅力について真剣に考えてみた。
まずキャストが異常に豪華。
オダギリジョー、西田敏行さらに菊池凛子も「パシフィック・リム」を彷彿とさせるルックスで登場する。キレイな特務隊員がいるなと思ったら浅野忠信とCHARAの娘さんだった。
何故これだけのキャストが揃ったのか。
おそらくロケ弁が毎日叙々苑の焼き肉弁当だったのだろう。
俳優の皆さんが美味しい思いができたのならそれでいい。
そして重要な事を思い出して欲しい。昨年のジェットジャガーを。
登場から半世紀近く彼は「ゴジラ界の黒歴史」だった。
しかし「ゴジラSP」で大活躍を見せて以来、今やグッズもたくさん出ている。
今や誰もジェットジャガーの事をバカにしていない。
きっと50年後、本作に登場した怪獣「希望」も日の目を見る日が来るだろう。50年後だと俺は死んでいる可能性が高いがその日が来るまで生きようと思う。
これまで特撮界隈は
・初代ゴジラ原理主義
・シン・ゴジラ庵野教
・平成ガメラ過激派
と数々の派閥が絶えず争ってきた。
「大怪獣のあとしまつ」を通して初めて心が一つになるのではないだろうか。
これは良いところではなく擁護だが、予告もシリアスに作り過ぎたのは原因だった気がする。
再度見返したがあれはシリアルな怪獣映画だと勘違いしてしまうだろう。
「「ショーシャンクの空に」以来の刑務所を舞台にした一大ドラマ」
という宣伝で「大脱出」を紹介したらスタローンとシュワルツェネッガーの家に放火する奴が出てきても仕方ないのと同じだ
最後に。
「「大怪獣のあとしまつ」をリアルタイムで劇場で観た」という事実が鉄板の爆笑ネタになる日がいつか来るはず。
劇中の下ネタや「希望」の死体のポーズを真似て笑い合いたい。その時に我々の「心のあとしまつ」も出来るだろう。
そして「大怪獣のあとしまつ」の話は5分くらいで済ませて、他の話をしたい。
例えば、歴代メカゴジラでどれが一番好きとか。