レッツゴーライダー男気!!名作と迷作の間で。「シン・仮面ライダー」 ※ネタバレ

「シン・仮面ライダー」が公開されましたね。

庵野秀明の作品は映画本編はもちろん、公開直後のネット上の闘いが楽しみだったりする。

その火薬量は「ゴジラで一番好きなのは?」「ガンダムで一番好きなのは?」「スターウォーズで一番好きなのは?」という質問をいっぺんに放り込んだくらい燃え上がる。

今回も案の定賛否両論だ。

「庵野さんありがとう、こんな仮面ライダーが観たかった!!あなたは日本の国宝です」という意見と
「庵野は原作を冒涜している。特撮をわかっちゃいない。自己満足だ」というやや上から目線で批判する激しい争いが繰り広げられている。
統計的にどちらの意見もおっさんほどパンチが効いている。

「何故人は争うのか」とそんな哲学的な事を考えながら真実を確かめるべく劇場に向かった。

仮面ライダーは俺の世代はリアルタイムドンピシャのライダーが不在(BLACKとRXは幼稚園に入る前、クウガの頃はもう中学生)だったので小学生の頃にきちんと観ていたのは夏休みに再放送していた初代仮面ライダーとZOくらいだ。

おまけに子供だった当時から「なんていうか・・・・仮面ライダーは雑だなぁ!!」と思っていたので、B級アクション映画を観る感覚で楽しんでいる。
そういう意味で「仮面ライダー1号」や「BLACK SUN」はどれだけ時間があっても足りないほどツッコミどころが満載だったので最高だった。

仮面ライダー1号(ネタバレあり) – Be Power Hard Boiled Z (bphbxxx.com)


ちなみに、どちらもビーパワー作品賞受賞している。

ゴジラとウルトラマンに比べたら思い入れが少ないし、庵野秀明は好きだが熱狂的ではない。
(シン・ゴジラとシン・ウルトラマンは好きだが肝心のエヴァはまぁまぁ。グッズが欲しくなるほど好きではない)

「コート着てる仮面ライダーってカッコいいな。」くらいのふわーっとした気持ちで観に行った。

なんてこった!! 涙が溢れて止まらない!!

全く期待していなかったのに。まさかこの年になって仮面ライダーで泣くなんてみっともない!!

しかし現実問題として涙腺が決壊している!!心をがっつり奪われてしまっている。
あまりにも泣けて仕方ないので上映後にトイレの個室に飛び込んだくらいだ。

確かに俺は基本的に何を観ても楽しめる人間だが・・・さすがに仮面ライダーで号泣は由々しき事態・・・いよいよ俺もメンタルが崩壊したか。

というわけで心を整理するために文にしようと思う。
※ゴリゴリにネタバレするので見ていない人は気を付けてね。

ライダーがパンチする度に相手の人体が破壊されて血しぶきが飛ぶ!!
確かにライダーって怪力の設定だから、これくらいの方がリアルだし、何より見てて気持ちいい。戦闘員が「イーッ!」と言う暇もない。

マスクを被れば脳をコントールされて罪悪感が薄れて躊躇なく殺せるのも良い設定だ。
サイクロンの変形シーンもカッコいいな。

クモオーグも良いデザイン、そしてライダーキック!!これぞ必殺技!!

掴みはばっちりだったが・・・

急に松坂桃李の声のロボット刑事Kが出てきて喋り方で笑かしにかかってくる。

ショッカー・・・人類補完計画やん。てかルリ子が完全に綾波レイやん!!

サプライズの二人は全然予想できたとして長澤まさみが出てきた。
大切な何かを捨てて。

そして・・・おそらく最初のサイクロン号の変形とライダーキックでエネルギー(予算)を使い果たしてしまったのだろう。

いつのまにかCGがあの「キューティーハニー」クオリティになっている。

佐藤江梨子の下着姿が劇中一番の見せ場だったあれだ。

これはネットが荒れるのが俺でもわかる。気づけば半笑いだった。

仮面ライダー2号がカッコいい。
でも・・・ソロキャンプ道具を一式用意している上に浜辺美波に臭いと言われてスーツを洗濯している1号が俺を笑わせにかかってくる。

これは2016年の「仮面ライダー1号」を凌ぐぞ!!ある意味で!!

もうこのまま「BLACK SUN」ばりに地獄大使か死神博士あたりが「あの頃は良かったよな~!!」って泣いてくれ!!と思っていたら

あれ!?ビデオレターいいなぁ・・・池松壮亮っていい俳優だな・・・・・俺感動してる!?
ライダー男泣きに体が熱くなるが、「AVP2 エイリアンズvsプレデター」の比じゃないレベルで画面が暗い!!何も見えん!!

せっかくのショッカーライダー達も目しか見えない!!

結果、落ち着きを取り戻した。

そして、ラスボス戦。

「世界の中心で愛を叫ぶ」で共演した長澤まさみのサソリオーグを先ほどご覧になられたせいか森山未來がめっちゃグレてる!!

イナズマンとV3を足して割ったような姿で強そうなのだが、戦闘前に丁寧にマフラーを巻きながら「俺は仮面ライダー第0号!!」と名乗る。しかも赤ではなく白にしてさり気なく個性を主張している。

本郷猛も最高だが一文字隼人を演じる柄本佑もナイスガイだ!!

やはりダブルライダーはカッコいい!!ロジックなんて関係ない!!

地球の平和のために戦うライダーはカッコいい!!

激しい闘いでボロボロになった三人なので、もはや格闘というより体のつかみ合い。全然スタイリッシュではないがこれぞ真のヒーローだ。

本郷猛が秘策があると言う。まさかここでダブルライダーキックか!!

違う!!ライダー頭突きだ!!

そして・・・えっ・・・

ライダービデオレター!!

ウソだろ!!これが秘策!!無理だろう!!

「もうこれ以上何も失いたくないし・・・なんか色々ごめん」と静かに敗れる森山未來。

効いてる!!

ライダービデオレターがショッカーに勝った!!

冷静に振り返った結果、やっぱり劇中の7割くらいはどうかしているのだが、俺がライダービデオレターが決まったあたりで大粒の涙を流していたのは事実だ。

「キューティーハニー」クオリティのCG。取り乱す長澤まさみ。商店街を牛耳るハチオーグ。

アクションシーンだけでいえば、10数年前にリメイクされた「仮面ライダーThe First」と「The Next」の方がかなり良い。

どうしてこんなに好きになったのか。

仮面ライダーが本当にヒーローだったからだ。

まず1号。

家族を殺されても、社会になじめなくても、自分が改造人間にされて殺人兵器にされても、泣き言を言わなかった男が自分を頼ってくれた者の死に1人むせび泣く姿。

敵の事を気遣った結果自身を犠牲にする。
「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」を体現したハードボイルドな男だった。

そしてそれに応える2号。
軽い自由人に見えるが、いつだって心の余裕を失わない器の大きさ。
仲間のピンチに駆けつける最高に熱い男。

エンディングでヘルメットに刻まれた「02+01」・・・・粋過ぎるだろう。

俺が大粒の涙を流した理由がわかりつつある。

あの涙はロッキーやクリードを観た時に流した涙と限りなく近かった。

真の男に出会った時に流す感動の涙だ。

戦ったりバイクで疾走する仮面ライダーがカッコ良いのは当たり前だ。

本作は「ヒーローになるためにはどんな人物であるべきなのか」を濃く描いていた。

「シン・仮面ライダー」はロジックやらコンテンツとしての先入観やらを飛び越えて、脳でなく俺の心に直接飛び込んできた。

おもしろい映画はたくさんあるが、心を撃ち抜かれる映画との出会いは少ない。

これを書いた今も手に入れたフィギュアーツの仮面ライダーを手に取りながら「ありがとう、ライダー」と呟いている。

ネットが発達した世の中、無意識で先入観を持ってしまったり、有名な評論家の批判を読んで正直に好きと言えない事もあるだろう。

どうか、世間に流されず、自分の心に正直に映画を楽しんで欲しい。

俺ははっきりと言える。

俺は「シン・仮面ライダー」を愛している!!

映画として良いかどうかは知らんけど!!

と。