ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーが終わる。
思えば公開当時の状況は
・メジャーなキャラクターがいない(将来の展望で「マーベルVSカプコン3」でマーベル側の意向でロケットは出ていたがそれでもグッズが出るようなキャラではなかった。)
・(評価はされているといえど)監督は低予算ホラー映画のジェームズ・ガン。
・名作「キャプテン・アメリカ/ザ・ウィンター・ソルジャー」の次に公開というある意味最悪の順番
だった。
今は亡き映画秘宝の記事で高評価こそされているものの、「(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーって)誰だよ!!」と書かれていたし、正直期待している人は多くなかったと思うが、
映画とマッチした選曲の良さ、何より「ヒーロー」とは素直に言い難いどこか問題のある連中達の人情の暖かさが世界中の心を鷲掴みにした。
興行的に大成功してもジェームズ・ガンの「社会のはみ出し者達による人情物語」は変わることなく、実際、俺も1作目ではグルートの漢気に、2作目はヨンドゥの親心に毎回涙腺を決壊させられていた。
短編の「ホリデースペシャル」もゆるい気持ちで家でソファに寝そべって観ていたが家族にバレないようにしくしく泣いていた。
ここまで書いていて気付いたが「ハリウッドいち人情に厚い男」スタローンとジェームズ・ガンが仲良くなるのもわかる。
そんな愛すべき宇宙のはみ出し者達「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」もついに最終作。
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」が5月3日に公開された。
あらすじ
目の上のたんこぶだった雷神様は自分探しのためいなくなり平和になったが、ガモーラを失ったことが立ち直れないスターロード。
そんな時、ロケットが瀕死の重体に!!治療するにはロケットの実家に行かないといけない!!
実家で発覚するロケットの壮絶過ぎる過去!!
あれ?スタローンがガモーラを連れてきた!!
あっ、違う世界線のガモーラか!!びっくりした!!
とにかく救おうアライグマ!!
以上!!
「仲間を助けるために実家に突撃」というシンプル極まりない内容だ。
結論から言うとめちゃくちゃ泣いた。
名誉のために名前は伏せるが一緒に観た隣のおじさんも号泣していた。
ただ、この涙の意味は多岐に渡る。
- 1.悲しい涙
今回初めて明かされるロケットの過去。
背中の大きな手術跡や「好きでこんな姿にされてない!」とブチ切れることから何かしらつらい過去があることは想像できていたが、MCUダントツで1位と断言できるほど壮絶。
未見でこの記事を読んでいる方に注意喚起すると動物虐待や殺処分なニュアンスに近いものがあるので人によっては直視できないかもしれない。
フィクションとはいえ、俺はかなりつらかった。
MCUのヴィランはこれまでどこか愛嬌があったりしたが、本作のヴィランのハイ・エボリューショナリーは殺意が湧いた。
出来るだけ苦しみ抜いて死んで欲しいと思う程だった。
見ていてこんな気持ちになった。
悪役としてはそれだけ素晴らしいことだが、迫真の演技過ぎたのでダーティー・ハリーでスコルピオを演じたアンディ・ロビンソンのように家に殺害予告電話が来たりしない事を祈る。
普段は気性が荒く口も悪いが、仲間が死ぬと誰よりも涙し、ドラックスが1作目で「妻も娘も殺されて・・・」というと「甘ったれるな!!みんな大切な人を亡くしてる!他人を巻き込む言い訳にするな!!」と厳しく説教をしていたロケット。
映画の世界にはつらい過去のオーナーは星の数ほどいるが、次元が違う。
痛々しい姿の当時の仲間たちや過去を隠してきたロケットの事を考えると涙を流さずにはいられなかった。
- 2.カッコいい涙
過去にビーパワーの傑作基準で「横並びで歩く」をいうのを挙げたが、
本作のカッコよさは格別なのでどうか何かしらの賞を与えて欲しい。
世の中の傑作と言われている作品は悲しいからではなくカッコよすぎて泣かせにかかってくるものが存在する。
わかりやすい例だとエンドゲームのキャップの「アッセンブル」とかだ。
俺の精神状況は至って大丈夫だが銃撃戦で涙が出たのは初めてかもしれない。
そしてこれはネタバレになるがあるキャラクターが言う「俺はファッキン・ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーだ」というセリフはその前後も含めて感動的だ。
俺にもしもの事があったら墓に刻んで欲しい。
あっ、本作でグルート役が何故ヴィン・ディーゼルなのかようやく納得できた。
グルートがドミニク・トレットでした。
- 3.9年分の感謝の涙
「エンドゲーム」以降は「祭りの後」というか
正直に書くと以前ほどMCUに夢中じゃない。どこか冷めた自分がいた。
(「ノー・ウェイ・ホーム」はMCUではあるがMCUではないと思っている。あれは「スパイダーマン」の集大成なので。)
価格が下がっているマーベルのフィギュアを見て「世間も同じ気持ちなんだろうな」と思ったり。
「アイアンマン」公開時は若かった自分も今や30代後半の立派な中年。
永遠なんてない。これが一つの時代の終焉かと寂しくも納得していたりしていた。
本作はMCUに夢中だったあの気持ちを取り戻させてくれた。
本作の終盤。ひとしきり本編が終わった後で本シリーズ全体に対しての送別会が開催される。
どれも感動的だがきちんとシュールなオチがつくのでギリギリのところで涙が引っ込む。
客の感情を爆発させないためか、単純にいやがらせなのかわからないが、ジェームズ・ガンが意図的にそういう作りにしているのだろう。
揺さぶられ過ぎて泣いているのか笑っているのかよくわからない精神状態で「ガーディアンズの連中なんだ。最後は笑って彼らを送り出さないと」と覚悟した矢先
流れるあの曲!!
フラッシュバックする9年間の思い出。
1作目公開時は新婚旅行でラスベガス、ロサンゼルスに行っており、至るところにグッズが並んでいた。
後になってスターロードのフィギュアが欲しくなったけど、プレミアがついて高い。最終的に友達に頼んで譲ってもらった。
2作目の公開直後に初めてのマイカーを買った。中古のボロボロの軽自動車でカセットデッキがついていた。Awesome Mix Vol.2のカセットを購入しリピートしていた。
2017年当時でもありえないくらい悪い音質のスピーカーで夫婦で「Brandy」を鼻歌でカート・ラッセルのように口ずさんでいた。
最後の最後で初めて連中に出会ったあの日を思い出させる。
「ジェームズ・ガンの野郎!!それは反則だぞ!!」と心の中で絶叫しながら大号泣した。
エンドゲームの「アイアンマン」の時に感じた「俺のヒーローよ、ありがとう」的な気持ちとは違う。
どちらかというと学生時代の卒業前の飲み会のような、散々バカやったはずなのに早朝にみんな泣いてるあの感じ。
あいつらバカだったけど、最高に楽しかった。
終わった時に気づく「青春」
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーは「映画の中にいる友達」だった。
最高の送別会でした。9年間ありがとう。
【追記】
・現実の卒業は割と「あの涙は何だったんだろう」ってくらいすぐに再会するものなので、近いうちに彼らの新作が出てくると思って
待っておきます。
・流し見で良いので過去作は観ておいてください。ガーディアンズ愛が深ければ深い程楽しめるので。
・絶対泣かないキャラクターの涙とかスタローンとか音楽とか書きたいところがいっぱいある。しばらく立ったらネタバレ全開で書こうかな。