「この映画の2時間はただの2時間じゃない。俺たちのこれまでの映画人生の集大成なんだ。」
13年前、「エクスペンダブルズ」1作目を観た後の居酒屋で俺は映画館のバイト時代の友達に向かって叫んでいた。
2010年当時、スタローンやステイサム、ましてやシュワルツェネッガーやブルース・ウィリスが共演なんて想像も出来なかった。
「夢だけど夢じゃなかった」とはまさにエクスペンダブルズの事だった。
あの時初めて「これまでの人生、映画たくさん観てて良かったな。」と思ったものだ。
まだ25歳で若かったこともあり、大笑いしたり目頭を熱くしたりしながら気づけば終電を逃していた。
あれから続編が公開されては俺の心を震わせて、今日に至るまで何度も観ているし、よりシリーズを楽しめるように彼らの単独作もチェックし続けた。
「2」「3」と2年おきに公開されたが4作目である「ニューブラッド」はなんと9年ぶりだ。
俺もすっかり白髪が増えて中年になってしまったし、さすがに喋り過ぎて終電を逃す事はなくなったが、相変わらず敵の弾は全くあたらず、気が向いた時だけマグチェンジすれば良い
装弾数の概念がない銃に「エクスペンダブルズが帰ってきた」と大喜びした。
胃もたれもするようになってきたが、嬉しくなってネギ玉牛丼(大盛)で一人祝った。
海外での評価が高くないのは知っていたが、公開したら日本中が9年ぶりの筋肉火薬大博覧会にフィーバー!!と思っていたが、ネットの評判を見ると賛否の「否」が多い・・・。
どうして・・・
同じようなジャンルだとストリートレースが生きがいの不良たちの話から国際的テロ撲滅ファミリーに豹変した「ワイルドスピード」はシリーズを重ねるごとに道路交通法をど忘れしても、好意的に迎えられているのに。
(俺調べだが、ハリウッドでも俳優たちが「ワイスピのファミリーに入れて嬉しい」というコメントは見るが、エクスペンダブルズは「打診したが断られた」という話が多いように思う。)
確かにワイスピファミリーの方が明るいし彼女いる率も高い。
でもステイサムを見てくれ。エクスペンダブルズの方が笑ってるじゃないか!!
ほら!!
ワイスピのステイサムはファミリーのBBQをたまに出席しているくらいだが、エクスペンダブルズの飲み会は皆勤賞じゃないか!!
さらに言うと座っている席も真ん中じゃないか!!
取り乱しました。・・・真面目な意見だと80年代、90年代は遥か昔。
1~3作目の公開時ほど、往年のアクションスター勢ぞろいという事のインパクトが薄れているのかなと思うが、それでも新作「ニューブラッド」はしっかりエクスペンダブルズだった。
人に誇れるような人生は歩んでいないが、エクスペンダブルズシリーズを観た回数は人並み以上だと断言できる。
そんな「映画人生=エクスペンダブルズ」と自称している俺が「ニューブラッド」の見どころをしっかり語りたい。
※本記事はネタバレを満載に含みます。
既に鑑賞済、特に観たけどしっくりこなかった方向けです。
1.エクスペンダブルズにストーリーは不要
いきなり何を言ってるんだ!?と思われるだろうが、これはエクスペンダブルズだ。
普通の映画と同じものさしで観てはいけない。
普通の映画はストーリーのロジックや伏線回収を楽しむものだが、エクスペンダブルズの場合、軸は「カッコいいかカッコよくないか」だ。
エクスペンダブルズが乗っている防御力が全くなさそうなミニ四駆みたいな車。
ディズニーの蒸気船ウィリーみたいなボロ船で助けに向かうステイサムとトニー・ジャー
ガトリングガン付きのバイクで船上でレースを始めるステイサム。
どれもロジックは崩壊しているが、カッコいい。
ちなみにストーリーはないが、各キャストの見せ場がしっかりある編集の見事さは相変わらずだ。推しの出番が少なくて寂しい思いをしなくて良い。
2.世界が認める中二病
本作も「イケオジの中のイケオジ」アンディ・ガルシアや「ザ・レイド」以降すっかりハリウッドからひっぱりだこのイコ・ウワイスはもちろん、注目すべきはトニー・ジャーだ。
元エクスペンダブルズで今は隠遁しているというジャーさん。
「殺しをするほど人間でなくなる。だから俺は過去を封印した」と芝居じみて語る。
「我が魂、無限の輝き」とか言い出してもおかしくないくらいにこじらせていた。
そんなジャーさんはステイサム達を助けるために割とすぐに封印していた過去を開放。
「昔の自分に戻った」というジャーさんはターバンを巻いて目の周りを真っ黒に塗っていた。
わかりやすいなぁ!!
最初の観賞で爆笑してしまったのだから、二回目以降は「過去を開放したジャーさん」の姿を想像するだけでもっと楽しめるだろう。
ちなみにジャーさんは今年で48歳だ。
3.完璧な女性メンバー
3作目が公開された2014年と比べてかなりコンプライアンスが厳しくなった。
男子校ばりに女っ気のない消耗品軍団に飛び込んでセクハラの餌食にならないか。
もしくは意識し過ぎて、最近の映画にありがちな「屈強な女性」の押し売りになるのも嫌だと懸念していたがミーガン・フォックスとレヴィ・トランは素晴らしい人選だった。
まずミーガン・フォックスはリーダーとしてスタローンと比べて遥かにまともだった。
そして激しい銃撃戦でも1人だけCGかと思うくらいピカピカしていた。
それだけ戦闘が激化しても叶姉妹ばりにKeep On ゴージャス。
このファンタジーっぷり、チャック・ノリスを思い出した。
劇中でアンディ・ガルシアに「おまえがどうしてトップになった?騎乗位(On The Top)で勝ち取ったのか?」と世が世なら打ち首になってもおかしくないセクハラ発言を嚙まされるが反射的に「ぶっ殺すぞ」と回答。
良い女だ。
そしてレヴィ・トラン。「ワイルド・スピード スカイミッション」のスターターガール役で
観て以来好きだったのでエクスペンダブルズ入りは嬉しかった。
九節鞭での格闘はカッコよかったし、案の定、万年男子校のエクスペンダブルズの中に入って
よそよそしくなった男たちから言い寄られるが、秒で付き合える可能性を破壊。
とはいえトールロードと良い感じになりつつある二人。二人が結婚までシリーズを続けて欲しい。
4.最高のパンフレット。
毎回、読み応えのあるパンフレット。今回もギンティ小林さんを筆頭に秀逸なコメントに溢れた内容で、貪るように読んだ。
俺も「こんなにおもしろく映画について書きたいな」と思ってブログを始めたのを思い出した。
宣材用の写真ばっかり掲載して1000円取るような適当編集のパンフレットは見習って欲しい。
また、「ステイサムは大スターなのに気さくで「調子はどう?」と話しかけてくれたり、電話くれたりして感謝してる」と素敵なステイサムの人柄を暴露するイコ・ウワイスや
「同じゴールを目指して仲間たちとポジティブな経験が出来た」
と熱いコメントを残すアンディ・ガルシアなど映画をより楽しめるインタビューも満載だ。
5.いつも通りのスタローン
今回のバーニー・ロスが適当過ぎるというコメントを観たが、思い出して欲しい。
バーニーは昔から適当だ。
2作目の冒頭でブルース・ウィリス演じるチャーチから「独裁者の排除と依頼したのに国ごと壊滅させた。悪人といえど人を殺し過ぎ。男祭りもいい加減にしろ」と怒られていたが、めっちゃ眠そうに聞いていた。(もちろん話は聞いておらず、毎回、地球から国を一つ消す勢いで暴れてきた。)
なので、「核爆弾を爆発させてはいけない」という作戦なのに、自らの明確な意志で爆破。
空母が「ゴジラ-1.0」以上の爆発を起こしても、至って自然だ。
また、「後世に譲っていきたい」と言いながらもいつもど忘れしちゃうスタローンの事だ。
エクスペンダブルズ5ではまた真ん中で立っていると思う。
6.ジャンボ・シュリンプについて
本作最大の議論店について整理していこう。
バーニーが飲み屋で酔っ払って指相撲して賭けていた幸運の指輪を取られる。
↓
「一緒に取り返しに行きたい」と休み中のクリスマスを呼び出す。
↓
自分の代わりにクリスマスに居酒屋で殴りあいさせる。居酒屋破壊。自らも店内で発砲。
無事?に指輪を取り返す。この時点でバーニーが100悪い。
↓
自身の死を装うために輸送機に気絶していたジャンボ・シュリンプを乗せておいて輸送機ごと墜落させる。
↓
「あの死体は何だった?」と聞くクリスマスに「あれはジャンボ・シュリンプさ!!」と笑顔で答えるバーニー。
「ハハハ」と笑い合う二人。
ハハハじゃないよ!!
立派な殺人だよ!!
個人的には「エクスペンダブルズでもさすがに良くないよ!!」と大笑いした。
とはいえど本作は4作目。いわば4次会だ。
4次会というのはテンションより疲れが上回る。
お酒も飲みたくないし、胃が持たれない食べ物しか口に入らない。
ただ4次会が終了して始発の電車を待つまでの間に事件は起こりがちだ。
「誰と誰が実は付き合っている」とか「誰が会社を辞めるらしい」とか・・・。
目も覚めるような驚愕の事実を知ってお開きとなるのが世の常。
ジャンボ・シュリンプには申し訳ないが、彼の命の粗末さは4次会の締めくくりにぴったりだった。
新年早々好き勝手書いたが、いかがだっただろうか?
「あれ?もしかしたらエクスペンダブルズ ニューブラッドってめっちゃおもしろかったんじゃないの?」
「もう1回観てみようかな」
「1~3作目ももう一度観よう」と思ってくれたら嬉しい。
9年ぶりにエクスペンダブルズの新作を観て「いくつになってもバカでいいんじゃないか」と思った。
30歳も超えると、男女関係なく「落ち着かないと」という気持ちが生まれる。
他人に迷惑をかけるようなバカをやめるのは良いが、
落ち着くあまり「痛い」「くだらない」と冷ややかに笑ってしまう大人になってしまっていないだろうか。
映画鑑賞でも良いところよりつい雑なところが気になってしまったり。
エクスペンダブルズ達を見て欲しい。みんなとびっきりの笑顔で人を殺している。
彼/彼女らは若くても40歳を超えているしスタローンなんてもうすぐ80歳だがまるで放課後の中高生のように輝いている。
誰もが忘れてしまう大切な何かをエクスペンダブルズは持ち続けているように思う。
肉体は老化しても心まで老けこんではいけない。
「青春時代」は遠い昔の話じゃない。自ら遠ざけているだけだ。
終わらない放課後、生涯青春。
早くもう1回観に行きたい。
この記事に先行してビーパワーYoutubeでDIEsukeさんと語っています。
この収録を通して自分の中でエクスペンダブルズ ニューブラッドがよりしっくりきた
録音のミスでテイク1の大半が消えてしまっておりDIEsukeさんには迷惑をかけてしまったが
テイク1は否定はの意見に対して罵詈雑言が飛び交っている内容だったので残ってなくてよかったと思う。
ぴあさんでも本作について語らせていただいております。この度はありがとうございました。
ジェイソン・ステイサムを漢字1文字で表すと!? “ステイサム学会”に聞く、とにかくブレない男の魅力 – ぴあ映画 (pia.jp)