ロジックはそこらに置いといて、批評家や考察好きオタクをひたすら強烈な絵力で撲殺するような作品を放ってきたDC。
全作品に共通して
「屁のつっぱりはいらんですよ」
「心に愛がなければスーパーヒーローじゃない」
というゆでたまご先生の教えを貫いているので我々ビーパワーハードボイルドとしては注目のシリーズだ。
根暗な金持ちバットマン
銀河最強かつ彼女優先のスーパーマン
ハードコアなツンデレのアクアマン
地球の風紀委員長ワンダーウーマン
などナイスガイ及びナイスレディを多数輩出してきたDCにこの度新たなヒーローであるシャザムが入学した!!
「見た目は大人中身は子供」というリバース名探偵コナンスタイル、
罰ゲームのようなダサい衣装。
東野幸治よりも固そうなヘアスタイル。
これは観たい!!と俺達ビーパワーハードボイルドが鼻息を荒くしていたら、ありがたいことに今回も試写会で観させて頂きました。
アクアマンに続き今度も試写に案内してもらった我々ビーパワーだが、未だにDCアンバサダー入会の案内はない。
「「ジョーカー」日本公開決まったらまた試写に誘いますね!!」とまで言って頂いたにも関わらずアンバサダーのアの字もなかった!!
試しにTwitterでアンケートを取ったところ、「顔を洗って出直して来い」及び「なれる訳ねぇだろ、死ね!!」という意見が過半数を占めていた。
そういう事なんだろう!!俺達もそれが正しい気がする!!
DCアンバサダーの集まりがあれば、そのうちドクターマンハッタンのコスプレで飛び込んでやる!!
あらすじ
幼い頃、母と別れて孤児になったビリー・バットソン。
ハード過ぎる生い立ちから一切人を信じる事ができず、今まで何度も養家からエスケープしてきた孤独な一匹狼だ。
新たに引き取った家は両親自体が元孤児でそこには
調子乗りのヒーローオタク、キレイなお姉さん、メガネゲーマー、人懐っこい妹、サイレンスデブと女性陣と比較して男がポンコツばかりの愉快な家だった。
「なんつーか、この温かいノリキツイわ」と思っていたビリーだが、ある日、Pファンクの総帥ジョージ・クリントンそっくりの 謎の魔術師に拉致られる。
よくわからないうちに魔術師から「合格!!おまえ後継者」と言われたビリーは半ば強制的にスーパーパワーを授けられ、東野幸治風ヘアスタイルのマジカルマッチョに変身できるようになる。
突然マジカルマッチョにされて家にも帰れない、ドン引きしていたビリーだったが、唯一話が通じそうなヒーローオタクのフレディにだけ状況を説明。
普通の人なら落ち着いて警察に電話するが、フレディは「なんていうか、素敵やん」という事で自らパートナーに立候補。(ちなみにフレディはスーパーマンに当たった銃弾やバットラングのレプリカを持っていたりするので他のDC作品と同じ世界観だという事がわかる。)
二人でスーパーパワーを実験してはYoutubeに投稿。シャザムになり大人の姿になれるという事でストリップバーに突撃するなど、世界を救うなんて事はなく、ひたすら力の無駄遣いをして楽しむようになった。
しかしその一方で魔術師が、後継者を見つけるまでの長い間、少年少女を拉致に近い抜き打ち面接を実施しては少しでも煩悩があると「帰れ!!」と乱暴に放り出すので「いきなり変なところに連れて行かれて、いきなりDisられた」と心に傷を追う子供達が多発するという事件になっていた。
その中の一人がドクター・シヴァナ。金はあるが全く愛されずに育った彼は
抜き打ち面接不合格で更に心に傷を負い悪の科学者になっていた。
ビリーはスーパーパワーを自分だけのものと付け上がってしまったビリーとフレデイの間に亀裂が入るようになる。
ビリーのシャザムの無駄遣いはエスカレートし、学校をさぼってはロッキー3のテーマ「Eye Of The Tiger」にあわせて手から稲妻を放つ大道芸人として小銭を稼いでいた。
やがてフレディをはじめ家族にもドクターシヴァナの魔の手が迫る。
某マーベルの「大いなる力は大いなる責任が伴う」をど忘れしてシャザムになってはスーパーパワーで遊ぶ自由さ、ドクターシヴァナ演じるマーク・ストロングが知性の神そっくりと今回もゆでたまご先生リスペクトは忘れていなかったが、
これまでのDCとは異なる感情になった。
予告では伏せられているが主人公ビリーの生い立ちがなかなか壮絶だ。
幼い頃に親に捨てられて以来、心を閉ざし里親を転々としている。
劇中で母と再会するシーンがあるのだが、これが精神的にかなり滅入る。
フレディも普段は陽気で口の悪いオタクだが、生まれつき足が不自由。
ビリーとケンカした時「(スーパーパワーを得て有名人にもなった)おまえが正直羨ましいよ!!俺だってこんな体に生まれてなきゃよかったのにと思う」と本音をぶちまけるシーンが切ない。
親に捨てられる子供、愛を知らずに育つ、障害を持っている事の悩み、いじめ。
これが現実だろう。なかなか映画やテレビで映し出されない残酷な社会を描いたシーンの数々にぶん殴られたような気分になる。
しかしそれを踏まえた上で、 「それはそれ!これはこれ!大丈夫!!」と力強いメッセージをキメてくれる。
天涯孤独のビリーがシャザムになって得た物。それはスーパーパワー以上に「家族の絆」だった。
フレディをはじめ里親やルームメイトがピンチになった時、はじめてヒーローとして自覚を持つ。
人を信じれなかったビリーが初めて知る家族の暖かさ、守るべき者を得て成長していくシーンは今までのDCにはない。
思えばバットマンは金持ち、スーパーマン、ワンダーウーマンは元から超人、アクアマンは比較的幸せな家庭に育った。
しかしシャザムになるビリーは人生がハードモードである。ハリウッドが莫大な予算をかけて作った映画であることに間違いないが、四捨五入で「万引き家族」だ。ゆでたまごイズムと同じくらい是枝イズムの血も流れている。
ビリー程でないにしろ、自分自身が嫌な人はたくさんいるだろう。
顔がブサイク、太っている、頭が悪い、仕事や学校でミスばかりしている、恋愛経験がない、居場所がない・・・
そんな苦しんでいる人たちにシャザムは夢と希望を与えてくれる。
舞台がフィラデルフィアなだけにロッキーの話が自然と出てくるのだが、ビリーとフレディがロッキーが駆け上がった階段に腰掛けてお菓子を食べながらバカ話するシーンが個人的に大好き。
今まで普通の人よりハードな人生を歩んでいた二人が人生を楽しんでいるだけにスタローンとはまた違う意味で胸が熱くなる。
つらくなった時「シャザム」と声に出してみよう、きっと強くなれるはず。
ヒーロー映画史上最も優しさに包まれた作品。小さな子供こそ観て欲しい。
おっさんの俺達も心が温まりました。