直撃!地獄拳
ドラゴンにはなれなかったかもしれない、しかし千葉ちゃんはサニーチバになった。
30年近く前だろうか…。
俺が小学生の頃。初めて「燃えよドラゴン」を観て、ドラゴンになるべく精を出していた頃だ。
「ブルース・リーの作品が少なすぎる。もっとドラゴンが観たい!!」
そんな自然な成り行きで父に他に何かないか聞いてみたところ、こんな回答が返ってきた。
「俺も昔同じ事を思ったけどブルース・リーを超えるものはなかった。
「燃えよドラゴン」が公開された後に日本だと千葉真一がたくさん映画を作ったんだけど…なんか変だった(笑)」
「戦国自衛隊は良かった」というフォローはあったものの子供心ながら父の「千葉真一についてはとりあえずおすすめはしない。」という親心は伝わった。
それから俺の中で千葉ちゃんは「海外でも人気のある変なおじさん」という情報からあまりアップデートしないまま月日が流れたわけだが、ふとしたきっかけ、というか”DIE”sukeさんからDVD借りた。で千葉ちゃんに正面から向き合うきっかけが出来た。
結果、俺は震えている。千葉ちゃんばりに。
俺は「直撃!地獄拳」についてみんなに紹介したい。
最近仕事やなんやかんやでまともに試写の案内も観れていない中で筆を取ります。
時は1974年、前年公開の「燃えよドラゴン」ブームに乗っかかる形で生まれた千葉ちゃん主演アクションの1本。
実際、海外でも評価の高い作品だが、これがすごい。
まず千葉ちゃんが演じる甲賀龍一の設定だが、実家が甲賀忍法宗家だが、「今の時代に忍法なんか絶対にいらん。」という理由で私立探偵をしている。
どうだこの設定!!ワクワクしてきただろ?
幼少時代の千葉ちゃんを子役時代の真田広之が演じている。
愚直に鍛錬を重ねてきたが、関節外しの練習で「もう無理!!俺の青春は灰色だ!!」とマジでうんざりして家出する。
忍術の練習ばかりの日々はもちろん、家が忍者屋敷なのでトラップだらけという事情を考慮すると千葉ちゃんがウンザリするのは納得できる。
そんな千葉ちゃんだが、国際麻薬組織を撲滅させるべく仲間と共に戦うのが本作のメインストーリー。
仲間も
はみ出しものの元刑事かつ日本拳法の達人である隼猛(はやぶさ たけし)。
性欲が強すぎる死刑囚かつ合気道の達人である桜一郎
と取り急ぎ達人であることは必須条件のナイスガイ達。
そんな彼らをセクシーな美女の恵美が取りまとめるのだから早くも画面が大渋滞だ。
隼猛については国際麻薬組織を追い込むために強引な捜査で部下を死なせた責任をとり辞職、部下の遺族への慰謝料を稼ぐために警察を退職。フリーの殺し屋となったという重い背景がある。
そんな隼猛の想いに心打たれる・・・わけでもなく
「そうは言われても、俺ら関係ないし」と乗り気でない千葉ちゃんたち。
うだうだ話あった結果、組織を叩き潰せば大金が入手できるという事で
実は探偵事務所の経営状態が悪い千葉ちゃんは金で合意。
成功すれば恵美にやらせてもらえるという事で桜も合意、チーム結成となる。
まずは片っ端から組織の殺し屋たちを一掃する千葉ちゃんたち。
何度もピンチになるが、その度に千葉ちゃんが忍者であることを思い出して、忍法を使って皆殺しにする。
次々と闇討ちされる事に頭を悩ませる国際麻薬組織の総支配人であるマリオ水原(あの津川雅彦!)
考えた結果、安岡力也他新たな刺客を雇う。
津川雅彦に怒られる安岡力也演じるローンウルフ。何故か片言の日本語で話す。
新たな刺客の中でも最も危険な男であるブレーザー西山。
リング上で5人殺し一度もダウンしたことがない元プロボクサー。他の刺客たちからも恐れられている。女に言い寄られてもクールに断る。
そんなブレーザー西山、組織に捕まりリンチにされる千葉ちゃんを見て「死んだようなやつをやるのは俺の性にあわねぇ」と組織に反旗を翻す。
演じるのが元・世界フェザー級チャンピオンの西城正三だけあって右ストレートがとんでもなく速い。
ブレーザー西山、一味違う男だ。と思った瞬間
「もういい」とマリオ水原にサーベルで切り付けられ敗北。
さっき殴った男達からリンチにされるだけでなく「ダウンしたことないって大口叩いてたよな」とマリオ水原には煽られ笑いものにされるブレーザー。
「龍一、忍法はいかなる困難に打ち勝つ。がんばれ」的な実家のありがたい言葉を思い出して覚醒した千葉ちゃんが駆けつけるも「おまえと勝負したかった」という言葉を残して絶命。
すごそうな奴感を振りまいていたが、あまり見せ場がないまま退場するブレーザー西山だった。
単身、戦う千葉ちゃんの元に隼猛が拳法の後輩である倉山田(倉田保昭)と駆けつける。
道場から破門をされる覚悟で先輩のためにひと肌脱ぐ倉山田。
戦闘態勢はばっちり、おまけに車も貸したナイスガイだが、隼猛の運転が荒すぎてどんどん不安になる。
「先輩、ローンが残ってるんですよ・・・」と話す倉山田。
この表情、「車のローンが残っているのに先輩が無茶な運転をする時の表情」として満点だ。
結果、敵のアジトに車ごと突っ込まれる。
とはいえ、敵のアジトで戦う倉山田。
キレのある回し蹴り、ハイキックの高さ、そしてバッキバキの筋肉。
数々のジェネリックブルース・リーを見てきたが本作の倉田保昭はマジですごい。最悪、倉田保昭の登場シーンだけでも観て欲しいくらいカッコいい。
ガンダムUCのバイアランカスタムばりに無双状態だったが、ふとした奇襲でやられる。
最後の力を振り絞って叫ぶ倉山田
「先輩!車の支払いたのんますよ!」
最後まで車のローンが心配なジャパニーズドラゴンだった。
千葉ちゃんも大ジャンプ!!さすが実家が忍者だ。
マリオ水原一味を追い詰めた千葉ちゃんの忍法は最高潮に。
来ていた鎖かたびらを脱いでヌンチャクのように振り回す
マイティーストライクフリーダム千葉ちゃん!!
鎖かたびらを振り回すスピードより顔の表情が変わるスピードの方が速い!!なんやねん!!
追い詰められたマリオ水原は「私を倒しても組織はなくならない」と言い残し自害。
「結局タダ働きじゃねーか」とぼやく千葉ちゃんに「さっき言ってたやん、組織はまだあるって。組織つぶしに行こうで」とやたらポジティブシンキングな隼。
「えーっまだ働かせる気?」とぼやく千葉ちゃん
完!!
えっ!!
30数年前に親父が言ってた意味はなんとなく理解できた。
めちゃくちゃブルース・リーを意識した千葉ちゃんだが、顔に動きが追い付いていない時がある。
鎖かたびらをヌンチャクのように振り回す時、表情が変わるスピードの方が速いシーンはさすがに一時停止してしまった。
短い時間の中で本編に無数に出てくる全く必要のないシーン。特に突然裸の女性が出てくる率が高い。
中でもアクシデントで裸の外国人の股を覗いてしまう千葉ちゃんの表情や、その後の「サンキュー」という言葉、
洗濯中に倉田保昭の車が突っ込み洗濯物どころか服まで奪われて何故か全裸になるお姉さん。
など、「Always3丁目の夕日」では描かれなかった「あの頃の昭和」が炸裂している。
確かに千葉ちゃんはドラゴンになれなかった。
しかし千葉ちゃんはJJサニーチバになった。
世界中に夢と希望を与え、世界中から愛された。
これが全てだ。
2回観終わっても話が全く頭に入ってこないが「すごいものを見た」という興奮が俺の体中を駆け巡っている。
千葉ちゃん主演アクションは無数にある。
新たな扉が開かれた気分だ。俺の千葉ちゃん探求の旅は始まったばかり。