ゴジラ-1.0公開記念企画「ゴジラ-2.0 第1回「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」」

いよいよ、公開が11月3日に迫った「ゴジラ-1.0」

我々ビーパワーも小学生の頃に平成VSシリーズで育ち今に至るので、ゴジラには恩がある。
何か企画しようと話し合ってました。

いつものようにぼんやりとした話が続く中で決まった企画はこちら!!

ゴジラ-1.0公開記念企画「ゴジラ-2.0」

69年の長い歴史を持つゴジラ作品だけに毎日誰かが語っているような人気作もあれば、そうではない作品もある。

評価は厳しいが、まだネタにされやすく一定の根強いファンがいる「ゴジラ(1998)」「ゴジラファイナルウォーズ」あたりはまだ良い方。

誰もが「全力で観なかった事にしている。」「決して取り上げない」作品に我々がしっかり向き合おうではないかという事で打ち合わせの結果決めた2作をチョイス。

第1回はこちら

「ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃」

少年の現実と夢が交錯する作品で我々ビーパワー的に「インセプションの先駆け」「ノーランに多大な影響を与えたゴジラ」と評している作品だが、実際のところ我々も子供の頃から30年近く観ていなかった。

幼い頃に見たので細かくは覚えていないが「そんなにだった」という記憶だけは明確な本作。

公開は今から54年前(!?)の1969年12月20日

アポロ11号が月面着陸
ウッドストックフェスティバル開催
ビートルズが「アビーロード」を発表

ジミ・ヘンドリックスもまだご存命と明るいニュースが多かった年。

オープニングから陽気な「怪獣マーチ」

ゴー!ゴー! 123 3456
345678 ギャー!!
怪獣サマのお通りだ
カッコよくなんでもブッ飛ばせ!

と景気の良い歌詞と裏腹に映し出される黒い煙を吐き出す工場地帯

日本はというと高度経済成長の真っ只中。GNPも世界2位になった裏側で公害問題が深刻だった。

東映チャンピオンまつり(同時上映は「巨人の星」と「コント55号」)に組み込まれ、すっかり子供の人気者だったゴジラだったが1954年のデビューから一貫して世の中を殴りつける姿勢は変わらないのであった。

見るからに有毒そうな景色を反映するかのように怪獣マーチも
「ごめんよかんべん、俺たちも生きて行くのは厳しいさ」
「メガトンスモッグ、排気ガス これが本当の怪獣だ!」
とメッセージ性に溢れた暗い歌詞へと変貌していく。

当時、子供と一緒に見に来た親を正座させるようなオープニングだ。

主人公の三木一郎君も両親が共働きでカギっ子という当時の世相を反映したような子供。

気が弱く、ガバラというあだ名のガキがリーダーのグループにいじめられがちな一郎君だが、今回観返してみて発見したが、来ているジャケットがバラクータ。今でも新品なら数万円する代物だが、当時は1ドル360円。

てめー!!思いっきり裕福じゃねぇか!!ハッ倒すぞ!!
と団地住まいとはいえ、ファッションがハイブランドな一郎君に軽く怒りを覚えたのだった。

一郎君の放課後は親のいない家で一人で機械いじりと空想にふけること。

となりに住んでいるおじさんが死神博士でお馴染みの天本英世。

自称「おもちゃコンサルタント」という事で仕事については一切謎だが、家にはおもちゃがところせましと並び両親不在の一郎君におもちゃで遊ばせて面倒を見るだけでなく、晩御飯にすき焼きをごちそうする最高のおじさんだ。

天本英世がイケオジ過ぎるせいか、すき焼きも一切遠慮せず肉だけを食う一郎君に対して
さらにイラっとするわけだが、本作の主人公は一郎君。

一郎君が空想にふけるか寝落ちすることで怪獣島にアクセスすることが出来るのだ。

オール怪獣大進撃のタイトルの通りゴジラのみならず多数怪獣が出てくるのだが、
何故かキングギドラ、モスラ、ラドンのスター怪獣は登場せず。

本作新登場の怪獣であるガバラ以外はイマイチ華のないメンバーで固められている。

さらに「南海の大決闘(1966年)」「ゴジラの息子(1967年)」「怪獣総進撃(1968年)」の
使いまわ・・・いや、総集編のような内容のためシーンごとにゴジラの顔が変わるという由々しき事態が発生している。

怪獣島で穴にハマった一郎君を助けるのは、なんとミニラ。

本作のミニラは必要に応じて一郎君くらいの身長になったり、一郎君の話相手になったり、普段いじめられているガバラに戦いを挑んだり三面六臂の活躍を見せる。

現実パートに戻るとおそらく公開前年に起きた3億円事件がモデルであろう、5,000万円強奪犯が逃走中。

なんと一郎君が誘拐されてしまう。

絶体絶命の一郎君が取った行動は・・・現実逃避!!。

再度空想力で怪獣島にアクセスするとミニラがゴジラにスパルタ指導を受け、放射火炎の練習中だった。

ゴジラから自立するように指導された結果。ボロボロになりながらもガバラに一矢報いる事に成功。
弱虫だったミニラが立派に戦う。息子の成長に喜ぶゴジラ。

ここまでは美しい話だが、ガバラに嚙みつかれたとたん、ゴジラの怪獣王スイッチがON。
ガバラは劇中の様子からおそらくミニラと同年代であろう子供の怪獣みたいだが、
息子の目の前でガバラを投げ飛ばすわ、腹を何度も踏みつけるわでボコボコにするゴジラ。


豹変した親父に若干ドン引きするミニラだったがどさくさに紛れて自分もガメラの顔面を思いっきり蹴飛ばすのだった。

自分と同じような気弱な性格でいじめられながらも根性を見せたミニラ。

ミニラの心意気に魅せられた一郎君は覚醒。
強盗二人相手に廃墟で大立ち回り、落とし穴で下の階に落としたり、消火器をまき散らし、強盗達を攻撃。
強盗が弱り切った頃に警察が到着。見事逮捕の立役者となるのだった。

精神的に強く成長した一郎君はもう空想に逃げない。いじめっ子ガバラを腕力で叩きのめし
その場にいた何の罪もないペンキ屋さんにいたずらを仕掛ける脚立から落下させるヤンチャっぷりを発揮。

もっともペンキ屋さんが背中から地面に落下した上に全身ペンキまみれになるあたり、子供のいたずらで済まされないほど悪質なのだが何故か周りから認められている一郎君。

一郎君という新たなモンスターが誕生したところでエンディングとなる。

友達も作れず空想の世界に逃げがちだった少年がミニラとの出会いを通じ成長する。

子供の頃に見た時はパッとしなかった本作だが、子供むけ映画の体裁を保ちながら
環境問題を痛烈に批判。

さらには「ゴジラもいいけど、現実をしっかり生きろ。頑張れ!」
という姿勢は「レディプレイヤーワン」「君たちはどう生きるか」にも影響を与えたに違いない。

凝った作りの人間パートに対して特撮パートが過去作の使いまわしという点も製作陣からの我々に対するビンタなのかもしれない。

本作のMVPはゴジラでもミニラでも一郎君でもなく天本英世演じる近所のおじさんだ。

両親の留守中もしっかり見守りながらも、一郎君を決して子供扱いしない。

ラストで強盗逮捕の功労者という事で記者会見を受ける一郎君が「ミニラと一緒にいた」と回答し困惑する記者。

記者たちに対して「大人の世界に神様がいるように子供の世界にミニラがいたっておかしくないでしょ?」というものわかりの良さ。

竹ノ内豊や西島秀俊でもたどり着けないイケオジの頂に君臨する。

俺も近所のガキにすき焼きをご馳走するようなオジサンになれるよう努力したい。

いかがだったでしょうか?ゴジラ-2.0 第1回。

初代ゴジラやシン・ゴジラも良いけど「オール怪獣大進撃」も良いぞ!!

おそらく「ゴジラ-1.0」を鑑賞する上で全く参考にはならないだろうが
第2回目もあるぞ!!次回はあの作品だ!!読め!!