※熱心なマーベルファン及びポリティカルコレクトネスに敏感な方は気分を害する文章があるのでご注意ください。
映画業界最大手の中でも今や稼ぎ頭のマーベル。
映画でもドラマでも確実におもしろい作品を作るのはすごい。
「アイアンマン」からずっと追いかけているが明確に「失敗した」という作品はない。
ただ、正直に言うとここ最近のマーベル作品を観て熱が下がっていた。
近年の風潮に加えて「ブラックパンサー」の大成功が一因のような気もするが、「エンターテイメント」以外の部分を意識し過ぎているように思えた。
人種差別を強く打ち出した「ファルコン&ウィンターソルジャー」やロキをバイセクシャルと明言したり、「ブラック・ウィドウ」に至っては色仕掛けなど任務のためなら手段を選ばなかったはずのブラック・ウィドウに家族愛の要素を追加したり。
(そのくせ劇中でスカーレット・ヨハンソンのおしりを強調したカメラワークや着替えシーンがあったのが気になった。)
配慮することは悪くはないことだけど、どこに向かって作っているのかと思うこともあった。
思い返せば、「アイアンマン」も「アベンジャーズ」も理屈不要のカッコよさにときめいた。
強くてキャラも立ちまくったヒーローが悪をぶっ飛ばす。
思春期の少年少女が見たら人生を踏み外す危険性すらある「カッコよさ」
「シャン・チー/テン・リングスの伝説」は公開前から「今度はアジア人の活躍応援ムービーか・・・」と割と冷めていたのだが、マーベルには土下座して謝りたい。
もし中高生の時に見ていたら、確実に光る輪っかを腕につけて登校していただろう。
1年中そでが赤いスタジャンを着て、公園でカンフーの練習に励んで黒歴史を大量生産していたはずだ。
おっさんの今になって観たからある意味助かったのかもしれないが、今こうしている間も俺の中のシャン・チーが目覚めそうになっている。
あらすじ
MCUお馴染みの犯罪組織「テン・リングス」の真のボスであるウェンウーを父に持ち最強の暗殺者として鍛え上げられたシャン・チー(この設定だけで白米3杯はいける)
組織の後継者間違いなしの半生を歩んでいたが、「こんな人生無理」ということで自らの力を封印し、サンフランシスコでホテルマンとして平凡に暮らしていたが、ある日ドラゴンのイラストが描かれたはがきが届く。
通勤途中に襲われたがぶっちぎりの戦闘力で回避。
父親との決着をつけるべくマカオに行ったら妹は格闘賭博の元締めというキャリアを絶賛爆走中!!再開早々に拳を交わす兄妹。
山奥にある巨大な実家、叔母を筆頭に何もかもが規格外の母の故郷。
手にしたものに強大な力を与えるお父さん愛用の伝説の腕輪「テン・リングス」
碇ゲンドウばりに母への愛が暴走するお父さん、トークも格闘センスもばっちりの友達以上恋人未満のガールフレンド
「カンフーハッスル」以上にありえないバトルはやがてドラゴンも魔物も召喚!!
地球の常識を遥かに超越した家庭問題を解決することができるのか!?

新たにMCU入りしたアジア系ヒーローはカッコいいの向こう側にいた。
驚いたのがシャン・チーを演じるシム・リウのスター性。
年配の方々がブルース・リーが世に出て来たときの衝撃を語るたびに「自分の世代ではそんなカンフースターは出てこないだろうな」とリアルタイムで体験したことに羨ましく感じたが、ついに出て来た。
未だにブルース・リーのカリスマ性は絶大で毎年ヌンチャクや黄色いオニツカタイガーを手に入れ大やけどする少年たちを生み出しているが、シム・リウが「シャン・チー」で見せた衝撃は「燃えよドラゴン」に匹敵するレベルだと思う。
おまけにSNSでの彼を見ているとシャン・チーグッズの上にフィギュアを座らせてニヤニヤしている。
最初よくいるマーベルファンの投稿かと思ったがまさかの本人だった。
自分がシャン・チーであることを忘れているのではないかと心配になるほどただのファンの顔になっていた。
(シム・リウだけでなく本作のキャストは軒並みSNSの投稿がおもしろいのでフォロー必須)
これまでほぼ無名だった彼だが穏やかな佇まいと派手なアクション、飾らなさすぎる素顔と
パーフェクト。すごい俳優がいたもんだ。
稀代のスターを支えるキャストもすごい。
父ウェンウーがトニー・レオン、叔母イン・ナンがミシェル・ヨーと香港の重鎮!!
もともとアンニュイな表情には定評があったトニー・レオンだが、年を取ってさらに磨きがかかり子犬のような瞳と大人の色気が共存、ミシェル・ヨーは「007/トゥモロー・ネバーダイ」
で見せたリアル峰不二子はそのままに母性も追加と生物兵器のような破壊力だった。
二人とも来年還暦なのだが若いころより色気を放っている。何を食って生活すればあんなことになるのか。
トニー・レオンおすすめ作。ジョン・ウーアクション市場最も火薬量が多い。このチョウ・ユンファとの共演をきっかけにブレイク。キムタクでいう「あすなろ白書」みたいなもんです。
ミシェル・ヨーおすすめ作。マックス・チャンとの人間離れしたお酒のすすめあいバトルが勃発。ヴィランはドラックス役のデイブ・バウティスタ。
ハスキーな声と抜群の返しが最高のケイティ役のオークワフィナはラッパーからキャリアをはじめて大作に次々と出演、俺が号泣した「フェアウェル」では明るいキャラを封印してゴールデングローブ主演女優賞を獲得。
順調にウィル・スミスと同じスター街道を歩んでいる。
泣き過ぎてグッタリしました。「フェアウェル」 – Be Power Hard Boiled Z (bphbxxx.com)
裏社会で活躍し過ぎている妹シャーリン役のメンガー・チャンもドニー・イェンばりの打撃重めのカンフーに加えてオフショットのよくいるマーベルファンのような様子からシム・リウと同じ匂いがする。ほんとすごいのを発掘したな。
本物のマンダリン(ウェンウー)登場にともない「アイアンマン3」でうんこの臭さを世界中にアピールした偽マンダリン(ベン・キングスレー)も帰還!!
今回は毛むくじゃらの生物モーリス同伴で持ち前の薄っぺらさに磨きがかかっていた。
偽マンダリンだけでなくエクストリミス兵やアボミネーションなどコアすぎる再登場も本作の魅力だ。
そして母リー役のファラ・チャン。元JJモデルというまさかの経歴でとにかく・・・良い。
甘えたい。好きです。
SNSを見つけてからひたらすら過去の投稿もチェックしていいねを押し続けている日々です。
シャン・チーはもちろん親友ケイティも妹シャーリンもキャラがよいのでレギュラーメンバー達との絡みが今から楽しみで仕方ない。
今もミスタードーナッツのポン・デ・リングを見て「あっ、テン・リングスだ!!」と興奮してしまう精神状態だ。
近いうちに俺は中学生の時にクラス全員の前で「ドラゴンへの道」のブルース・リーとチャック・ノリスとの闘いを一人で再現したときと同じ過ちを繰り返すかもしれない。
赤いポロシャツと黒ズボンで出社してしまうかもしれない。会社の備品のセロテープを片っ端から腕に装着してしまうかもしれない。
俺は俺の中のシャン・チーを食い止める戦いに負けてしまいそうだ。
最後に言いたいことはただ一つ。
シャン・チーはカッコいい。
「シャン・チー/テン・リングスの伝説」
marvel.disney.co.jp/movie/shang-chi.
9月3日(金)劇場公開
©Marvel Studios 2021
本作最重要アイテム