カーレースに熱中するストリートの若者たちを描いた1作目から早22年。
4作目「ワイルド・スピードMAX」から「車と元気があればなんでもできる」路線に変貌、
ヴィン・ディーゼル扮するドミニク・トレットの「俺に友達はいない。ファミリーだけだ」論に感銘を受けた者は敵味方問わず次々と仲間となり、ファミリーは大企業のように吸収合併を繰り返していった。
前作で壮絶な殺し合いをしたキャラクターが続編では味方。
バーベキューに出席しているのは日常茶飯事だ。
ファミリーに入れば超人的な能力を得るらしく、もともと地元の車屋だったテズはハッキングもこなすしどう見ても死んでいたハン(サン・カン)は生きていた。
業界でもファンが多いらしく大御所ヘレン・ミレンだけでなく、ブリー・ラーソンは5年自らオファーし続けていたらしい。
「ケンカを通してマブダチ」「地元の仲間を大切にする」ドムの考えは映画ファンのみならず、やんちゃな皆様からも絶大な支持を獲得し、新作が公開される度に映画館にはヤンキーが押し寄せる。(そして観賞マナーを巡り争いが生まれる)
我が家のドムもワイスピのドムから由来している。
劇中、人望の厚いドムだが、シリーズを通して振り返ると割と単独行動を好むし、(事情はあれど)仲間を裏切ったこともある。
戦う理由も彼女>仲間であることも多々あった。
(特にドムの異性関係についてはワイスピファンの間ではタブーな話題となっている。)
心に残るようなセリフを言うキャラクターでもないので「何故こんなに年中タンクトップ野郎の事が好きなのか」と考えてみた。
リーダーだが、仕切りたがりではなく、バーベキューでも食前の祈りこそするが、しばらくすれば一人でガレージに行って車いじりをしている。
口数も少なく普段はボソボソ話すので俺のような人間も惹かれるものがある。
余談だが、ドムがもっと陽気でバーベキューでもハイテンションだったら受け付けてなかったと思う。
そんなワイスピも(スピンオフのスーパーコンボ含めて)11作目。
「ワイルド・スピード/ファイヤーブースト」が公開された。
公開から1週間してから観たが映画館には映画オタクっぽい年配の方や高校生だけでなく、会社帰りのスーツカップル、男女ともに金髪のヤンキーカップル。
二人ともカーゴパンツにワークシャツの明らかに昔はやんちゃだった夫婦などワイスピの新作を鑑賞するに万全の客層だった。
あらすじ
5作目「ワイルド・スピード MEGA MAX」で倒した麻薬王エルナン・レイエスに息子ダンテ(ジェイソン・モモア)がいた!!
当時、誰にも気づかれずドムに車ごと海に落とされていたダンテは父親も金も失い復讐に燃えている。
ファミリー皆殺しに向けてバチカン市国めがけて中性子爆弾鉄球を放つダンテ。
ドムの気合と根性で奇跡的に死者は0人(中性子爆弾が爆発したのに!!)だったがダンテの復讐は続く。
時を同じくしてノーバディ不在の政府の秘密機関が重大な問題にようやく気づいていた。
「ドムにかかわる人間は皆ファミリーになる。どいつもこいつもドムに甘すぎ!!
あんな連中、車とバーべキュー好きのカルトやん!!」と。
今年も世界を股にかけたケンカ祭りが始まった!!
映画という言葉ではカテゴライズできない何かだった。
「ドムを甘やかし過ぎている。」という誰もが感じていた疑問に政府がやっと気づいてくれたのは大きな前進だが、やっぱり誰一人正気じゃない。
ドムは小さな息子リトルB相手に路上でドリフトの教習中。(やっぱりこの世界はドムに甘い。捕まえろよ!!)
劇中終盤では「実技試験だ!!」と言って息子を車から車に飛び乗らせていた。
モモアはシャツにボタンがあることを知らないらしく、隙だらけの胸元をちらつかせながらギャルのようにキャピキャピ騒ぐ。(こんなに濃い奴なのにMEGAMAXの時に気づかないわけないだろう!!)
サイファー(シャリーズ・セロン)はさすがに前科が多すぎたのでドムから前代未聞のファミリー入り保留となったが、レティ(ミシェル・ロドリゲス)と殴り合って打ち解けていた。
ステイサムに至ってはハンが訪ねた瞬間「死者が来るときは復讐だけだ!!」と話を聞かずに逆ギレして殴りかかるわ、母親が危ないと聞きカバンいっぱいに武器を詰め込んだものの、部屋着のパーカーのままで出ていった。あわてんぼう過ぎる。
(母親はご存知の通りヘレン・ミレンだ。ゆっくり向かっても大丈夫だ)
肝心の車もすっかり車であることをド忘れして爆風よりも早く走り、ヘリに引っ張られても負けず、パラシュートなしで離陸は当然といった様子だった。
観ていて目の前で起こっていることが全く理解できないことが何度もあったし、「なんでもファミリーと言えば解決すると思うな!!いい加減にしろ!!」と思ったことも事実だ。
なのに観賞後とても幸せな気持ちだった。
自然と笑顔になっている。1週間の仕事で疲れているはずなのに足取りは軽いし、普段は残すポップコーンも完食していた。
俺だけじゃない、ヤンキーもカップルも、オタクも、おじいさんもみんな楽しそうな顔して帰っている。多様な人々がみんな幸せになっている。
「映画の力」みたいな言葉を見ると普段は反吐がでるが、ワイスピには事実として力がある。
素晴らしい映画に触れると人生は旅や恋愛以上の経験を得るという。
ワイスピで学んだ。
家族や仲間を大切にしよう
勝負はレースで決めよう
納得するまで殴りあおう
どれだけ揉めても最後はバーベキューに誘おう。
で人生を変えてみよう。(責任は一切負いません)
以下追記
・個人的にはジョン・シナ演じるジェイコムが良かった。前作のラストで和解しドムの息子リトルBのボディガードを担当。
リトルBを子供扱いせず兄弟のように一緒に遊び、さりげなく父親(ドム)の事は褒めて株を上げる。
キャノン付きの車や小さな飛行機と子供が憧れる乗り物も所有。盆と正月に必ず会いたい最高の親戚だった。
・自然の摂理を超越した怒涛の展開に一緒に観に行った友達が「せめてエレーナだけはどうか成仏していて欲しい」と遠い目をして呟いていた。
・この調子だと続編が車で地球に落下してくる隕石の1つや2つを止める展開になっても驚かないが、きっと俺の想像を超えてくれるはず。