ここ数年で近所のレンタル店は全て消えてしまい、映画の地上波での放送はアニメばかり。
仕方なく映画のチェックはサブスクになっている。
時代の変化ではあるが悲しい限りだ。
何か新作でも観ようと思いアプリで漁っていると懐かしい一本を見つけた。
ブルース・ウィリス主演の「ラスト・ボーイスカウト」だ。
1991年公開の本作、今から25年くらい前までは頻繁に地上波でも放送されていた。
小汚いブルースがボヤキながら銃を乱射する。
ポスターも爆炎をバックにドヤ顔を決めるブルース
という点で子供の頃はジェネリック版「ダイ・ハード」くらいに思っていたが、観返してみるとなかなか味わい深い。
あらすじ
ジョー(ブルース・ウィリス)は、過去に大統領を救ったこともある敏腕シークレットサービスだったが、ボディガードを担当していた議員がホテルで連れ込んだ女性に暴行をしているのを発見。即座に議員をぶん殴った結果、解雇。
今は酒とタバコだけが支えの私立探偵。
元アメフト選手のジミー(デイモン・ウェイアンズ)は賭博でフットボール界を追い出され、
妻も子も亡くして麻薬に溺れておりストリッパーのコリー(ハル・ベリー)が心の支えだった。
ある日、ジョーは探偵仲間のマイクからストリッパーのコリーのボディガードを依頼される。
しかし、引き受けた瞬間マイクは爆死、コリーも出会って10分も経たないうちに襲撃されて死亡。
コリーの仇を討ちたいジミーと共に捜査に乗り出すことに。
やがて明るみに出るアメフト界の闇。
負け犬二人が巨大な権力に挑む。
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主演のブルース・ウィリスは「人生にヤケになっている私立探偵」と
彼の当時の代表作を掛け合わしたような設定だ。
案の定、チノパンも薄汚れており、無精ひげまみれ。
「まるで土日は引きこもっている俺じゃないか!!」と胸が痛くなったが、もちろんブルースと俺は大きく違う。
友達のマイクと浮気していた妻が「寂しかったから」と言い訳をするものなら「じゃあ犬を飼え」と男の一問一答を披露。
劇中、常にタバコを吸っているが、これもまた男気を上げるアイテムとなっている。
中盤、敵にさらわれて、目が覚めると椅子に縛られているブルース。
ピンチにも動揺せずとりあえず「タバコあるか?」とチンピラに聞く。
タバコを貰い、火を付けて貰おうとすると、いきなりチャラ男系チンピラにぶん殴られる。
血を吐くブルース。「情けねぇな、腰抜けだ」とへらへら笑うチンピラに対して
「タバコが落ちちまった。もう一本くれ。次やったら殺すぞ」と、静かに伝えるブルース。
案の定、へらへらしながら再度ぶん殴ってきたチンピラ。
次の瞬間ブルースのパンチがチンピラの顔面に炸裂!!
なんとパンチ一発で死んでしまうチンピラ。
その場にいたもう一人の文科系チンピラが「ジーザス!!こいつ本当に殺しやがった!!」とわめいている中
「言ったろ」と言い、チンピラから拝借したタバコをくゆらせる。という正しい喫煙マナーを披露。
相棒となるジミー(彼の個性的過ぎるファッションも注目)にも容赦しない。
スター選手から落ちぶれて、おまけに妻子を失った悲しみからドラッグに手を出しているのを見てぶん殴る。(本作のブルースはよくないと思った事はまずぶん殴る)
ジミーが涙ながらに自身の苦しみを語りだすと「グチはおしまいか?」と言って出て行かせるブルース。
ジミーが家を出ていくとブルースの娘からサインを求められる。
娘から「パパってあなたの大ファンで、あなたが引退してから試合を見なくなった」という事実を知らされる。
ジミーは娘にサインと「ラスト・ボーイスカウト(最高の正義感)の娘に」とメッセージを添える。
いいなぁ・・・・(しみじみ)
ブルース自身、やさぐれており「皆、お前の事を嫌っている」「出来損ない」「俺はクソ以下」と自分を否定する言葉を吐いているが、決して人前では出さない。
このように「男とは何か」を行動で示し続けるブルースと同じくつらい過去のオーナーの相棒ジミー。
負け犬二人が立ち向かう姿は正しいハードボイルドそのもの。
久しぶりに観返してみて「なんて渋い映画だ!!何故この作品の魅力に気づかなかったのか」と分析してみた。
本作だが、監督は「トップガン」などでお馴染みのトニー・スコット。
製作は「コマンドー」「ダイ・ハード」「マトリックス」シリーズなど超大作のプロデューサーといえばこの人のジョエル・シルバー。
脚本は「アイアンマン3」の監督、否「プレデター」の下ネタメガネことホーキンスのシェーン・ブラック。と景気が良過ぎる最強の布陣だ。
その結果
車は爆発しようものなら10mは車体ごと吹っ飛ぶ(全爆発シーンの火薬量が異常だ)
カーチェイスではオープンカーなのに推定70度の急斜面から転落。
橋から落とされてもピンピンしてるジミー。
事件の証拠のカセットテープを速攻で見つけるが、信じられない不手際で消滅させてしまうジミー。
憎たらしいチンピラはハチの巣にした後、ヘリコプターのローターで肉のミンチにするオーバーキル。
とハリウッドの陽気な風がビュンビュン吹いているからだろう。
他のキャストもまだ駆け出しの頃のハル・ベリー、冒頭で八百長に結果、銃を乱射しながらタッチダウンを決めようとするヤバいアメフト選手が「ビリーズ・ブートキャンプ」のビリー・ブランクスとさりげなく豪華だったりする。
「ブルース・ウィリスのチノパンは薄汚れている映画はおもしろい」という法則があるが、この法則を確立したのは「ダイハード」1.2の後に公開された本作なのは間違いない。
本作のブルースと同じくらいの年齢になって今、子供の頃には気づかなかった魅力をたくさん見つけた。
ここ最近は仕事等で俺自身、喫煙所で疲れ切った目でタバコを吸っている中年になってしまっていたが、弱音を吐きながらも立ち向かうブルースに元気づけられた気がする。
つい先日、認知症を公表したブルース・ウィリス、近年健康状態が不安なニュースが続いていたが、症状は深刻みたいで悲しい。
家族の介護は大変だろうが、先日Ladies Of Willis/Moore名義で発表された画像のブルースは穏やかな表情だった。
嫁も元嫁も娘たちも全力でサポートしている。世界一運の悪い男と言われていた彼は実際は世界一幸せな男だ。
もう新作は観れないが、どうか残りの人生を穏やかに過ごして欲しい。
我々もこれまでブルースが見せてくれた「弱音は吐いてもくたばらない」精神で
ハードボイルドを見失わずに生きていきたいものだ。(チノパンは清潔なものにするけどね!!)
毎週新作が公開、配信されてチェックするのも大変な今日この頃。
みなさんも一度立ち止まって子供の頃に映画を再度チェックするのはいかがでしょうか?
新たな発見がきっとあるはず。
ブルースで一番好きな作品はこれ!!映画館で観て25年経つが未だにサントラを聴いている。