トム・クルーズが「トップガン」の続編を作ると聞いた時、全く興味が湧かなかった。
トムといえば間違いなくハリウッドを代表するスターだ
ただ、ここ10年くらいは定期的に流れるスキャンダルや、危険過ぎるスタントを提案して自分はもちろん、周りも死の危険にさらす傍若無人な印象だった。
「ミッション:インポッシブル フォールアウト」の喜々として危ない撮影を提案するトムの話を聞くヘンリー・カヴィルの顔が忘れられない。
「トップガン」は歴史を超越した名作だが、今続編を作ったところで反応するのは主に50代以上だろう。果たしてヒットするのか?
普段の俺なら気になる作品は公開日か翌日には観るが、「トップガン マーヴェリック」については期待しておらず「時間があれば観たい」くらいの気分だったこと、仕事関係の諸事情もあり公開から2週間後に観ることになった。
これが失敗だった。
公開されるや俺の予想を覆し絶賛の嵐。
ネットだけでなく俺のLINEにもダイスケさん、映画館のバイトの頃からの友達、サバゲーチーム、大学の友達など2,3日おきにありとあらゆる友人から絶賛コメントが届くようになった。
「本当によかった。」
「1作目は必ず観ておいた方が良い」
「期待値高めで行ったのにさらに上だった」
「今年の映画だとスパイダーマン(ノー・ウェイ・ホーム)以上かも」
「レイトショーで観ちゃったから寝付けなくなった」
「もう4回観た」
めちゃくちゃ観たい。だけどすぐに観れない。
期待していないと思っときながら勝手だが、数日の間、深刻なトップガン禁断症状に陥っていた。
1作を観返して耐えていたが、1週間で何度グースが死んだかわからない。
そしてついに劇場で観れる日が来た。
普段は後ろの方で観るが、座席は躊躇なくF-14を選択。
本編が始まる前、字幕:戸田奈津子と表示された瞬間、俺の心は現実世界を離陸し高く飛び上がった。
鑑賞後。
俺は大粒の涙を拭いながらトムに謝った。
「今のトム・クルーズには期待してないとか言って申し訳ございませんでした。
俺はあんたと同じ時代に生きていることに感謝している。ありがとう、トム・クルーズ」
公開から2週間以上経過したので待望の続編「トップガン:マーヴェリック」のあらすじについてネタバレ多めで紹介していきます。
アメリカ海軍戦闘機兵器学校「トップガン」
戦闘機パイロットの上位1%のエリートをさらに強化する機関である。
ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル(トム・クルーズ)はトップガン内でも当時2位、
過去40年で敵戦闘機を3機撃墜した唯一の人物という輝かしいキャリアであるにも関わらず、
現場へのこだわり、何より全くサラリーマン的な動きができず、命令を無視するため、未だに大佐だった。
「何故昇進しようとしない」という上司に「この世の謎ですね」とカマすマーヴェリック。
今回も上司には許可は取らずテスト戦闘機でマッハ10を突破、本来のテスト飛行を成功させるたものの、信条である「考えるより行動」が暴走しスピードの限界に挑んだ結果、テスト戦闘機を空中分解させてしまう。
奇跡的に脱出し生還したマーヴェリック。とはいえテスト機を無断で飛ばして木端微塵にしてしまった。
飛行禁止どころか軍隊出禁、なんならアメリカ出禁レベルの不祥事だ。
いよいよ除隊後の仕事が脳裏をよぎるが、かつてのライバルで今や海軍大将まで昇り詰めアイスマン(ヴァル・キルマー)よりまさかの「トップガン」に教官として復帰となる。
とりあえず、やった!という事でノーヘルでバイクを転がし、基地へと向かうマーヴェリック。
基地近くのバーでバーテンダーであり、元カノのペニーと再会。
「仕事も恋愛も全力投球」なマーヴェリックなので早速特攻をかけたところ、全員に酒をおごらされたあげく店から締め出される。
店の中を覗くとかつての相棒であり、演習中の事故で亡くなったグースそっくりの髭を生やしたやつ・・・というかグースの息子であるブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショウ(マイルズ・テラー)がいる。
親父同様にジェリー・リー・ルイスの「Great Balls Of Fire」をバーで熱唱するルースターを見て楽しかったグースとの日々を思い出すマーヴェリック。
前作を知っている者には胸が詰まるシーンなのだが、客観的に見ると店を追い出されたおじさん(トム・クルーズ)が、店の外でしょんぼりしているだけという涙と笑いが紙一重な状況になっている。
しかし、この映画は「トップガン マーヴェリック」なのでツッコむスキは与えない。
翌日、マーヴェリック先生による集中講座が開講。
昨晩バーで担ぎ上げて雑に追い出したおっさんが教官だったことにドン引きするエリートパイロット達に対して
「この分厚い本はF18のマニュアルだ。君たちの優秀なパイロットなら完全に理解しているだろう…
こんなもん敵も読んどるわ!今すぐ捨てろ!」とさらに生徒をドン引きさせるマーヴェリック。
今回の作戦は某国家が条約無視でウラン濃縮プラントを建造。施設は山中でGPSに引っ掛からない上に周囲は対空ミサイルがてんこ盛り・・・
超絶難易度なので戦死者は多少出ても仕方ないと作戦なのだが、「全員必ず生還させる!」と宣言したマーヴェリックは生徒達に
「機体の性能ではなくパイロットの腕が全て」
「その説明で遺族に説明できるか?やり直し!」
「実戦では死んでるぞ!がんばれ!」
「考えるな!動け!」
と主に実習(空中戦)と根性論で熱血指導。
演習でマーヴェリック自らが相手となり、次々とエリートであるはずのパイロット達を撃墜していた。
マーヴェリックの指導が「パイロットがアムロ・レイばりのニュータイプ前提」なのでついていけない生徒達。特に肝心のグースの息子であるルースターからはマーヴェリックが願書を捨てて不合格にしたという過去もあり全く信用されていない。
そんなある日、生徒の中でも一番のお調子者のジェイク・“ハングマン”・セレシン(グレン・パウエル)が、マーヴェリックとグースの過去を発見、それをネタにルースターをいじったところ座学が乱闘に発展。授業が緊急解散となる。
悩むマーヴェリックはアイスマンに呼び出され訪問。
ショートメッセージの返信が異常に早いなど、相変わらずマメで冷静なアイスマンだったが、
がんを患っており余命わずかだった。
話す事もほとんどできないアイスマンは筆談形式でマーヴェリックと会話。
学級崩壊寸前のマーヴェリックを気遣って「過去は水に流せよ」と優しいメッセージを投げかけるが、
「ずっとグースのことを引きずってるんや。あいつを死なせたくないが、ギクシャクしている。やっぱ先生に向いていないかも」と耐えきれずめそめそ泣くマーヴェリック。
するとアイスマンがキーボードを打つ手を止めて、力を振り絞って
「海軍にはマーヴェリックが必要、ルースターにもマーヴェリックが必要だ。」と決死の激励。
泣いているマーヴェリックを抱きしめて「ところで最高のパイロットは俺とおまえどっちかな?」とジョークも飛ばす。
現実でもヴァル・キルマーが咽頭がんを患い、激ヤセ、まともに話すことができなくなっているという事情もあるので映画の中のトム・クルーズ以上に俺が号泣していた。
アイスマンから「映画にはトム・クルーズが必要」と激励してもって元気を取り戻したマーヴェリックは座学を休止して生徒達とビーチラグビーを開催。
自分も上半身裸になって自分の子供くらいの年齢の生徒達と遊ぶマーヴェリック。
おそらくアイスマンが伝えたかった事はそれじゃなかったと思うし、サイクロン中将(ジョン・ハム)も「3週間後に作戦なのに頭おかしくなったんか?」とさすがにキレるが、なんとチームワークが生まれていた。
一番折り合いが悪かったルースターも筋肉をふにゃふにゃにしている。
このシーンについて4回鑑賞済の友人と
「絶対何人か参加したくなかったはず」
「あれでまとまるわけがない」と珍しく考察したのだが、最終的に
「マーヴェリックが誰よりも楽しそうだったので、みんな「この人について行こう」と思うようになったはず」
「飲み会で仕事のダメだしも酒の強要もしないだろう。」
「俺らが若かった頃は~みたいな話もしないだろうし、政治の話もしなさそう」
という結論に達した。
本作のトップガンのパイロット達は人種も性別も多様だったが、実際にチーム一丸となっていたのでこの考察は間違いないはずだ。
恋愛面でも「考えるより行動」なのでペニーの家でイチャつくマーヴェリック
友達の家でお泊りだったベニーの娘が予定を変えて帰ってきたのでこっそり窓から出ていくなど還暦間近で青春もまっしぐらだったが、アイスマンが死んでまためそめそ泣いていたりプライベートも忙しくしていた。
作戦の決行日は近づいていたが、難易度が高過ぎていまだに演習で成功しない。
さすがにこのままではまずいという事でサイクロン中将が「戦死者は何人か出るだろうけどまだ現実的な内容」に変更しようとするが、
「やればできる!!不可能じゃない!!」とマーヴェリックがまたもや無断でF-18を操縦。
ちなみに劇中でマーヴェリックがきちんと許可を取って飛行したことは一度もなかった。
自らチャレンジした結果成功する。
実力で証明してみせて、生徒達の信頼をさらに得たマーヴェリックだが、
「成功したけど、この作戦はこいつしか出来ない。」という上の冷静な判断によりマーベリックが作戦の編隊長になる。
生徒のために背中を見せ続けた結果、最終的に自分が現役復帰と教育学的には赤点だろうが、
俺たちが観たいのはトム・クルーズの活躍だ。
野暮なツッコミは無用。もう一度言うがこれはトップガンだ。
僚機にルースターを選び、支援のフェニックス/ボブ組、ペイバック/ファンボーイ組の頑張りもあり作戦は成功、施設の破壊に成功するが、
マーヴェリックとルースターはお互いをかばう形で撃墜されてしまう。
敵地のど真ん中で再会した2人。
捕虜まっしぐらかと思いきや、なんとまぁ先ほど自分たちが爆撃した敵の航空基地にF-14が無傷で残ってる!!
「昔、これでミグを3機撃墜したよ!」というマーヴェリックの興奮とは逆にアナログ過ぎるコックピットに不安が隠せないルースター
「あの・・・よくわからないスイッチが300個くらいあるんですけど・・・」というルースターに「考えすぎるな!!オヤジに聞け!!」と一喝するマーヴェリック。
これを書きながらあのシーンを思い出してあまりにも理不尽過ぎて笑ってしまったのだが、ともかく36年ぶりに離陸した伝説のF-14。
すると最新スペックの第5世代戦闘機su-57が近づいてきた。
マーヴェリックが「とりあえず味方のふりをしてニコニコ手を振っておこうと」と指示するが、相手のハンドサインがわからない。
ルースターが質問するも「わからん!」の一言。
そうこうしているうちに敵のsu-57は戦闘態勢になってる!!
旧型で新型に挑むという最高に熱い空中戦となるわけだが、いかんせん相手は最新型。
調べたところ、su-57(2010年初飛行)に対して我らのF-14は1970年初飛行。
その差40年!!
ガンダムで例えるとザク対ガンダムF91だ!!すげぇな!!吐血しそう。
実際、F91みたいな動きをしてくるsu-57だが、マーヴェリックとルースターのコンビネーションで奇跡的に機銃だけで2期撃墜!!
やった、やっと帰れると思いきやまたF91がやってきた!!こっちのザクは武器を使い果たした。
脱出装置も故障・・・マーヴェリックが「グースごめん」とあきらめた瞬間。
空母で待機していたハングマンが駆けつけてsu-57を撃墜!!
これまで嫌味なハングマンだったが、この瞬間彼は最高の補欠の称号を得た。
無事に空母に帰還した男たち。マーヴェリックとルースターは真の和解を果たす。
まるであの頃のマーヴェリックとグースのように。
マーヴェリックが「おまえは命の恩人だ」というとルースターはにこやかに返す。
「親父の代わりに俺が守りました」
最高のパイロットが唯一克服できなかった親友の死。
亡き母との約束を守るため、父親変わりになるため心を鬼にしてパイロットになることを反対したあの時の子供が、「親父の代わり」として新たな相棒宣言。
もう駄目だった・・・・俺が。
後日、二人で旧式の戦闘機を整備する二人。
往年のプレデター風味でキャスト達の笑顔が映し出されるエンドロール
そしてレディ・ガガの主題歌。
俺の目はもはや視力を失い涙を生産する器官になってしまっていた。
シンプル過ぎる、なんなら雑なところも多々あるストーリーだ。
この記事を書きながら「あの時泣きまくってたけど、やっぱ強引過ぎるよな」と少し冷静になる瞬間もあった。
ただ、「トップガン マーヴェリック」は間違いなく「映画の中の映画」だ。
莫大な予算を使った、日常では味わえない映像体験。
心と心がつながる魂のドッジボール。
観た者にとんでもないエネルギーを与える力がある。
トップガン マーヴェリックを観て人生の進路を決める人もいるだろう。
もしくは忘れていた何かを取りもどす人がいるかもしれない。
こんな事あまり言わないができるだけ映画館で体験して欲しい。
「トップガン マーヴェリック」を映画館で観た事がきっと人生における最高の瞬間の一つになる。
俺もしがない人生だが、ミリタリージャケットとレイバンのサングラスで電動自転車に乗るとか、会社の後輩たちをビーチラグビーを誘ってみようと思う。
ありがとう、トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ヴァル・キルマー。ジェリー・ブラッカイマー・・・いや、全てのキャスト、スタッフのみなさん。同じ時代に生きれて感謝です。
観賞後、夜中に友達に長電話したり、レディ・ガガの主題歌を聞くだけで涙。
「トップ・ガン」1作目を見返してグースに「息子はうまくやってるぞ」と泣きながら伝えるくらいに取り乱していた。
やっと落ち着いたので今度は冷静に細部に注意して観ようと2回目の観賞をした。
1回目の時に気づかなかったマーヴェリックのガレージにルースターの子供の頃や若い時の写真が多数飾られているのを発見して、本編開始早々に撃墜された。