メキシカン空手VS人食い虎『武闘拳 猛虎激殺!』

 

みなさん、この映画のポスターを見て欲しい。

まずタイトルである。

も…猛虎激殺!

修学旅行先の土産物屋に置いてあるキーホルダーでも見かけない物騒な文字が躍っている。

武闘拳は分からなくはない。

だが、その後に猛虎激殺!!

なんつーか…すげえタイトルだ!!猛虎激殺!!

事あるごとに何回も書きたい…そして声に出したい四文字熟語である。

 

そして必死な表情の倉田保昭先生と、豪快に腕へかじりつくデカい虎!

キャッチコピーは、虎か空手か。

その答えが、あるのか⁉︎

ここに⁉︎

 

まともな人や、映画好きと繋がりたいファック野郎は付き合ってられません!とスルーするかもしれん。

だが、俺のように育ち方を間違った奴は前のめりになるしかあるまいて!

…という訳で、今回は「武闘拳 猛虎激殺!」をご紹介しようと思います。

 

乾いた風が吹きすさぶ地、メキシコ。

そこに倉田先生はいた。

登場早々、民衆たちの面前で鶏二羽を手刀で〆る衝撃のパフォーマンスを披露!!

そう、倉田先生は南米で空手の武者修行を敢行した結果、独自のメキシカン空手を極めていたのだ!

有無を言わせない迫力にド肝を抜かれていると、『武闘拳 猛虎激殺!』とバカでかい赤文字が画面を埋めるのであった。

我々が呆気にとられているのを尻目に謎空間での演舞に合わせてキャストやスタッフ名がやはり赤文字で流れていく。

掴みとしてはバッチリだぜ!!

 

そんな倉田先生だったが、奇しくも早すぎたK-1的なイベントのオファーを受け、凱旋帰国。

「おまえ倉田だろ」と言いたくなるような雑な変装で出場するのであった。

これまたアイアンドラゴンという雑なリングネームからも察せるように、噛ませ犬で終わるはずであったが、闘魂に火がついた倉田先生は大ハッスル!!

北斗の拳ばりにテロップがバーン!と出る必殺技で空手界の滝和也ことチャンピオンの唐木から勝利をもぎ取るのであった。

周りが勝利に浮かれる中、倉田先生の鋭い瞳は一人の男を捉えていた。

日本の格闘技界を牛耳ろうとする吉羅本である。

見た目も態度も悪い吉羅本であったが、なんと彼は過去にトレジャーハンターだった倉田先生の父と兄を殺害した縁のダーティ空手家だったのだ。

それによって巨万の富を得た吉羅本は城(!?)を建設。

──その名もズバリ奇厳城!

どう見ても熱海城だが、まあ入口に看板がありますからね。

なにせ城の名前がナイスだし、観てるコチラも納得するしかない。

更には城だけに飽き足らず、騎馬民族拳法、カトマンズ拳法といった様々な武術の達人たちが警備。

もう名前と見た目の面白さだけでスカウトしたような気もしないではない。

そんな反省があったのか、最上階にはダメ押しのように最強の人食い虎も飼育!!

何を隠そう、最上階には吉羅本の権力を象徴する大量の金の延べ棒が山のように積み上がっていたのだ。

現在では積立NISAなんて国から推奨されているが笑止!!

真の漢は城を築いて最上階に重ねて置いておけ!

ついでに虎もね!!

セコい財テクなんかより、本作における吉羅本の姿勢から学ぶところは多い。

そんなわけで強力な武闘集団、そして最強のセキュリティ人食い虎を擁する吉羅本に敵はいないように思えた。

そう、メキシカン空手を極めた倉田先生以外は。

 倉田先生のライバルにしてアメリカで修行したサムライ(!?)後乗せサクサク状態で合流し、ダメ押しのように城のセコムを強化する吉羅本軍団。

この難攻不落の闇空手要塞を果たして倉田先生は攻略できるのか?

今、メキシコで極めた空手が熱海で炸裂するのだった。

 

 

主演は、ご存じ和製ドラゴンこと倉田保昭。

日本映画界に留まらず、当時イケイケだった香港映画界で修行した実績を持つ、まさに俳優であると同時に豪の者である。

日本に凱旋してからの初主演が本作なわけだが、人間相手ならまだしも、なんと虎との死闘が待っていた。

なんつーか無茶ぶりにもほどがあるだろ!

当時の東映のヤケクソさが伝わる話である。

普通であれば香港にトンボ帰りしても無理のない話だ。

だが、彼はやってのけた。

虎と生身で組んでみせた。

俺がリスペクトをこめて倉田先生と呼びたくなるのを本作を観れば理解して頂けるはずだ。

虎との死闘にばかり目が行くのも無理のない話だが、倉田先生の演技も初主演ということでブリバリに気合が入っているのも本作の見どころの一つだ。

例えばロッキー3のアポロばりに、自分が負かした矢吹治郎のヘナチョコになった精神をスパルタな姿勢で叩きなおす倉田先生。

結果、ツッパリの清水健太郎も交えプールで練習!

熱海合宿を経て、治郎さんは己の見失った空手を取り戻していく。

このブラザー精神溢れるシーンは必見だ。

あるいは潜入に何度も失敗しダメ押しのようにあの城には虎がいるのよ!」と説明され「虎!?」と返す倉田先生。

まあ、そうなるよね!リアクション!!となる百点満点の演技を魅せてくれる。

とはいえ、倉田先生の辞書に後退の二文字はない。

潜入にも関わらず、結果的に真っ白な道着で殴り込み!

コソコソするな!堂々と行け!しかも正面から!!

そんな倉田メッセージが見て取れる。

肉体言語を駆使して各階に控える強敵を蹴散らしていく倉田先生だが、服がボロボロになればなるほど反比例して不思議と戦闘力もアップしていく

人食い虎との死闘、そして宿敵吉羅本との因縁の勝負を経て、最終的に城は大炎上!

熱海城を破壊したのはキングコング、ゴジラ

…そして倉田先生だ!

…と観る者に強烈なインパクトを与えてくれるだろう。

長らくソフト化されていなかったらしいが、2012年には待望の円盤化を果たし、今現在ではAmazonプライムの東映オンデマンドも視聴が可能となった。

ある意味では本家(?)の『死亡遊戯』を超えている。

何処が⁉︎と問われたら、そりゃあアンタ…虎とかさ!

面白さのベクトルは違うかもしれんが、勝るとも劣らない本作。

空手も含め、回避不可能な映像の倉田コンボが炸裂している。

いずれにせよ、実に空手ドリームに溢れた映画ですよ!!